Investor's Guide 6月号 米中は合意を急いでいないのか?

米国では5月2日、労働生産性の伸び率が9年ぶりの高水準を記録した。その翌日には、失業率が50年ぶりの低水準になったと公表した。しかし、上機嫌で週末を迎えた投資家は、最悪の気分で月曜日を迎えることになる。トランプ大統領は5日、中国からの輸入品に追加関税を課すとツイートし、米中貿易紛争に拍車がかかる事態となったからだ。

30 5 2019

資産配分

我々の基本シナリオでは、世界の経済成長率は今年後半に安定すると想定している。しかし、米中貿易協議に関する両国の発言が最近激化しており、世界経済と金融市場の下落リスクが高まってきた。基本シナリオでは、米中貿易交渉は今後6カ月で妥結に至るか、貿易紛争が休戦すると想定しているが、それまでの交渉の道のりは平たんではなく、市場が大きく変動する可能性もある。不透明感が長引き、消費者景況感の悪化や設備投資の鈍化を招くというシナリオでは、世界経済の成長率が過去平均を上回るよりも下回るリスクが高いと我々はみている。全体としては、リスクに対して概ね中立(リスク・ニュートラル)なスタンスを維持する。

債券

高格付債に対する欧州投資適格社債のオーバーウェイトと、2年イタリア国債のアンダーウェイトを継続する。このポジションの組み合わせは若干の金利収入が見込め、イタリアのリスクが再燃した場合には下落リスクに対するプロテクションを提供する。日本円のキャッシュに対する日本10年国債のアンダーウェイトも継続する。今後6カ月の世界の金利は、低下よりも上昇の方向に動くとみている。

株式

世界の経済成長率は今年後半に安定し、原油価格は今後6カ月でさらに上昇するとの我々の見方に変更はないが、米中貿易交渉をめぐるリスクが上昇している。我々が注視しているリスク・シナリオが実現しなかった場合、株式市場は緩やかに上昇する可能性がある。株式のバリュエーションは割高よりもむしろ適正水準にあるとみられ、株式リスクプレミアムは、債券に対して魅力的な水準を維持している。スイス株式に対するカナダ株式のオーバーウェイトを継続する。スイス株式のバリュエーションはやや割高な一方で、堅調な原油価格がカナダのエネルギー関連企業の収益を支えるだろう。ユーロ圏株式に対する日本株式のオーバーウェイトも継続する。ユーロ圏と日本は世界の景気サイクルの影響を大きく受けるが、ユーロ圏がマクロの景気回復を織り込んでいるのに対し、日本はまだ織り込んでいない。ユーロ圏株式は、日本株式よりも割高に見える。

外国為替

景気感応度の高い先進国通貨バスケット(豪ドル、ニュージーランド・ドル、台湾ドル)に対する選別した新興国通貨バスケット(南アフリカ・ランド、インド・ルピー、インドネシア・ルピア)のオーバーウェイトを開始する。このポジションは米中間の貿易摩擦やその他の世界のリスクオンとリスクオフの要因の影響を過度に受けることなく、高金利による金利収入が得られるとみている。豪ドルのアンダーウェイトに対する米ドルのオーバーウェイトを継続する。豪ドルは景気変動の影響を受けやすい通貨で、リスク回避傾向が高まって外国人投資家が資産を自国に還流させる場面では下げやすい。また、オーストラリア経済は中国の貿易動向に左右されやすく、国内景気も減速していることから、オーストラリア準備銀行(中銀、RBA)が利下げを検討し始めるとみている。カナダ・ドルとスイス・フランに対するノルウェー・クローネのオーバーウェイト、およびスイス・フランに対するユーロのオーバーウェイトを継続する。

長期資産配分(1~4年)

今後(ブレグジット後)の英国株式市場は、従来よりもボラティリティ(相場変動率)が上がると予想し、アンダーウェイトとしている。米ドル建て新興国国債は、相対的に今後長期的な価値があると予想し、オーバーウェイト・ポジションを維持する。さらに、投資家には通貨ヘッジをしない形で日本株式へ投資することを推奨する。日本円は大幅な割安水準にあり、米ドル、ユーロ、スイス・フランに対して今後長期的に上昇する可能性があるからだ。

*戦術的資産配分は、6月5日時点で一部変更になりました。変更内容については、同日付のCIO Alertをご参照ください。



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