日本株式 組織改革が日本企業の生きる道

近年、日本企業の収益は回復基調にあり、今後はさらなる海外展開の拡大が見込まれる。だが、終身雇用や年功序列の賃金制度など、日本の特徴的な雇用制度が大きな障害となっている。

by 居林通、小林千紗、青木大樹 24 5 2019
  • 近年、日本企業の収益は回復基調にあり、今後はさらなる海外展開の拡大が見込まれる。だが、終身雇用や年功序列の賃金制度など、日本の特徴的な雇用制度が大きな障害となっている。
  • 「日本株式会社」にとって、抜本的、継続的な組織改革は、5~10年後を目途に検討すべき選択肢ではなく、むしろ目前に迫る課題であると考える。
  • 伝統的な雇用制度や給与体系の変革に成功した企業は、中核事業に欠けている部分を買収し、効率的に事業強化を推し進め、内部成長に頼らずに事業を拡大し、国内の競合他社に対する優位性を確保することができるだろう。

我々の見解

TOPIX500構成企業が2018年に計上した売上高合計のうち、海外での売上高は約35%を占め、10年前の25%から大幅に伸長した。この10年間で世界経済は40%以上成長したが、日本経済は停滞し続けている(図表1参照)。しかし、日本企業の収益は近年、回復基調にあり、今後、海外への展開が(国内部門の整理・統合と並行して)さらに拡大していくと見込まれる。だが、終身雇用や年功序列の給与体系といった日本の特徴的な雇用制度が大きな障害となっている。

「日本株式会社」にとって、抜本的、継続的な組織改革は、5~10年後を目途に検討すべき選択肢というよりも必須事項であろう。日本企業の大半がこうした組織改革を断行せざるを得なくなるのは、むしろ時間の問題だと我々は見ている。海外事業を自社のコア部分に統合するためには、より柔軟な雇用制度と成果主義の給与体系を導入する必要がある。日本の大手電機メーカーのCEOは先日「日本の企業がこれ以上終身雇用を維持していくのは難しい」と発言している。こうした発言は、日本企業による大規模な組織改革は待ったなしのところまできていることを示唆する。

日本企業には、様々な理由から、海外企業の買収や国内企業との合併を積極的に行う必要がある。こうした状況において、組織改革は日本企業の将来的な成功のカギを握ると考える。国内と海外のどちらで事業拡大を行うかは、実は問題ではない。変革のスピードを上げるために、組織改革は必要不可欠であり、改革を進められない企業は他社に後れを取ってしまうだろう。伝統的な雇用制度や給与体系を変えることに成功する企業は、中核事業に欠けている部分を迅速に買収し、効率的に事業強化を推し進め、内部成長に頼らずに事業を拡大し、国内の競合他社に対する優位性を確保することができるだろう。日本企業の間では、海外企業を買収したり、新会社を中核事業に取り込む動きが加速しつつある。

だが、過去10年間に日本企業が行った海外企業の買収・合併(M&A)を見てみると、有能な経営陣でさえも海外事業の買収は非常に難しいことがわかる。我々は、経営陣に外国人が非常に少ないことが大きな問題の1つだと考えている。TOPIX500構成企業のうち、取締役会における外国人はわずか2%にすぎない。本レポートでは、日本企業が組織改革を行う重要性と、それをいち早く実施した企業になぜ注目すべきなのかを取り上げる。外国人の取締役や社外取締役を招聘する日本企業は今後さらに増えるものと思われ、これにより事業ポートフォリオの再構築といった組織改革が加速するだろう。

約7年前に始まったアベノミクスを契機に日本株式会社は収益力を取り戻してきた(図表2参照)。だが、日本企業の利益率と自己資本利益率(ROE)は、ユーロ圏や中国企業に比べるとまだ見劣りする。アベノミクスによる企業利益のさらなる押し上げ効果も薄れてきている。日本企業はこれ以上好調な事業環境に依存することはできず、一方、グローバル環境でも、日本のような輸出依存国に対する風向きが逆風に変わり始めている。こうした中、組織改革は、企業が利益成長のために取ることができる数少ない選択肢の1つであると考える。具体的に言えば、他社の事業部門を買収して事業拡大を目指すならば、年功序列の給与体系を見直すことが必要不可欠だろう。加えて、コーポレート・ガバナンスの観点からも、事業ポートフォリオマネジメントに基づき他社から事業部門を買収したり、非中核事業を売却することが必要になってくるだろう。そして、企業の組織再編は投資家から評価され、それが株価バリュエーションの上昇につながる場合が多い。したがって、成長期待が低く、コングロマリット・ディスカウント(多くの産業を抱える複合企業(コングロマリット)の企業価値が、各事業の企業価値の合計よりも小さい状態のこと)により簿価を下回って取引されている企業にとっては、組織改革はより有効な手段となる。


 

居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド



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