Monthly Letter 7月号 株式市場と債券市場どちらが正しいのか?

債券市場は景気減速を示唆しているように見えるが、株式市場は低インフレのゴルディロックス(適温経済)シナリオ通りの、経済成長が続くという前提での相場展開となっている。一見不整合に見える2つの物語に一貫性を持たせるには、次のように考えるしかない。

20 6 2019

「真理とは何か?」とドイツ哲学者フリードリッヒ・ニーチェは疑問を呈し、次のように答えた。「それは、隠喩、換喩、擬人観からなる動的な一群である」。ノーベル経済学者ロバート・シラーは、近年屈指の重要な経済論文の中で、今日の経済と市場では、我々が自らに語る物語は数字と同じくらい真理を物語っていると主張している。

シラーの「ナラティブ(物語)経済学」は、いかにして「物語は行動を促し、その行動を心の奥底にある価値観や必要性と結び付けるか」を説明し、消費や投資といった人の基本行動の妥当性を説く。現在、株式市場と債券市場は非常に異なる物語を語っているのだが、我々は、頑強なグローバル・ポートフォリオを構築する一貫としてこの2つを理解する必要がある。

米国の債券市場は、今後6カ月以内に75ベーシスポイント(bp)の利下げを織り込んでいる。つまり景気は今後減速に向かうという物語を語っているように見える。一方、米国の株式市場は史上最高値近辺に戻っている。つまり経済成長は今後も続くという物語を語っているように見える。

以上をまとめて考えると、一見不整合に見える2つの物語に一貫性を持たせるには、次のように考えるしかない。つまり、債券市場は、「米連邦準備理事会(FRB)は景気後退を恐れ、思い切って予防的な利下げに乗り出さざるを得ない」と語っている。これに対し、株式市場は、「金融危機以来ずっと成功してきたように、FRBは景気後退を回避するために必要な措置を取り続けるだろう」と語っていると解釈するのだ。

6月28~29日のG20首脳会議と7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、目先の市場の方向性を決定づける2大イベントであり、今年後半の物語の骨子が固まるだろう。我々の基本シナリオでは、G20での米中交渉で突破口が開けることも、米国がさらなる関税を課すこともないと想定している。米国の景気指標に大きな改善が見られない場合、景気後退の回避姿勢を明確にするために、FRBは次のFOMCで利下げを実施する可能性が高い。

我々の戦術的資産配分では、株式と新興国通貨をオーバーウェイトとする。FRBが予防的な利下げをした場合には高リスク資産とキャリー(金利獲得)取引が高パフォーマンスを上げられることを想定している。しかし、キャッシュに対して米2年国債をアンダーウェイトすることで、FRBの利下げ幅が予想を下回った場合のリスクに備える。さらに、G20首脳会議で米中間の協議が決裂するリスクに備えて、複数のカウンター・シクリカルな(反景気循環的)ポジションも取る。



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