日本経済 日銀は予防的な動きに出るか?

日銀は6月20日の金融政策決定会合で、予想通り金融政策の現状維持を決めたが、「海外経済をめぐる下振れリスクは大きい」と指摘した。日銀の黒田総裁は、世界経済についてリスクが高まっていることは認めたが、今年後半から世界経済は再び加速するとの基本的な見方は変わっていないことを強調した。

20 6 2019
  • 日銀は6月20日の金融政策決定会合で、予想通り金融政策の現状維持を決めたが、「海外経済をめぐる下振れリスクは大きい」と指摘した。
  • 日銀の黒田総裁は、世界経済についてリスクが高まっていることは認めたが、今年後半から世界経済は再び加速するとの基本的な見方は変わっていないことを強調した。
  • 景気後退リスクの兆候が顕在化するまで日銀は追加緩和を控えると予想され、景気対策としては追加緩和ではなく追加補正予算の方が可能性が高いとみる。

日銀は6月20日の金融政策決定会合で、予想通り政策金利を据え置いた。この日、日本の10年国債金利は過去2年間で最低水準となる-0.17%まで下げた。長短金利操作については、短期金利を-0.1%、10年国債金利の誘導目標をゼロ%程度で据え置いた。国債買い入れについては保有残高の増加額のめどを年間約80兆円とする方針を維持した。声明文の中で日銀は、国内景気は底堅く、「日本経済は基調としては緩やかに拡大しており、今後も増加基調をたどるだろう」と述べている。だが同時に「海外経済をめぐる下振れリスクは大きいとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある」と改めて強調した。

黒田総裁は記者会見で、「世界経済の下方リスクが高まっているが、これは一時的なもので、今年後半から世界経済は再び加速するとの見方は変わっていない」と指摘した。また10年国債金利の変動幅については弾力的に対応することが適当であるとも付け加えた。国内債券市場は追加緩和を既に一部織り込み始めており、10年国債金利は-0.16%~-0.18%で推移している(図表1参照)。また黒田総裁は、米連邦準備理事会(FRB)による7月利下げの可能性について、現時点で市場にすべて織り込まれていると捉えるならば、実施された場合でも市場への影響は軽微だろうとも述べた。この発言は、現在の市場環境では、近い将来日銀が政策変更に動く可能性は低いことを示唆するものだと我々は考える。

日銀は予防的に追加緩和に動くか?

日銀が近い将来金融政策を変更する可能性について、エコノミストの約36%が年内の追加緩和を予想している(4月の21%から上昇、図表2参照)。だが、我々は、日銀が現時点で予防的な動きに出るとの見方には懐疑的だ。その主な理由は、こうした先制的な対応が円安をもたらしかねず、日米貿易交渉前に米国からの非難を招く可能性があるからだ。また追加緩和余地は小さく、景気後退リスクが顕在化するまで、追加緩和というカードを切らないことが肝要だと考える。

そこで重要になってくるのが、7月1日に公表予定の日銀短観と8月9日に公表予定の4-6月期(第2四半期)の国内総生産(GDP)成長率だ。日銀が追加緩和に踏み切った2014年と2016年を振り返ってみると、当時はGDP成長率がマイナスに落ち込み、非製造業でさえも企業の景況感が急速に冷え込み(図表3参照)、ドル円相場は大企業の想定為替レートを大きく超えて円高が進んでいた(図表4参照)。最近のGDP成長率や企業センチメントは、日銀が追加緩和を迫られるほどの状況ではないが、次回の短観では企業センチメントの悪化が確認され、第2四半期のGDP成長率がゼロ%近くまで落ち込むと予想する(第1四半期のGDP成長率は前期比年率+2.2%)。10月の消費増税前に企業センチメントを下支えするために、安倍内閣が何らかの対策を打ちだす公算は大きい。だがその場合の手段としては、日銀の追加緩和よりも政府による追加補正予算の可能性の方が高いとみている。

しかしながら、もし景気後退リスクの明らかな兆候が確認されれば、日銀は追加緩和に踏み切る可能性があるとみる。言い換えれば、マイナス成長を示唆する企業センチメントの著しい悪化や急激な円高が進まない限り、日銀は次の手を打たないだろう。日銀が4月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の先行き指針(フォワード・ガイダンス)を明確化したことを踏まえ、我々は、日銀が10年国債金利の上昇を容認し、金融政策の正常化に舵を切る時期は2020年第2四半期になる可能性が高いと考えている。消費税率引き上げ後も景気回復の足取りが確かで、1%を超えるインフレ率基調が確認されるまでには、もうしばらく時間が必要だろう。

追加金融緩和が必要ならば、日銀は何ができるだろうか?

今のところ、我々は日銀が近い将来に追加緩和に踏み切るとは予想していない。しかしながら、仮に円が急騰するかその他の経済指標が景気後退リスクを示唆すれば、日銀は、金融セクターの収益への副作用を緩和するために10年国債金利の目標は維持しつつ、短期金利を足元の-0.1%から-0.3%へと引き下げる可能性があると考える。

しかし、足元の国債買い入れ額と10年国債金利の誘導目標を維持することで、イールドカーブを効果的にコントロールできる限り、日銀が国債やその他資産の買い入れ額を増やすことはないだろう。日銀はすでに国債の年間買い入れ額のペースを、2016年ピーク時の80兆円から2018年には38兆円へと減らしている。10年国債金利の誘導目標をゼロ%程度としつつ、買い入れ額は2019年末までに15-25兆円、2020年末までに5-15兆円へと一段と減少すると予想する。




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