Investor's Guide 7月号 株式市場と債券市場どちらが正しいか?

債券市場は景気減速を示唆しているように見えるが、株式市場は低インフレのゴルディロックス(適温経済)シナリオ通りの、経済成長が続くという前提での相場展開となっている。一見不整合に見える2つの相場展開に一貫性を持たせるには、次のように考えるしかない。

27 6 2019

戦術的推奨

資産配分

我々の基本シナリオでは、世界の経済成長率は今年後半に安定すると予想している。株式のバリュエーションは割高ではなく適正水準に見え、株式のリスク・プレミアムは、債券に対して魅力的な水準を維持している。しかし、米中貿易協議に関する両国の発言が5月初旬以降激しさを増したため、早期合意は不確実性が増している。消費者の景況感の悪化や設備投資の鈍化を招くというシナリオでは、世界経済の成長率が潜在成長率を下回るリスクが浮上してくる。とはいえ、景気サイクルの終焉は予想していない。基本シナリオでは、6月末の20カ国・地域(G20)首脳会議後に米中貿易紛争が休戦状態に入ると予想している(訳注:G20に合わせた米中首脳会談で貿易協議の再開を合意)。貿易協議は継続され、最終的には何らかの合意に達するだろうが、これまでの想定以上に時間がかかる可能性が高い。よって、グローバル株式のオーバーウェイトを継続しつつ、S&P500種株価指数のヘッジ・ポジションで下落リスクに対する一定の備えを講じる。

債券

高格付債に対する欧州投資適格社債のオーバーウェイトを継続する。欧州投資適格社債は、ユーロ圏経済の安定化と欧州中央銀行(ECB)の金融緩和政策に下支えられるとみている。企業のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)は健全で、かつ我々の基本シナリオでは今後12カ月以内での景気後退入りの可能性はないと予想しているため、キャリー収入が魅力的とみる。米2年国債を戦術的(短期的)にアンダーウェイトとしている。世界的に景気指標が軟化しつつあることから、米連邦準備理事会(FRB)による利下げの可能性は高まっている模様だ。しかし、今後4回程度の利下げを織り込んでいる市場の反応は過剰だとみている。また、日本円のキャッシュに対する日本10年国債のアンダーウェイトを終了する。日本ではインフレ圧力が低いため、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)で10年債金利を高めに誘導するきっかけが当面見つかりそうにない。

株式

世界の経済成長率は今年後半に安定し、原油価格は今後6カ月で上昇するとの見方に変更はないが、米中貿易交渉をめぐるリスクは依然として高い。我々が注視しているリスク・シナリオが顕在化しなかった場合には、株式市場は緩やかに上昇する可能性がある。ユーロ圏株式に対する日本株式と米国株式のオーバーウェイトを継続する。ユーロ圏と日本は世界の景気サイクルの影響を大きく受けるが、ユーロ圏が景気回復をすでに織り込んでいるのに対し、日本はまだ織り込んでいない。ユーロ圏株式は日本株式よりも割高に見える。また、2019年と2020年の米国企業の増益率が欧州企業を上回る見通しであるため、ユーロ圏株式に対し米国株式もオーバーウェイトとする。さらに、スイス株式に対するカナダ株式のオーバーウェイトを終了する。カナダの経済成長率が鈍化してきたことに加え、主要中央銀行のハト派姿勢の強まりと欧州の金利低下を背景に、ディフェンシブ性の高いスイス株式の債券の代替商品としての魅力が高まっているからだ。

外国為替

豪ドルに対する英ポンドのオーバーウェイトを追加する。今後3~6カ月での合意なきブレグジット(英国のEU離脱)のリスクを市場は織り込み過ぎており、英ポンドは購買力平価よりもかなり割安になっている。一方、オーストラリア準備銀行(RBA、中銀)は、低迷する国内経済の押し上げを図るため利下げに踏み切った。カナダ・ドルとスイス・フランに対するノルウェー・クローネのオーバーウェイト、およびスイス・フランに対するユーロのオーバーウェイトに加え、米ドルに対する豪ドルのアンダーウェイトを継続する。景気感応度の高い先進国通貨バスケット(豪ドル、ニュージーランド・ドル、台湾ドル)に対する選別した新興国通貨バスケット(南アフリカ・ランド、インド・ルピー、インドネシア・ルピア)のオーバーウェイトも継続する。このポジションは米中間の貿易摩擦の影響を過度に受けることなく、高金利による金利収入が見込める。



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