現在、ミュンヘン、次いでトロント、香港、アムステ ルダムで、不動産バブルのリスクが非常に高まっ ていると考える。フランクフルトとパリは、新たに 「バブルのリスク」の領域に突入した。一方、 ロンドンは価格調整を経て、「バブルのリスク」の 領域から抜け出た。足元は、「割高」な領域に落 ち着いている。バンクーバー、サンフランシスコ、 ストックホルム、シドニーのバリュエーションは 急落した。ニューヨークとロサンゼルスも下落 し、一方でシンガポールは概ね横ばいとなった。

2012年以来、価格上昇幅は最低
過去4四半期で、調査対象都市のインフレ調整 後の平均価格の上昇が実際に止まった。居住用 不動産の価格が大きく上昇したのは、モスクワ、 ボストン、そしてユーロ圏の都市に限られた。過 去数年は世界的に2桁の伸びが一般に見られた が、過去1年は唯一フランクフルトがそうした高 い伸びを示した。一方、シドニー、バンクーバー、 ドバイでは5%を超える調整が見られた。新たな 規制措置と世界経済の低成長により、居住用住 宅の価格が打撃を受けた。市場が過熱するほ ど、調整が始まりやすくなっている。

調整局面が到来
世界的な金利の急低下にもかかわらず、住宅価 格の下落傾向は続くものとみている。過去数年 の間に、多くの都市では、家を購入する際に住宅 ローンの金利が障壁にならなくなった。むしろ、 多くの家計においては、家を購入する上で、また は銀行の融資条件を満たす上で必要な資金が 不足している。また住宅ローン金利よりも元本 返済の方が家計にとって非常に大きな負担とな る傾向が見られる。さらに、景気後退が懸念され る環境の下、経済上の不確実性による悪影響の 方が、金利低下による需要の伸びの好影響を上 回っていると考える。

長期投資家が報われる
過去40年間、大半の中心都市では、価格バブル のさなかにあっても、居住用不動産の取得者は 長期のキャピタル・ゲインを享受してきた。これ には、3つの要因を挙げることができる。第1に、 多くの中心都市でテクノロジー主導の好景気に より住宅に対する旺盛な需要が生まれた。第2 に、富裕層の増加により、一等地に対する超過 需要が続いた。第3に、不動産価格は1990年代 中盤以降の実質金利低下の恩恵を受けてきた。

需要拡大が、例えば建築制限などにより現地の 建設ブームにつながらないところでは、地価お よび賃料が急騰した。

しかし、こうした条件が揃っていないところで は、住宅価格は良くても停滞したままだ。例 えば、シカゴやミラノでは経済成長が振るわず、 実質価格は約20年前と同じ水準にある。またド バイは、調査対象都市の中で人口増加率が飛 びぬけて高いものの、供給拡大が続いているこ とから、足元の住宅価格は2000年の水準を超 えるものがほとんどない。

都市住宅のキャピタル・ゲインは保証されない
都市化という共通の傾向と一等地に対する 需要拡大が見られるが、キャピタル・ゲインを 保証するものではないと考える。住宅価格と住民 の所得の乖離拡大により、先行きの見通しは 不透明となっている。長期的には、経済の活力 が低下すると、多くの都市の魅力度が低下し、 仕事が郊外に移るようになる。そのため、 住宅市場への政策介入の可能性が高まり、 投資家に悪影響が及ぶリスクが高まる。その 結果、現在の高いバリュエーションで都市の マンションを購入すれば、長期の低リターンの局 面を甘受する必要があると考える。過去の実績 に基づくと、世界的に都市不動産は長期にわた りインフレ調整後ベースで少なくとも投資元本 が保全されると期待できるが、住宅市場の繁栄 にとって当該地域の経済成長は不可欠であると 考える。


UBSグローバル不動産バブル指数

世界主要都市の住宅市場の指数値(2019年)

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