配当の質に注目する
  • 日本株式市場の平均配当利回りは2.6%と、非常に高水準であると同時に、日本国債とのスプレッドは過去にないほど拡大しており、魅力的な投資機会を提供している。
  • この投資テーマは、配当の継続性と安全性に注目する。過去15年間一度も減配していない企業から厳選した銘柄は、バリュエーションが魅力的であると我々はみており、世界経済の先行き不透明感が高まる中で有望な投資先となるだろう。
  • 我々は、日本の株式市場が2019年末にかけて回復に向かうと予想しており、グローバルな資産配分で日本株をオーバーウェイトとしている。日本市場が反転するにともない、配当の質の高い銘柄には特に注目が集まるだろう。

我々の見解

日本の株式市場の現在の配当利回りは平均で2.6%と、非常に高い水準にある。同時に、2年国債利回りとのスプレッドは過去にないほど拡大している(図表1参照)。国債利回りがマイナス圏にあるなかで、日本株の配当利回りは投資家から過小評価されているように見える。さらに、高配当銘柄は、この2年近く市場をアンダーパフォームしてきた。その理由として考えられるのは、世界経済と貿易問題をめぐる不透明感が高まる中、投資家が将来の配当予想を信用しなくなってきているからだろう。投資家は、世界的な不透明感の高まりによって、企業収益が悪化し、減配されるのではないかと懸念している。そうした環境下で、安定した配当を維持しながら、株価水準が依然として割安な銘柄があると我々はみている。過去のデータと企業の配当政策の分析を元に、我々は安定した配当を継続し(減配リスクが小さく)、魅力的なバリュエーションで取引されている銘柄を見つけ出す銘柄選定モデルを考案した。

「配当の質」とは?

我々は、配当の質に注目する投資戦略を、過去15年間(つまり2008年の世界金融危機や2011年の東日本大震災などの市場混乱時も含め)減配していない企業(もしくは減配1度)に注目する投資戦略と定義する。日本株式市場の配当利回りは過去最高水準にあり、今後も果たして続くのかと疑問視する投資家もいるため、我々は特に配当の継続性と安全性に注目する。銘柄選定プロセスでは、まず過去の配当の継続性(過去の配当支払い実績)と将来の配当支払いの安全性を、定性分析を通じて綿密に検討する。次に、配当の質が高い企業の母集団から、次の3条件のいずれかを満たす銘柄を選別する。1) バリュエーションがここ数年で割安になっている。2) 今後2年間の予想増益率(年平均成長率)が5%を超えている。3) 配当利回りが2.6%を上回っている。

配当の質が高い企業は、継続的に自社の利益見通しに対する自信を示し、株主への高いコミットメントを有していると我々は考えている。さらに、過去15年間継続した配当方針を貫いてきた企業は、現在の配当方針を今後も維持したいと考えるだろう。これらの企業は、世界金融危機の時においても1株当たりの配当を維持し、減配しなかったという事実は注目に値する。

相場の下落時にはこの戦略はどう機能したか?

過去のデータを見てみると、配当の質が高い企業のパフォーマンスは、過去15年間で東証株価指数(TOPIX)を167%ポイント上回った(図表2参照)。しかし、さらに重要な点として、この銘柄群は、世界金融危機、中国ショック(2015年の人民元切り下げ)など、市場が大混乱に陥った時でさえも底堅さを示していた(図表3参照)。例えば、TOPIXが2007年の天井から2009年の底まで60%近く下落した時、優良配当企業の下落率は20%未満に留まった。また、TOPIXが15%下落した2016年の下落率はわずか3%だった。一方で、市場が上昇している時にも、TOPIX並みか、ときにはそれを上回るパフォーマンスを見せている。これは、投資家が、底堅い事業経営と、堅調な(必ずしも非常に高いわけではないが)配当利回りを評価しているためだと我々は考える。継続性は、株価パフォーマンスだけではなく、投資家の選好にとっても重要な要素なのだ。

過去15年間で減配が1回のみの企業のトータルリターンも、ベンチマーク(TOPIX)を大幅に上回っている。しかし、2回以上減配を行った企業は投資家の失望を招き、株価パフォーマンスはTOPIX並に留まった。

安定したキャッシュフロー創出能力が質の高い配当を支える

我々の分析によると、配当の質が高い企業は、1株当たり利益(EPS)の伸びとキャッシュフローが比較的安定しており、結果、配当方針を維持することが可能であることが分かった(図表5参照)。さらに、配当性向(当期純利益のうち配当として株主に分配した比率)の平均は37%と、TOPIXの32%を若干上回る程度で、配当を増額する余地も残されている。

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