今週の要点

1. 不確実性の中、貿易依存度の低い投資先に注目

米国株式は先週初め、トランプ米大統領が中国との貿易交渉に「期限は 設けない」と発言したことを受けて、大きく値下がりした。その後、楽観的な コメントと堅調な雇用統計が発表されたことから値を戻した。米中の動きが 不透明なことから、通商交渉の結果に左右されにくい投資先を推奨する。 Year Ahead 2020で、我々は世界的な分散投資に加え、国内売上の割合が 高く、貿易をめぐる不透明感の影響を受けにくい国やセクターを選ぶことが 重要だと述べた。これを踏まえ、国内売上高の割合が全体の69%の米国 と88%の中国市場を推奨し、ユーロ圏に対しては慎重に臨む(国内売上高 の割合が47%)。また、企業投資よりも消費財関連銘柄の方が有望とみる。 製造業が貿易関連の景気減速の影響を受けているのに対し、個人消費は 底堅いからである(米国ISM製造業景況感指数は48.1、非製造業景況感指数 は53.9)。米国の消費財セクターを推奨する一方で、グローバルで見ると素材 とITセクターを推奨しない。

要点:関税が撤回されれば、世界的な景気の影響を受けやすい株式(韓国や 台湾など輸出主導型市場)は上昇する公算が大きい。しかし当面は、貿易依 存度が低い市場を推奨する。

2. 英ポンドの上昇は中期の上昇基調の一環

英国の世論調査で与党保守党が12月12日の総選挙で単独過半数を獲得 する可能性が強まったことから、英ポンドは5月以降初めて、対米ドルで1.31 台に上昇した。保守党が過半数を獲得し、英国のEUからの離脱が来年1月 末までに完了すれば、英ポンドは対米ドルで1.35まで上昇するだろう。その 場合、英国株式の中で内需型の銘柄が海外重視の銘柄をアウトパフォーム するとみられる。いずれの政党も単独で過半数議席を取れない「ハングパー ラメント」状態となった場合は、小規模政党の後押しで労働党のコービン党首 が首相に就任し、離脱交渉期間が再度延長されてEU離脱をめぐる国民投票 が改めて実施されると予想する。この場合、方向性が明らかになるまで、英 ポンド/米ドルのレートは1.25–1.30のレンジで推移する見通しである。世論 調査を見るかぎり、現時点では労働党が過半数を獲得する可能性は極めて 低い。

要点:短期的には、英ポンドの行方は選挙結果に左右されるだろう。しかし、 中長期的に見ると、英ポンドは購買力平価ベースで割安となっている。我々 は英ポンドについて強気の見方を維持し、英国株式を保有している投資家 にはヘッジしないことを勧める。

3. 遺伝子治療関連企業の買収は今後10年で成長余地あり

政治要因の影響を受けにくい市場を求める投資家は、来年以降の「変革の 10年」がもたらす中長期の機会を探るとよいだろう。遺伝子治療はそのよう な機会の1つである。日本のアステラス製薬は先週、米バイオ企業のオー デンテス・セラピューティクスを30億米ドルで買収すると発表したが、これは 大手製薬会社が遺伝子治療の強化に乗り出していることを示す一例である。 オーデンテスは、現在治療薬がない遺伝性筋肉疾患であるX連鎖性劣性遺 伝のミオチュブラーミオパチーなどの難治性遺伝性疾患の遺伝子治療に注力 している。同社の治療薬は、発症につながる突然変異した遺伝子を正常な遺 伝子に置き換えることでこの病気を治療できる可能性を秘めている。この案 件を含めると、我々の試算では、大手製薬会社とバイオテク企業が2017年以 降に遺伝子治療や細胞治療企業の買収に投じてきた資金は総額で410億米 ドルにのぼる。規制緩和の後押し、大手製薬企業による出資の増大、多数の 開発中の治療薬など、この分野には大きな成長余地が見込まれている。医薬 品開発には固有のリスクがあることから、さまざまな企業に分散投資すること が賢明である。

要点:現代医療に革命をもたらす可能性がある産業に興味があるならば、 国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「すべての人に健康と福祉を」を 支援する我々のサステナブル投資方針に沿った長期投資テーマ「遺伝子治療」 に注目していただきたい。

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