投資家にとって低金利の長期化は何を意味するか?

今週の要点

1. 各国の低金利の長期化は投資家にジレンマを生む

世界の主要中央銀行は金融緩和姿勢に戻り、欧州中央銀行(ECB)が先週、追加緩和の可能性を示唆したのに続き、今週は米連邦準備理事会(FRB)も約10年ぶりに利下げに踏み切ると予想されている。「低金利の長期化」へのシフトはリスクフリー資産の予想リターンがさらに低下するため、投資家は難しい局面に立たされる。リスクフリー資産はリターンの低下やマイナスになる可能性も想定されるが、これを受け入れられない投資家は、株式のエクスポージャーを増やしてリスクを取るか、インカムと利回りを求めるかの選択を迫られる。全体としては、我々は後者の戦略を推奨している。各国中央銀行が追加刺激策を準備する中、市場は2020年末までにFRBが約100ベーシスポイント(bp)の利下げを行うことを織り込んでいる。しかし、我々はこれほどの大幅利下げの可能性は低いと考える。過去最低水準の失業率等を考慮すると、利下げは50bpにとどまると予想する。FRBの利下げ幅が予想を下回った場合、株式から大幅なキャピタルゲインを得る確率は低下する。このため、現時点では利回り追求戦略からのリスク調整後リターンの方が魅力的とみている。

要点:我々は欧州投資適格債、米ドル建て新興国国債、および一部の新興国通貨をオーバーウェイトとしている。

2. 英国に新首相が誕生するも、EU離脱をめぐる不確実性は変わらず

先週英国の新首相に就任したボリス・ジョンソン氏はブレグジット強硬派を主要閣僚として入閣させた。ジョンソン氏は欧州連合(EU)の交渉担当者から大幅な譲歩を求める方針だが、合意に至らない場合は10月31日の合意なき離脱の準備を加速させるとしている。首相が変わったとはいえ、合意なきブレグジットをめぐる政治的ハードルは、少なくとも短期的には高い状態が続いている。英国議員の過半数は合意なき離脱に当初から反対している。さらに、英議会の下院議長は議員の発言を促すため、議会ルールを柔軟に運営する姿勢を見せている。ジョンソン首相が「合意なき離脱」を強行的に進めた場合、何らかの方法で解散総選挙に至ると我々は予想している。よって、ブレグジットの最終的な結果に関する予想を基に相場の方向性に賭けるポジションは取るべきではないと考える。ただし、現在の市場は短期的に合意なき離脱の可能性を織り込み過ぎとみられ、そこから収益機会を捉えることができる。英ポンドは対米ドルで1.23と、我々が算出する適正水準の1.59を大幅に下回っている。

要点:政治的不透明感から、英国株式は相対的に魅力が低いと考える。ただし、英ポンドは米ドルに対して売られすぎとみられ、短期的に反発が予想される。よって、我々は対米ドルで英ポンドをオーバーウェイトとしている。英ポンドの短期の下げに対してヘッジしてきた投資家は、ヘッジを外すことを検討し始めてもよいだろう。

3. 欧州の熱波で再生可能エネルギー投資に弾みがつく可能性

西欧各地が今夏2度目の熱波に見舞われている。ベルギー、オランダ、英国、ドイツでは観測史上最高となる気温を記録し、ドイツではライン川の水位が低下して貨物輸送に支障が生じている。単発の異常気象を世界の気候変動に直接結びつけることはできないものの、熱波は再生可能エネルギーへの投資拡大を求める政治圧力を促すかもしれない。ブルームバーグによると、再生可能エネルギーへの設備投資は2019年上期に14%減少した。しかし、再生可能エネルギーの投資見通しは株式とグリーンボンドの両資産クラスで引き続き好調と考える。二酸化炭素排出量が多い企業に対する経済的な逆風は強まっている。EUの二酸化炭素排出権の価格は先週、2018年初頭の水準を260%上回る29.76ユーロ/tCO2に上昇し、過去最高値を記録した。一方、電力の30%以上を石炭火力で発電する電力会社への保険付保を拒否する保険会社が増加している。対照的に、再生可能エネルギーの事業としての魅力は高まっている。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスとIMFによると、2009年~2017年の間に太陽光パネルの価格は76%、風力タービンは34%低下しており、大部分の主要市場で化石燃料並みか化石燃料より安価になっている。

要点:我々はクリーンエネルギーと二酸化炭素排出削減への累積投資が2030年までに36兆米ドルに達すると予想している。

House View レポートの紹介


資産運用はUBS証券へ

UBSウェルス・マネジメントでは、富裕層のお客様の資産管理・運用を総合的にサポートしております。日本においては、2億円相当額以上の金融資産をお預け入れくださる方を対象とさせていただいております。

(受付時間:平日9時~17時)