我々は主に次の3つの理由から、短期的な上値余地は乏しいと考える。1つ目は、12カ月先予想PERがTOPIXで15倍、日経平均で17.5倍と、過去10年間の平均を上回っており、S&P500種株価指数のPERに追いつきそうな水準にまで上昇していることである(図表1参照)。
2つ目は、米中貿易摩擦による日本企業へのプラス効果が限定的であり、2020年度(2021年3月期)の増益率は、市場予想の6~8%に対して我々は3~4%増にとどまると予想していることだ(図表2参照)。米中貿易紛争の結果、中国のITハードウェアやソフトウェアは国産化が加速するとみている。中国政府はインフラ投資やサービス産業を後押しするなど今後さらに国内経済へのテコ入れを図り、これが中国の国内中心企業の追い風となるだろう。
3つ目は、海外投資家の動向である。直近4カ月で日本株式を最も積極的に購入していたのは、2018年に日本株式をアンダーウェイトにして大幅に売り越していた海外投資家である。我々の予想通り、海外投資家は2018年8月以降日本株式を5兆円以上買い越したが、その大半は現物株ではなく先物の買い戻しであるとみられる。企業利益の回復見通しが緩やかな水準にとどまるため、足元の上昇相場が終われば、海外投資家は日本株式への資産配分を減らす可能性がある。
2019年の株式市場は、2004年以来の狭いレンジ取引に終始した(図表3参照)。日銀のETF買い入れと企業の自社株買いにより下値は限定的であったが、他方、米中貿易摩擦により上値も抑えられた。我々は2019年4月から欧州株式に対して日本株式をオーバーウェイトにしており、セクター別では、米中貿易摩擦の緩和を背景に、中国依存度が高い半導体や機械、消費財などを有望視してきた。
12月までの4カ月にわたる株価反発で、大半の好材料はすでに織り込まれたものとみている(図表4および5参照)。よって、今後は質の高い安定配当銘柄など、バリュー株に投資の軸足を移すことを推奨する。景気サイクルはピークを過ぎた可能性が高く、今の超低金利環境を考えると、グロース株のバリュエーションがここからさらに上昇する余地は乏しいとみる。むしろ、足元のバリュエーションが10倍程度で配当利回りが2~3%のバリュー株への投資を検討するとよいだろう。