House View Weekly 貿易戦争から技術戦争へ

米国は5月初めに、2,000億米ドル相当の中国輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げ、関税対象外の3,200億米ドル分についても追加関税を課す計画を明らかにした。これ以降、米中関係は大きく悪化した。

17 6 2019

米国は5月初めに、2,000億米ドル相 当の中国輸入品に対する関税を10% から25%に引き上げ、関税対象外の 3,200億米ドル分についても追加関税 を課す計画を明らかにした。これ以降、 米中関係は大きく悪化した。中国はそ の報復措置として、600億米ドル相当の 米輸入品に対する追加関税の税率を 引き上げた。威嚇と対抗措置の応酬に より、4月末頃には合意すると楽観視し ていた市場は揺れ動いた。

トランプ米大統領は貿易協議を中断 した理由として以下の3点を挙げてい る。1)米国の1-3月期(第1四半期)GDP の高い伸び(年率換算で前期比3.1% 増)には関税がプラス寄与しているこ と、2)対中関税を負担しているのは中 国であること、3)中国が貿易交渉での 約束を撤回したこと。中国政府はこれに 対して、米中貿易協議に関する中国側 の立場を伝える白書を公表し、米国の 追加関税の全面撤廃、貿易赤字削減 に向けた米製品の輸入拡大は実需に 合致した規模とすべき、米国が交渉過 程で不当に高い要求をしてきたこと、中 国の尊厳と主権を尊重すること、を主 張した。

米商務省は5月16日、中国のファーウェ イを「エンティティリスト(禁輸措置対象の リスト)」に追加した。これは実質的に同 社に対するハードウェアおよびソフトウ ェアの供給を米企業に禁じる措置だ。フ ァーウェイは特定の中核部品の調達を 米国のサプライヤーに依存しており、直 ちに切り換え可能な代替サプライヤー も存在しないことから、これはファーウェ イにとって深刻な打撃である。中国はこ れに対し、多くのハイテク製品の製造に 欠かせない主要材料であるレアアース (希土類)の輸出規制を検討する意向を ほのめかした。また、中国商務部は5月 31日、中国企業の権益を損ねる「信頼 できない外国企業リスト」を作成する方 針を明らかにし、米国のエンティティリス トに対抗する姿勢を示した。

米地質調査所によると、世界のレアア ース生産の71%を中国が占めるが、同 国の有する埋蔵量は世界全体の38% にとどまる。中国は、同国のレアアース 供給に依存する国から多くの中間財を 輸入しているため、輸出規制を実施す るのは難しい。加えて、中国は世界埋 蔵量の38%しか支配していないため、 他国がレアアースの調達先の多様化を 急ぐ可能性を考慮すると、規制の影響 は(混乱は招くものの)短命に終わる見 込みが強い。

今月28~29日に行われる大阪G20サ ミットでトランプ大統領と中国の習近平 国家主席との首脳会談が実施されると の発表はまだない(訳注:18日時点で 双方とも首脳会談に応じる意向を示し ている)。我々は首脳会談での通商合 意の可能性を当初20%と予想していた が、確率は次第に下がっている。

ファーウェイの主要サプライヤー(同社 に対する収益エクスポージャーが20 ~25%)の一部では、同社に対する米規 制による目先の影響懸念により、この1 カ月間で株価に25~30%の調整が入っ ている。米中貿易戦争が技術冷戦へと 形を変えており、中国ITハードウェア・サ プライヤーの利益予想が大幅に下方修 正されていることも踏まえ、中国ハードウ ェアセクターに対する慎重姿勢を維持す ることを勧める。一方、ソフトウェアセクタ ーには投資機会が見出せるだろう。

米国の技術規制に直面した中国政府 は、技術革新をけん引する国内企業、 特に半導体、ITセキュリティ、インフラソ フトウェア部門の主力企業に大規模な 支援を行っている。中国政府は今後も 税制優遇措置や直接的な補助金など の形でIT産業を支える政策を発動し続 けると予想される。また、間もなく開設 予定の新しい株式市場「科創板」は、テ クノロジー企業の新たな資本調達の場 となるだろう。中国政府は主要ITテクノ ロジーのセキュリティと管理の重要性を 強調しており、また、ハイテク分野の内 製化も急いでいる。これらを背景に、中 国IT企業の市場シェア拡大が加速する と予想される。よって、我々は政府の支 援が中国の主要ソフトウェア企業の株 価の下支えになるとみている。



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