House View Weekly FRBとトランプ大統領の「プット」に頼ることは禁物

貿易摩擦が経済と金融政策に及ぼす影響が引き続き市場の価格を大きく左右している。対立の激化を受け、株価と債券利回りは5月上旬以降低下している。

10 6 2019

今週の要点

1. 市場のFRB利下げ期待は行き過ぎ
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が先週、FRBは景気が減速した場 合に適切な行動を取る用意があると発言したことで、利下げの期待が高まっ た。これを受けて、米国2年国債、5年国債、10年国債の利回り低下が加速 し、過去2週間で40ベーシスポイント(bp)前後低下した。しかし、我々は、こう した反応は行き過ぎであり、最近の市場の動きによって投資機会が生まれ たとみている。市場は現在、2020年末までに100bp程度の利下げが実施さ れる可能性を織り込んでいる。だが、これは景気後退時の対応に相当する 利下げ幅であり、実際のところ、景気後退入りの可能性は低いとみている。 米国の経済統計は総じて堅調であり、失業率が数十年ぶりの低水準である 3.6%に低下し求人数が増加していることは、労働市場の需給の緩み(スラッ ク)がさほど残っていないことを示している。こうした好調ぶりを踏まえると、パ ウエル議長の発言は利下げ間近というよりも、柔軟な姿勢を確認したものと みるのが妥当だろう。市場の過剰反応はキャッシュに対して米国債をアンダ ーウェイトとする好機を提供する。

要点:キャッシュレートが2年、5年、10年国債より高いことから、米ドルキャッ シュに対する米国債へのアンダーウェイトはプラスの金利収入をもたらす。経 済情勢が悪化した場合にFRBが利下げに踏み切る可能性はあるものの、利 下げの時期や下げ幅に関する市場の織り込み具合は行き過ぎとみている。

2. 米国株式はユーロ圏株式をアウトパフォームする見込み
債券市場が成長見通しについて過度に悲観的に織り込んでいるなか、リスク はここ数週間で上昇した。トランプ米大統領が関税を盾に移民問題でメキシ コから譲歩を引き出すことに成功したことで強硬手段が有効と主張し易くなっ ており、中国に対しても強硬路線を維持する可能性がある。このように不透 明感が高まり世界の経済成長が減速する環境下では、ユーロ圏株式の方が 脆弱であると考える。歴史的に見ると、ユーロ圏株式が米国株式をアウトパ フォームしたのは、世界における製造業の新規受注統計が好調で、ユーロ 圏が米国に匹敵する成長を遂げている時期に限られてきたからだ。しかし、 世界の購買担当者景気指数(PMI)の新規受注項目は景気判断の分かれ目 となる50をかろうじて上回る52にとどまっており、しかも低下傾向にある。新 規受注が弱いのは、欧州製造業の大きな部分を占める投資財への需要が 不透明感を受けて減退したためだ。今年末までのユーロ圏GDP成長率のコ ンセンサス予想は、米国の同予想を大きく下回っている。景気回復の可能性 が後退していることを認めた欧州中央銀行(ECB)は先週、成長見通しを引き 下げ、フォワードガイダンスを変更して利上げ開始時期を2020年6月まで2四 半期延期した。ユーロ圏はブレグジット(英国のEU離脱)や予算をめぐるイタ リアと欧州委員会の対立という政治的逆風にも直面している。

要点:我々はユーロ圏株式に対して米国株式をオーバーウェイトとする。ユ ーロ圏株式は世界経済の減速の影響を受けやすく、株価水準も割安ではな い。12カ月予想株価収益率(PER)は我々が想定する適正水準の12倍に対し 13.6倍となっている。

3. 海洋保全は投資機会をもたらす
6月8日の「世界海洋デー」には、世界各地で海および人類の幸福や地球環 境における海の役割についての認識を高める活動が行われた。国連による と、沿岸資源と海洋資源が世界経済に寄与する額は毎年28兆米ドルにのぼ っている。しかし、海洋は環境悪化、酸性化、魚類の乱獲、気候変動、汚染に さらされている。投資家は長期成長の可能性がある産業に資金を配分する ことで、海洋保全に貢献することが可能であると我々は考えている。リサイク ルを強化することで、海洋への廃棄物やプラスチックごみの脅威を軽減でき る。年間市場規模1.5兆米ドルの廃棄物セクターは今後数年間にわたり、年 率1桁台後半の伸びが予想される。一方、管理された環境での海産物の養 殖は海産物乱獲の脅威を軽減すると期待されている。国連食糧農業機関に よると、世界の魚類と海産物消費に占める養殖の割合は1990年の18%から 2014年には50%に上昇し、2025年までに57%に達すると予測されている。

要点:我々の中長期の投資テーマである「廃棄物管理」、「リサイクル」、「農 業の収量向上」は、ここで取り上げた諸問題とこれら産業の変化を促す可能 性がある技術革新に触れている。汚染と廃棄物はUBSが投資の持続可能性 を評価する際に考慮する重要な注目点の1つである。



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