日本株式 米中の狭間で立ち位置探る日本株

米中貿易摩擦の激化による日本企業への直接的な打撃は限られると我々は考えている。米中貿易への日本企業のエクスポージャー自体が限定的であるからだ。しかし、対米ドルでの円高進行や世界経済の成長鈍化などの間接的な影響により、今後2-3カ月は日本株の上値が抑えられる可能性が高い。

22 8 2019
  • 米中貿易摩擦の激化による日本企業への直接的な打撃は限られると我々は考えている。米中貿易への日本企業のエクスポージャー自体が限定的であるからだ。
  • しかし、対米ドルでの円高進行や世界経済の成長鈍化などの間接的な影響により、今後2-3カ月は日本株の上値が抑えられる可能性が高い。
  • とはいえ、我々は2019年10-12月期(第4四半期)から2020年第1四半期には、企業業績が回復するとの見方を変えておらず、日銀によるETF(上場投資信託)の買い入れと企業の自社株買いも見込めるため、日本株の下値は限定的だとみている。

我々の見解

2019年4-6月期(第2四半期)の日本企業の決算は、前年同期比12%減益と、おおむね我々の予想通り(同13%減)だった。これは、第4四半期には純利益の伸びが回復するとの我々の見方を裏付けるもので、好材料である(図表2参照)。

とはいえ、米国が公表した約3,000億米ドル相当の中国製品への10%追加関税など、米中貿易紛争の過熱は、日本企業の利益にも一定の影響が及ぶだろう。関税による直接的な影響(日本企業が中国経由で米国に輸出する製品に課せられる関税)はかなり限られるが、対米ドルでの円高進行や中国企業による設備投資の鈍化といった間接的な影響が、今後1年間は日本企業の利益を下押しする可能性がある。

我々の基本シナリオでは、米国が10%の追加関税を発動するとみており(図表5参照)、日本企業の利益成長率予想を、2020年度(2020年3月期)については従来の1%から-2%へ、2021年度については2%から1%へと引き下げた(図表1参照)。米中貿易協議の行方次第では、この利益予想を再び修正することもありうる。だが日本企業の利益が短期的に大きく落ち込むことはなく、比較的高止まりすると我々はみている(図表3参照)。

しかしながら、投資家は、我々の予想修正に先んじて、すでに見通しを引き下げているのかもしれない。事実、昨年半ばに貿易紛争が勃発してから日本株のバリュエーションは低迷しており、海外投資家による日本株の売り越し額は過去最高に上っている。

図表4が示す通り、足元の日本株の株価収益率(PER)は、2011年以降の平均を大きく下回っている。その理由は、米中貿易摩擦が日本経済と日本企業の利益を損なう恐れがあるためだと考える。市場の変動が激しいリスクオフの時期には、日本円はその他通貨に対して上昇することが多く、日本は貿易取引額の減少に対処する術をほとんど持たないからだ。

だが長期的にみれば、今の相場は、PERが低く、質の高い日本株を拾う好機だと考える。2019年8月9日付「配当の質に注目する」の中で、我々は過去15年間一度も減配していない企業で、予想増益率が高く、PERが過去最低水準で取引されている銘柄に注目した。

我々はこの基準を満たす50以上の企業を特定し、そのうち14社を日本株推奨リストに入れた。これら銘柄の平均配当利回りは2.7%、PERは12倍、今後2年間の増益率(年率)は7%だった。市場の方向性を予測することは容易ではないが、目先大きな金融危機に見舞われる可能性は低いとみており、修正後の戦略に基づき投資の継続を推奨する。

リスクと機会

10月に消費増税を控え、個人消費と景気全体に与える影響を懸念する投資家もいる。今回は消費税の引き上げ幅が8%から10%と2パーセント・ポイントに過ぎず(前回は5%から8%の3パーセント・ポイント)、政府が景気刺激策を用意しているため、その影響について我々は慎重ながらも楽観視している。大きな混乱なく10月の消費増税を乗り切れば、投資家は再び日本株に目を向けるだろう。

一方、米中貿易紛争は、世界経済に大きな影響を長期的に及ぼす可能性がある。これがきっかけとなり、米中間の経済が分断され、アジアで中国を中心とした経済圏が誕生するかもしれない。それに伴うリスクと機会が日本企業を待ち受けている。

このような事態が起これば、生産拠点を東南アジア諸国へと移管する中国企業が増え、ロボティック・プロセス・オートメーション(ロボットによる業務自動化)や優れた在庫管理を取り入れた、最新鋭工場の建設が進むだろう。日本企業は、アジア企業に製造技術を提供し、東南アジアにある既存の生産拠点を活用することができる。だが、米国と中国が保護主義政策をさらに強化するならば、日本企業は、米中両市場でのシェアを失う恐れがある。




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