• 日経平均はほぼ5カ月前の水準まで低下しているが、企業の業績見通しは改善しており、日本株式の魅力度は以前よりも高まっていると考える。
  • 米連邦準備理事会(FRB)は先週、ハト派からタカ派寄りの姿勢に転換し、これが日本株式の売り圧力となったが、3つの理由から日本株式は依然として魅力的であると考える。
  • 日本銀行は主要中銀の中で最後まで金融緩和を継続し、利上げに踏み切るのも最後となるだろう。よって最近の株価調整はバリュエ ーションの調整によるものであって、企業利益の低下によるものではないとみている。

我々の見解

5月中旬、日経平均株価は2月につけた30年半ぶりの高値を10%ほど下回る27,448円まで下落し、MSCIワールド指数を8%以上アンダーパフ ォームした。堅調な企業利益の成長率、ワクチン接種ペースの加速、円の対米ドルでの下落を背景に、日本株式はこの安値からは戻しているものの、世界株式にはいまだ出遅れている(図表1を参照)。

先週開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBはこれまでのハト派姿勢からタカ派寄りの姿勢に転換し、これが日本株式の一部売り圧力となった。だが以下3つの理由から日本株式は依然として魅力的であると考える。

1つ目は、図表2が示す通り、日本企業の利益回復はいまのところ主要各国に後れをとっているが、裏を返せばワクチン接種の加速に伴いコロナ前の水準に戻る余地が大きいということである。日本のワクチン接種率は主要各国を大幅に下回っており、これが過去3カ月、海外投資家が日本株式を売却した主な理由であるとみている。だが、今後3カ月間で少なくとも1回目の接種を終える人口の割合は40~50%に達し、ワクチン接種状況は米国や欧州に追いつくと予想される。

2つ目に、最近の株価調整は企業利益の低下によるものではなく、バリ ュエーション調整によるものだと考えている。2020年12月2日付日本株式レポート「バリュエーションから見ると上値が限られ始めた日本株市場」で指摘したように、株価バリュエーションは、株価が投資家のセンチメントと企業利益のどちらによって変動しているかを測る手掛かりとなる。我々の分析によると、12カ月先予想1株当たり利益(EPS)に基づく株価収益率(PER)は、年初の23.0倍から18.5倍に低下した一方、EPS予想はおよそ16%上昇している。

投資家は、米国における利上げの可能性と中国の金融引き締め観測が、今後 12 カ月間グローバルに企業利益の足かせとなることを危惧しているものと考える。だが、年後半にかけてワクチン接種率が 50%を超えてくる可能性が高く、そうなればサービス業の利益回復を中心に、日本企業の利益は拡大し続けるだろう。

3つ目に、この夏に東京オリンピックが感染防止策を徹底のうえ成功裏に開催され、ようやく日本の経済活動が再開したことを世界に印象付けられれば、海外投資家の買い意欲が戻ると期待される。東京証券取引所のデータによると、売買代金の7割以上を占める海外投資家は、年初からの3カ月間の買いをすべて売り越した。過去の例から判断すると、これは魅力的な買いのタイミングの兆候である。例えば、日本株式は昨年8月にも同じように急落した(詳細は2020年8月21日付日本株式レポート「第二の回復の波に乗る日本株式」を参照)が、11月には海外投資家が再び日本株式市場に戻ってきている。

我々の投資見解に対するリスクとしては、FRBのタカ派的な金融政策への移行と、中国が突如金融引き締めに転じ景気が減速することが挙げられる。だが、各国の中央銀行および政府は、景気回復基調の腰を折るような真似はしないとみている。むしろ各国政府は打撃を受けた経済、とりわけサービス業を引き続き支援するだろう。また、不動産市場、株式およびその他資産の過熱リスクを注視しながらも、各国中銀の金融政策は、経済回復を支えるのに十分な流動性を供給する公算が大きい。

さらに、日本銀行は、一番最後とは言わないまでも、金融政策の変更と利上げに最後まで踏み切らない中央銀行の1つだろうと考えている。よ って、図表4から明らかなように、最近の株価調整は企業利益ではなく、バリュエーション調整によるものであると考える。日経平均株価は5月中旬までPERの拡大が主導で上昇していたが、現在は企業利益が株価変動の要因となっている。日本企業の利益にはさらに拡大余地があるとみており、また引き続き円が対ドルで下落するならば、株価の戻りは一段と大きくなるだろう。

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居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド


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