日本経済 今後2年間のアベノミクスを占う

2021年9月に安倍首相の自民党総裁としての任期が終了する。今後アベノミクスの軸足は、金融政策から財政政策に移ると我々はみている。今後2年間のアベノミクスの行方について、金融・財政政策、社会保障改革、経済成長戦略、憲法改正といった観点から論じる。

10 9 2019
  • 2021年9月に安倍首相の自民党総裁としての任期が終了する。今後アベノミクスの軸足は、金融政策から財政政策に移ると我々はみている。
  • 労働生産性の改善や急激な円安を引き起こしうる大胆なアベノミクス政策が講じられることはないと予想するが、経済成長の安定化を支持する政策がとられるだろう。
  • 株式の点でいえば、デジタル化推進政策が支援材料になる業種や、収益性改善のための組織改革を行っている企業を推奨する。

2012年12月に始まった安倍首相の任期は2021年9月に終了する予定である。自民党総裁としての3度目の任期はそこで終了するが、党内からの反発が予想されるため党則を変更して連続4期を認めることはなさそうだ。本稿では、これから2年間のアベノミクスの行方について、金融・財政政策、社会保障改革、経済成長戦略、憲法改正といった観点から論じる。

手短にいうと、安倍首相の軸足は金融政策から財政政策に移る公算が大きい。労働生産性の改善や急激な円安を引き起こしうる大胆なアベノミクス政策が講じられることはないと予想するが、財政政策を中心に経済成長と株式市場の安定化を支える断固とした政策がとられるだろう。また、デジタル化の推進(キャッシュレス社会への移行を含む)、労働効率の向上、組織改革を通じたコーポレート・ガバナンスの改善、社会保障制度改革といった政策への取組みが支援材料となる業種や企業に注目する。

金融政策

2016年に日銀がマイナス金利政策を採用し、10年国債利回りの誘導目標をゼロ%程度に設定して長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を導入してから、日本国債のイールドカーブは著しくフラット化が進んだ。最近になって日銀はこうした金利政策が金融機関の収益性に与える影響を懸念し始めた。2016年以降主要銀行の貸出態度は伸び悩んでいる(図表1参照)。また米中貿易協議の過熱とそれに伴う世界経済の減速懸念から日本国債の長短金利が逆転し、ドル円は4月時点の112円から105~106円へと円高ドル安が進んだ。

短期的にみると、日銀は9月か10月に短期政策金利を15ベーシスポイント(bp)引き下げてイールドカーブ・コントロールの調整を行うものと予想される。市場環境次第では10年国債金利の誘導目標をゼロ%程度に維持しつつ、現在許容している変動幅を拡大する可能性もある。最近日銀は国債買い入れペースを減速させているが、イールドカーブのスティープ化を促したい姿勢がうかがえる。金融セクターの収益性を下支えするために、金融機関向け貸出支援を再開する可能性がある。また市場動向によっては上場投資信託(ETF)の購入を加速させる可能性もある。

だが国債の積極的な買い入れや直接引き受けのような大胆な金融緩和策を日銀が講じる可能性は低いとみている。安倍首相は6月に、失業率は過去最低の2.2%まで低下しており、日銀は雇用の観点ではすでに目標を達成していると述べた。この発言は安倍政権が目先2%の物価目標の達成を急いではいないことを示唆するものと考える。

さらに、過度な金融緩和はイールドカーブのフラット化を一段と進め、金融セクターの収益性が損なわれる危険性が高まるだろう。日銀はすでに国債の年間買い入れペースを2016年ピーク時の80兆円から2019年には30兆円へと減らしている(図表2参照)。日本円について、安倍政権と日銀はもはや急いで円安誘導を行おうとはしていない。

日銀は長期的には金融政策の正常化を始めるだろう。その方法として、まず10年国債の目標利回りを引き上げることでイールドカーブのスティープ化をはっきりと打ち出してから、2020年下期以降に短期政策金利を引き上げると予想する。円高のペースが緩やかならば製造業は事業計画を修正できるため、日銀の注目は為替水準ではなく円高のペースに向けられている。

財政政策

今後2年間は、財政政策が中心になるとみられる。7月の参院選後、安倍首相は10月に8%から10%への消費税率引上げを正式に決めた。政府は消費増税に伴う悪影響の緩和策をすでに講じている(図表3参照)。

だが、世界的な景気減速によるリスクがあるため、安倍政権は今年補正予算を組む可能性がある。今回の消費増税を成功させることが極めて重要だと安倍政権は認識している。2014年~2016年の時のように消費が長期間低迷して増税が失敗に終われば、消費税率のさらなる引き上げは一段と難しくなるからだ。今後2年間は補正予算と通常予算の増額が国内需要を下支えしそうだ。




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