日本経済 日銀の次の動きは

日銀は、最近の原油価格の下落を踏まえ、消費者物価指数(CPI)見通しを大幅に引き下げたが、物価安定目標に向けたモメンタムと経済成長には強気の姿勢を堅持した。

by 青木大樹 24 1 2019
  • 日銀は、最近の原油価格の下落を踏まえ、消費者物価指数(CPI)見通しを大幅に引き下げたが、物価安定目標に向けたモメンタムと経済成長には強気の姿勢を堅持した。
  • 消費税率引き上げ後に1%超のインフレ率と景気回復の底堅さが確認されれば、日銀は金融政策の変更に動くと我々はみているが、その時期はおそらく2020年前半になるだろう。
  • 超低金利政策による副作用への懸念が日銀内で強まれば、消費増税前の6月または7月に政策修正に踏み切る可能性もある。
  • 日銀が イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の修正を匂わせれば、円高圧力がかかる可能性がある。

1月の日銀政策決定会合の結果

1月22日~23日にかけて開催された日銀金融政策決定会合で、日銀は予想通り金融政策を据え置くことを決定した。日銀当座預金残高のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を引き続き適用し、長期債利回りの誘導目標を0%程度とする。また、資産の年間買い入れ額(保有残高の年間増加額)も国債を約80兆円、ETF(指数連動型上場投資信託)を6兆円、J-REIT(不動産投資信託)を90兆円に維持した。

日銀は生鮮食品を除くコアCPIインフレ率の見通しを大きく引き下げ、2019年度は前回の+1.4%から+0.9%へ(消費増税と教育無償化の影響を除く)、2020年度については同+1.5%から+1.4%へと下方修正した(図表1参照)。2019年度の見通しの大幅な引き下げは、主に原油価格の下落によるものである。我々の試算では、原油価格が30%下がるとコアCPIの上昇率は0.3ポイント下がる。携帯電話料金の引き下げを目指す政府方針も、2019年度のインフレ率を下押しするだろう。

一方、景気の先行きについては、消費税率引き上げ前後に政府が景気対策を実施する方針であることから、日銀は国内総生産(GDP)成長率の見通しを僅かながら上方修正し、2019年度は前回の+0.8%から+0.9%へ、2020年度は同+0.8%から+1.0%に引き上げた。今年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられる影響で、家計の可処分所得は5兆7,000億円(対GDP比1.1%)減少する見込みだ。だが増税に伴う増収分の約半分は教育無償化(2兆8,000億円)に割り当てられ、食料品に対しては軽減税率が適用される(1兆1,000億円)。一般会計予算の上乗せ(2兆円)と自動車税や住宅ローンの減税(3,000億円)を勘案すると、2019年度の家計の純負担額は合計でほぼゼロ、もしくはややプラスになる見通しだ(図表2参照)

GDP成長率見通しを引き上げた日銀は、コアCPIインフレ率見通しを下方修正したにもかかわらず、追加緩和の可能性は示唆しなかった。黒田総裁は、CPIインフレ率見通しの引き下げは原油価格の下落によるところが大きく、物価安定の目標に向けたモメンタムはしっかりと維持されていると指摘した。また、経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)には大きな変化はみられないとの認識も示した。

さらに黒田総裁は、超低金利政策が金融機関の収益力にもたらす副作用についても言及しなかった。これは、現段階ではまだ副作用が管理可能な程度にあると日銀が認識していると受け取れる。


 

青木大樹

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部
チーフ・インベストメント・オフィス
日本地域最高投資責任者(CIO) 兼日本経済担当チーフエコノミスト



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