House View Weekly 貿易摩擦の再燃:投資機会を見出す

トランプ米大統領は中国製品にかかる関税を10%から25%に引き上げ、さらに新たに3,250億米ドル相当の中国からの輸入品にも25%の関税をかけるとしている。市場は交渉が高い確率で妥結すると織り込んでいたため、世界のリスク資産はこれを受けて急落した。

06 5 2019

今週の要点

1. トランプ米大統領が対中関税引き上げを表明

米国のトランプ大統領は5月10日から中国からの輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げ、さらに3,250億米ドル相当の中国製品も25%の関税対象とすると警告した。数カ月にわたり通商交渉に進展の兆しが見えていただけに、今回の発表後、中国のCSI300指数は5.8%急落し、S&P500種株価指数先物は1.6%下落した。米中の貿易紛争は交渉により部分的に妥結するとの我々の基本シナリオに変更はない。しかし、予想外の事態が発生する可能性は常に存在するため、グローバル株式のオーバーウェイトを維持しつつ、プット・オプションで下落リスクに備えている。トランプ大統領が発表通り対中関税を引き上げるか、それとも通商交渉が再開されるのかが明らかになるまで、今後数日はボラティリティ(相場の変動)の上昇に備える方が賢明である。また、クオンツモデルの取引により、当初は緩やかであった市場の下落率が拡大するおそれもあり、売りが売りを呼ぶリスクにも警戒する。

要点:通商交渉をめぐる楽観論は2019年の株式市場の上昇をけん引してきた主因であり、我々が予想する景況感の回復の裏付けでもある。最終的に交渉が妥結するとの我々のシナリオに変更はない。しかし、トランプ大統領のツイッター発言は、最終的に通商協議が決着しグローバル経済の一段の回復が鮮明になるまでは、成長とともに下振れ余地にも備える必要があるとする我々の見方を改めて確認する形となった。

2. 市場の反応にもかかわらず、FRBは当面金融政策を維持

米連邦準備理事会(FRB)は5月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の現状維持を決定したが、市場はこれをタカ派的と解釈し、S&P500種株価指数は同日に0.75%低下した。パウエルFRB議長の就任以降FOMCは10回開催されているが、政策発表後に同指数は今回を含め9回下落している。しかし、今回の会合でFRBは今後の政策運営についてあくまで中立的なスタンスを維持することを確認したと我々は考える。全体としては、FRBは現在のインフレ率の低下は一時的要因による公算が大きく、いずれ2%の目標に戻ると予想する一方で、1‐3月期(第1四半期)は「経済活動が堅調なペースで拡大している」反面、「家計支出と企業の設備投資は鈍化している」とし、引き続き統計を重視していく姿勢を示した。インフレ率が2%を超えない限り、FRBが追加利上げを実施することはないと我々は考えており、じっくりと経済統計の方向性を見極めていくと予想する。

要点:インフレ率が目標の2%を超えない限り、追加利上げが実施される可能性は低い。一方、政治的圧力はあるにせよ、経済情勢が堅調な限り利下げの可能性も低い。我々は米国株式に対する中立を維持し、日本、新興国、カナダの株式に好機があると見ている。

3. 世界の景気回復は正しい方向に進んでいる

1日に発表された米国の4月のISM製造業景況感指数は52.8と、予想の55.0を大きく下回り、2年ぶりの低水準に落ち込んだ。中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)も予想に届かず、前月の50.5から50.1に低下した。2019年4‐6月期(第2四半期)のスタートは弱く、世界経済の回復予想に懸念が生じる可能性が高い。さらに、トランプ大統領が表明した中国製品への関税引き上げ方針を受けて貿易摩擦が再燃し、企業投資の低迷が長引くおそれがある。しかし、現時点では成長見通しについて過度に悲観的になる必要はないだろう。中国PMIのサブ指数は堅調な内容となっており、新規輸出受注はほぼ1年ぶりの水準にまで持ち直している。ユーロ圏の第1四半期の国内総生産(GDP)成長率も前期比0.4%増と予想を上回った。域内の失業率も10年ぶりの低水準となっている。米国では製造業のセンチメントが悪化したとはいえ、経済に占める割合は小さい。一方、米国の労働市場は底堅く、4月の非農業部門雇用者数は263,000人増加し、失業率も3.6%に低下した。

要点:ユーロ圏株式は世界的な景気回復を概ね織り込んでいることから、アンダーウェイトとしている。アジアでは中国株式を推奨する。



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