[参考和訳] アート・バーゼルとUBSによる2023年グローバル・アート収集動向調査:富裕層収集家の行動と楽観

Tokyo2023年 11月 02日 19:00Media Releases APAC

2023年前半の富裕層収集家のアート支出額は引き続き高水準でした。収集家は2024年のアート市場の見通しに引き続き楽観的で、リサーチに基づく収集が一段と広がっています。

チューリッヒ、2023年11月2日 ― アート・バーゼルとUBSによる『2023年グローバル・アート収集動向調査』は富裕層収集家の姿勢、行動、アート市場の先行きに対する見方に関する洞察を提供するものです。本レポートは収集家の支出トレンド、市場における収集活動の動機、アーティスト、ギャラリー、関連機関、環境への収集家の関わり合い方を検証するもので、文化エコノミストのクレア・マキャンドルー博士が執筆しました。調査は、ブラジル、中国本土、フランス、ドイツ、香港、イタリア、日本、シンガポール、台湾、英国、米国からなる11 のアート市場で2023年に実際に収集活動を行っている2,800人を超える収集家を対象にUBSと共同で実施されました。

主な調査結果

  • 国際取引が2022年と2023年前半に増加:2022年に世界の美術品および骨董品の輸入は307億米ドルと過去最高に達し、輸出は334億米ドルと過去2番目の高水準となりました。2023年第1四半期に世界の全産業で輸入は減少しましたが、美術品の主要集積地の輸入額は増加し続け、なかでも香港(50%)、英国(38%)、米国(15%) は二桁の伸びを示しました。
  • 2023年前半の富裕層収集家の支出は引き続き高水準で、2022年比で増加する可能性を示唆:調査した富裕層収集家の美術品および骨董品向けの平均支出額は2022年に65,000米ドルに達しました。2021年と比べ19%の増加です。2023年前半もこの水準が維持されたことから、支出が持続すれば、2023年は高い伸びを示す可能性が示唆されます。2022年の支出はほぼ全ての市場で増加し、最も高い伸びを示したのは英国と台湾(ともに30%増)で、米国(5%増)と香港(2%増)は相対的に緩やかな伸びとなりました。中国本土の収集家の支出は2022年に202,000米ドルへと6%減少しましたが、2023年前半には241,000米ドルと最も高水準になりました。
  • リサーチに基づく収集の比率が上昇:収集行動と動機に関する質問では、調査した収集家の44%は「リサーチャー型」収集家と自認しており(2021年の37%から増加)、作品を購入する前に相当な量のリサーチを行うとしています。「衝動買い型」の収集家は若干減少しました(3%の減少)。
  • 調査では女性が男性以上に支出:2023年の女性収集家の平均支出額は72,500米ドルと男性収集家のそれを上回りました。女性の支出額は伸び続けており、2022年の水準を超えました。とはいえ、期間中の支出額が100万米ドルを超える層に限定すると、男性収集家の数は女性収集家のそれを上回りました。
  • 対面での購入の復活が2023年も持続:86%の富裕層収集家はディーラーから購入し、そのうち、84%はディーラーのギャラリーまたは会場で購入しました(2022年の73%から増加)。
  • 楽観的な見通し:くすぶり続ける不透明感をよそに、調査した富裕層収集家の77%は今後6ヵ月のアート市場の見通しについて引き続き楽観的でした。今後1年間にアート作品の購入を計画している収集家は半数(54%)を超え、2022年と同じ割合にのぼりました。購入計画が最も活発なのは中国本土の収集家で68%が作品を購入する意向を示しました。日本、ブラジル、イタリアでも50%を大幅に上回る収集家が購入意向を示しています。

アーツ・エコノミクス社の創立者であるクレア・マキャンドルーは次のように述べています。「2023年のアート市場では経済と政治の不透明感が影を落としてきました。多くの議論がなされているものの、経済と社会のトレンドが収集家の意思決定と支出計画に実際にどう影響しているのかについての総合的な調査はほとんどありませんでした。これらの問いを深く掘り下げるため、この種としては過去最大規模となる今回の調査では、世界の様々な地域の富裕層収集家の姿勢、行動、見通しを検証しました。収集家は2023年に販売やイベントに積極的に関わり続けたことが明らかになる一方で、リスクを回避する姿勢が強まり、衝動買い型の購入が減少していることが確認されました。2023年においても、購入の背景にある最大の要因は自己認識やアート作品の所有から得られる個人的な喜びなど、自己の内面に関わる動機でした。そして、自身を投資家と認識している収集家はごく少数であるものの、多くの収集家は収集活動の金銭的な影響を強く意識しており、収集品の転売のほか、借入れやクレジットを積極的に活用しています。」

UBSウェルス・マネジメントのチーフ・インベストメント・オフィス、グローバル・アセット・アロケーション共同責任者兼アジア太平洋地域グローバル・インベストメント・マネジメント共同責任者のエイドリアン・ツェルヒャーは次のようにコメントしています。「アジアでは富が拡大し続け、一部のセクターでは欧州や米国を追い抜き、世界の大富豪の29%を占めるまでになっており、域内のアート市場も活況を呈しています。特に中国本土の収集家の高水準の支出を原動力に、ロックダウン解除後のアート作品の購入は力強く盛り返しています。今回の調査では「リベンジ消費」の急増が見られました。パンデミックに伴う行動制限への反動から高額品消費の伸びが顕著です。一部の経済指標はアジア地域の景気減速の可能性を示唆していますが、アジアの収集家のアート作品の購入意欲に陰りは見られず、今後12ヵ月、イベントへの参加を増やす、あるいは継続する意向であり、アート作品を購入する計画であるとしています。」

アート・バーゼルの最高経営責任者のノア・ホロヴィッツは次のように述べています。「今年のグローバル・アート収集調査は、経済や地政学的環境が不安定な中、富裕層収集家は支出に対して慎重な姿勢を妥当な程度に強めているかもしれないことを示唆しています。とはいえ、富裕層収集家は引き続き強い自信を持っており、2023年前半の支出は早くも2022年全体に匹敵する水準に達し、中国の収集家の支出額が最大となりました。こうした状況は、私どもが香港、バーゼル、パリで今年これまでに開催した展示会の特筆すべき成功でも裏付けられます。収集家は参加するイベントの選別を強めているものの、対面での購入が復活し続けていることがこれらのフェアの活況につながっています。今後については、世界最大規模の市場におけるアート作品の底堅い需要を反映し、調査した収集家の過半数がアート市場のパフォーマンスに引き続き楽観的な見方を示しました。」

アーツ・エコノミクスとUBSはこれまで8年にわたり、アート市場における収集家の行動とアートへの関わり方を調査し、活動中の収集家から得られた洞察に満ちた回答を分析し、紹介してきました。この年次調査はアート・バーゼルとUBSによるグローバル・アート・マーケット・レポートの補足資料として発行されました。同レポートによると、2022年のアート市場取引高は推定678億USドルと過去2番目に高い水準に達しましたが、前年比の伸びは3%と大きく鈍化し、市場によってばらつきがありました。

レポートはwww.ubs.com/collectingからダウンロードできます。

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アーツ・エコノミクスとクレア・マッキャンドルーについて
アーツ・エコノミクスは、個人および法人、金融機関の顧客のために、美術品や装飾品市場のリサーチと分析に特化したリサーチ・コンサルティング会社です。同社は2005年にクレア・マッキャンドルーによって創設されました。マッキャンドルー博士は、美術品、骨董品、収集品市場を専門とする文化エコノミストです。彼女は2001年にダブリンのトリニティ・カレッジで経済学の博士号を取得し、4年間同校で経済学の講義をしていました。2002年に米国のブティック投資銀行会社Kusin & Companyに美術品投資専門のチーフ・エコノミストとして入社し、米国で3年を過ごした後、2005年に欧州に戻り、グローバルな顧客に、民間の立場からリサーチやコンサルティングを提供する形で、美術品市場での仕事を続けました。2005年にアーツ・エコノミクスを設立し、美術品市場のリサーチと分析に関する取り組みを中心に、世界各地の民間のコンサルタントや学者と協力して、グローバルな美術品取引や金融セクターに対するリサーチとコンサルティング・サービスを提供しています。  

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アート・バーゼルのグローバル・リード・パートナーであるUBSは、現代アートとアーティストを支援してきた長い歴史があり、そのコレクションは世界で最も重要なコーポレ ート・アート・コレクションのひとつです。アート・バーゼルとのパートナーシップを通じて、そし て「アート・バーゼルとUBSによるグローバル・アート・マーケット・レポート」、「アート・バーゼルとUBSによるグローバル・アート収集動向調査」の共同発行者として、美術品市場に関する 国際的な対話の促進を目指しています。またUBSは、世界で重要な美術機関、イベント、フェアを多く支援しています。UBSはお客様にアート・コレクション・サークルとUBSアート・アドバイザリーを通じて、美術品市場、収集、相続計画 に対する知見を提供しています。現代アートに対するUBSのコミットメントの詳細については、ubs.com/artをご覧 下さい。

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1970年にバーゼル出身のギャラリストによって創設されたアート・バーゼルは、今日では、バーゼル、マイアミビーチ、香港で展示会を行い、近代および現代アートを展示する世界でも一流の舞台となっています。各展示会は、主催される都市や地域によって独自の特徴があり、それが参加するギャラリーや展示される美術品に反映されます。また、地元の金融機関との協力により、平行して行われるプログラムが制作されます。アート・バーゼルの取り組みはアートフェアの領域を超えて拡大し、新たなデジタル・プラットフォームや「アート・バーゼルとUBSによるグローバル・アート・マーケット・レポート」など多くの新しいイニシアチブを展開しています。詳しくはartbasel.comをご参照下さい。

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