日本株式 強気に振れたセンチメントの今後を占う

米中貿易摩擦に対する懸念が後退し、投資家心理が改善した結果、大半の好材料は織り込まれたと考える。今後3~6カ月は絶対値ベースで上値余地が限られると予想する。我々は主に次の3つの理由から、短期的な上値余地は乏しいとみている。株価バリュエーション、企業利益の伸び悩み、そして2020年は日本株式に対する海外投資家の投資意欲が減退するとみられる点である。

2019年 12月 30日
  • 米中貿易摩擦に対する懸念が後退し、投資家心理が改善した結果、大半の好材料は織り込まれたと考える。今後3~6カ月は絶対値ベースで上値余地が限られると予想する。
  • 我々は主に次の3つの理由から、短期的な上値余地は乏しいとみている。株価バリュエーション、企業利益の伸び悩み、そして2020年は日本株式に対する海外投資家の投資意欲が減退するとみられる点である。
  • 2020年は、質の高い安定配当銘柄や、組織改革を行う可能性が高い企業を推奨する。
  • ユーロ圏株式と比べるとバリュエーションが魅力的なため、グローバル資産配分では日本株式を引き続きオーバーウェイトとする。

我々の見解

我々は約1年前にリリースした日本株式レポート「変動の先に投資機会」(2018年12月28日付)の中で、2018年は予想EPS(1株当たり利益)に基づくTOPIXのPER(株価収益率)が12倍を下回り、投資家心理が大きく冷え込んだが、2019年はその分上振れするだろうと予想した。1年後の今、米中貿易摩擦に対する懸念が後退し、投資家心理が大きく改善した結果、大半の好材料はすでに織り込まれたものと考える。したがって、今後3~6カ月間は上値余地が限られると予想する。

短期的に上値余地が乏しいと考える3つの理由

我々は主に次の3つの理由から、短期的な上値余地は乏しいと考える。1つ目は、12カ月先予想PERがTOPIXで15倍、日経平均で17.5倍と、過去10年間の平均を上回っており、S&P500種株価指数のPERに追いつきそうな水準にまで上昇していることである(図表1参照)。

2つ目は、米中貿易摩擦による日本企業へのプラス効果が限定的であり、2020年度(2021年3月期)の増益率は、市場予想の6~8%に対して我々は3~4%増にとどまると予想していることだ(図表2参照)。米中貿易紛争の結果、中国のITハードウェアやソフトウェアは国産化が加速するとみている。中国政府はインフラ投資やサービス産業を後押しするなど今後さらに国内経済へのテコ入れを図り、これが中国の国内中心企業の追い風となるだろう。

3つ目は、海外投資家の動向である。直近4カ月で日本株式を最も積極的に購入していたのは、2018年に日本株式をアンダーウェイトにして大幅に売り越していた海外投資家である。我々の予想通り、海外投資家は2018年8月以降日本株式を5兆円以上買い越したが、その大半は現物株ではなく先物の買い戻しであるとみられる。企業利益の回復見通しが緩やかな水準にとどまるため、足元の上昇相場が終われば、海外投資家は日本株式への資産配分を減らす可能性がある。

2019年の株式市場は、2004年以来の狭いレンジ取引に終始した(図表3参照)。日銀のETF買い入れと企業の自社株買いにより下値は限定的であったが、他方、米中貿易摩擦により上値も抑えられた。我々は2019年4月から欧州株式に対して日本株式をオーバーウェイトにしており、セクター別では、米中貿易摩擦の緩和を背景に、中国依存度が高い半導体や機械、消費財などを有望視してきた。

12月までの4カ月にわたる株価反発で、大半の好材料はすでに織り込まれたものとみている(図表4および5参照)。よって、今後は質の高い安定配当銘柄など、バリュー株に投資の軸足を移すことを推奨する。景気サイクルはピークを過ぎた可能性が高く、今の超低金利環境を考えると、グロース株のバリュエーションがここからさらに上昇する余地は乏しいとみる。むしろ、足元のバリュエーションが10倍程度で配当利回りが2~3%のバリュー株への投資を検討するとよいだろう。

2020年は組織改革が加速

2020年は日本企業の組織改革が進むと考える。2019年5月24日付の日本株式レポート「組織改革が日本企業の生きる道」の中で、企業の貸借対照表にはキャッシュが積み上がり、株価収益率(ROE)が低下し続けていることから、今後2~3年における成功の鍵を握るのは組織改革であると述べた。我々は、企業にとって資金の最善の使い道の1つは、上場子会社の完全子会社化、あるいは非中核上場子会社を売却した後での自社株買いであると考えている。歴史的な経緯から、日本の大企業は親会社に一時利益をもたらすために、あるいは子会社の経営者と従業員のインセンティブを高めるために、東京証券取引所に子会社を上場させてきた。現在、日本には250社ほどの子会社が上場しているが、経済産業省が最近発表した「グループ・システム・ガバナンスに関する実務指針」の中でも、親会社と上場子会社の一般株主との間に利益相反リスクがあることが指摘されており、こうした子会社の多くは第三者に再取得または売却される可能性があると考える。2020年には、従来型の事業再編のみならず、デジタル・トランスフォーメーション(DX)と呼ばれるIT技術先導の組織改革を行う企業も増えることが予想される。

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