House View Weekly メキシコに制裁関税を突きつける米国

米国と主要貿易相手国との摩擦が拡大している。トランプ米大統領は6月10日からメキシコからのすべての輸入品に制裁関税を課すと発表した。10日以降5%の追加関税をかけ、その後「不法移民の問題が解決されるまで」毎月5%ずつ関税率を引き上げ、最大25%の関税を維持する。

03 6 2019

米国と主要貿易相手国との摩擦が拡大している。トランプ 米大統領は6月10日からメキシコからのすべての輸入品に 制裁関税を課すと発表した。10日以降5%の追加関税をか け、その後「不法移民の問題が解決されるまで」毎月5%ず つ関税率を引き上げ、最大25%の関税を維持する。

現時点では、関税が全面的に実施されるかどうかは不透 明である。米産業界からは反対の声が上がっており、北米 自由貿易協定(NAFTA)や世界貿易機関(WTO)のルールを 無視して関税を課すという提案に異議申し立てを行う可能 性もある。トランプ大統領は関税案の根拠として「国際緊急 経済権限法(IEEPA)」を持ち出した。この法律は過去には経 済制裁や資産の凍結に用いられたことがあるが、関税実施 の根拠とされたことはない。しかし、たとえ法的措置が取ら れたとしても、議会調査局は関税はおそらく制定法では認 められると結論づけている。

議会は大統領の権限行使を抑制する役割を担っている が、IEEPAを発動させた国家非常事態宣言を無効化する決 議を可決した前例はない。問題は超党派で一致団結して、 大統領に異論を唱える政治的意思があるかどうかである。 トランプ政権が掲げる「公平な取引」に対しては超党派の幅 広い支持を得ているものの、その戦術については、特に制 裁関税に対する支持はやや後退する。対象国も問題であ る。米国の有権者と政治家は、メキシコよりも、地政学的・ 経済的覇権争いの相手である中国への対抗措置を支持す る可能性が高い。

関税が実施されれば、次のような影響が予想される。

  • 米国のGDPに大きな影響。 2018年の米国のメキシコか らの輸入は3,520億米ドルに達し、現在関税の対象になっ ている中国輸入品の2,500億米ドルを上回っている。貿易 紛争の長期化で中国からの全輸入品(5,500億米ドル)に 25%の関税が課された場合、米国のGDP成長率は最大 で1ポイント低下する可能性がある。メキシコからの輸入 品に25%の関税がかけられれば、米国は景気後退入り するおそれもある。
  • サプライチェーンが大混乱するおそれ。 米国とメキシコの 貿易の3分の2は社内調達であり(世界貿易の同比率は 40%)、こうしたサプライチェーンがリスクにさらされるだろ う。投資が中止され雇用が削減されれば、景気後退のリ スクが大幅に高まる。2018年に米国が中国に発動した制 裁関税の影響で、企業に不透明感が高まり投資計画が先 送りされた。この結果、今年の1-3月期(第1四半期)は、ド イツを中心に世界の製造業が減速した。
  • 消費者にとって関税の影響は不可避。 メキシコは、2018 年9月に米国が発表した対中関税リストの対象製品を代っ て輸出することで、中国から市場シェアを奪ってきた。シェ アを奪取したのは、カメラ、録画機器、モデム、コンピュー タ部品など多数の分野に及ぶ。したがって、両国に関税が 課された場合、米国の消費者にとって関税の影響は不可 避となるだろう。例えば、米国が輸入するテレビの35%は メキシコ製であり、コンピュータ、サーバー、テレビなどを 扱うテクノロジー・ハードウェア企業が最も打撃を受けると みられる。
  • 最大の被害者は自動車業界。 自動車と自動車部品は 米国のメキシコからの輸入品に占める額が最大であり (2018年は930億米ドル)、その影響は米国内にとどまら ない。例えば、欧州の主要自動車メーカーとサプライヤは メキシコでの生産を拡大している。25%の関税が実施され れば、欧州からの直輸入自動車に課せられる関税の影響 を除いても、欧州の自動車産業の1株当たり利益(EPS)は 最大で5%程度低下する可能性がある。
  • メキシコ・ペソも一段の下落が予想される。 関税が全面的 に実施された場合、米ドル/メキシコ・ペソのレートは21.5 までペソ安が進むと予想する(関税実施が最終的に回避 された場合でも20.0と予想)。

今回の関税の範囲の拡大は、米国の現在の通商関係の脆 さを示すとともに、個別リスクを軽減するために地理的にも産 業別でもポートフォリオを分散する重要性を改めて認識させ た。こうした状況を踏まえ、我々はこの1カ月で戦術的資産配 分のリスクを減らした。さらに、下振れリスクに備えて反景気 循環的なポジションの保有も推奨する。



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