今週の要点

新型コロナウイルスの感染拡大の陰で明るい兆し

中国湖北省で新型コロナウイルスの感染症例が、それまでの1日3,000人足らずから14,840人に急増したことから、株式市場は先週後半になって下落した。しかし、感染者数の大幅な増加は感染率の上昇ではなく、それまで数日を要した結果の処理がわずか数分で明らかになる新しい検査方法を湖北省が導入したためである。新たな検査方法は情報開示の透明性向上を示す兆しであり、中国の感染封じ込めに寄与するだろう。病院の新設や仮設病院のほか、何千人もの医療従事者を含め、湖北省には追加のリソースも投入されている。我々の基本シナリオに変更はなく、ウイルスは3月末までには概ね収束して中国経済に及ぼす悪影響はほぼ第1四半期に限定され、第2四半期以降は景気回復とともに需要が一気に顕在化すると予想している。

要点:我々は新興国株式のオーバーウェイトを維持し、アジアには長期的な投資機会があるとみている。短期的には運輸、観光、エンターテインメントなどウイルスの影響を最も受けやすい銘柄を避け、eコマース、テクノロジー、ヘルスケアへの投資を推奨する。

欧州の投資家には米ドル建てからユーロ建て債券へのシフトを推奨

ユーロは先週、対米ドルで2017年以降の最安値水準にまで下落し、年初来の下落率は3%に達している。ドイツの鉱工業生産が世界金融危機以降最も速いペースで縮小するなど、今回の動きはユーロ圏の経済成長減速に対する懸念を反映している。ユーロ圏の金利の低下と長引く通貨安を受けて、ユーロ建ての投資家の多くは近年、米ドル債に高いリターンを求めるようになっている。しかし、ユーロとスイス・フラン建ての投資家にとってこのトレードのリスクは高まっている。年末までに米ドルが対ユーロで9%前後、対スイス・フランで6%程度下落し、米ドル債が提供する2%弱の利回りの高さが帳消しになると予想されるからだ。近年、主要国の中では米国経済が最も好調だったが、2020年は成長率格差が縮まると予想している。堅調な国内需要、米中の通商交渉の第1段階合意を受けた世界貿易の回復に加え、ユーロ圏企業の在庫も補充されつつあることから、ユーロ圏経済は再び加速すると予想している。米国による監視対象追加を受けてスイス国立銀行がフラン高是正介入を抑制しており、スイス・フランの上昇も予想される。

要点:ユーロおよびスイス・フラン建て投資家のヘッジなしの米ドル債保有が増えている。為替予想と利回り格差の縮小を踏まえ、ヘッジなしの米ドル債を保有する欧州とスイスの投資家は為替リスクを慎重に考慮することを勧める。スイス・フランの投資家には米ドルよりもユーロ建て債券を推奨する。ユーロの投資家も米ドル債へのエクスポージャーを再検討した方がよいだろう。

CO2排出削減の動きが投資家に機会をもたらす

先週、大手企業2社が環境に配慮した新しい取り組みを立て続けに発表した。エアバスは現在の中型機に比べて燃料消費を最大20%削減できるとする新型航空機を発表した。BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)はすべての業務と自社の石油精製について2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を正味ゼロにする計画を発表した。今回の発表は、持続可能性に対する上場企業の対応が大きく転換しつつあることを浮き彫りにしている。CO2排出量が多い企業は政府による規制強化や消費者の意識の変化などの圧力に直面することから、投資家にとっては新たな機会につながるだろう。こうしたトレンドは、スマートモビリティ、再生可能エネルギー、エネルギー効率など、世界のCO2削減に寄与する分野でディスラプション(創造的破壊)をもたらす企業にも追い風となるだろう。

要点:クリーンな大気、エネルギー効率、温室効果ガスの排出削減等に注力している企業への投資を中心に、サステナブル投資にシフトすることで投資家は恩恵を得られるだろう。投資家はポートフォリオを見直して、こうしたテーマに重点を置くことが可能である。

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