House View Weekly 低金利の長期化は投資家をリスクにさらす

各国中央銀行の慎重姿勢により金融緩和が継続されることは、短期的には株式にとって朗報である。欧米の中央銀行による金融政策発表後、S&P500種株価指数とユーロストックス50指数はいずれも0.4%程度上昇し、年初来の上昇率はS&P500種が16%、ユーロストックスは15%となっている。しかし、金融引き締めが遠のくと、長引く低金利に伴って重要な問題が浮かび上がる。

15 4 2019

今週の要点

1. EUへの関税は収拾可能

米中通商交渉に進展の兆しがみられる一方で、米政府は先週、総額110億米ドル相当のEU製品に対する報復関税の適用を検討していることを明らかにした。トランプ政権のこれまでの保護主義的政策は企業の投資を冷え込ませ、市場の低迷を助長してきた。だが、この発表により米欧の貿易摩擦が再燃するとは考えにくい。今回の動きは、米欧がそれぞれの航空機メーカーへの税制優遇をめぐり、世界貿易機関(WTO)の枠組みの中で10年以上前から続けている対立がそもそもの原因であり、報復措置や不当行為をめぐる申し立ての範囲も限定されている。EUも120億米ドル相当の米国製品に関税を課す方針を表明しているが、これは、2012年に米国に発動した米ボーイングへの優遇税制打ち切り命令を米国が履行していないと判断したWTOの裁定に対する措置である。米国は雇用が順調な伸びを示し、失業率も50年ぶりの低水準にあることから、米国の消費者は関税の直接的な影響にも持ちこたえられるだろう。さらに、関税案が企業のサプライチ ェーンに影響を及ぼす可能性も低いと我々はみている。グローバル株式市場はこの報道にも冷静に反応し、0.3%上昇して週を終えた

要点:米欧の対立がWTOの枠組み内に留まることを前提に、関税の影響は限定的と考える。我々は緩やかなリスクオンの姿勢を継続する。

2. 低金利の長期化はリスクを伴う

先週は米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表と、欧州中央銀行(ECB)理事会での金利据え置きにより、低金利が長期化するという市場の予想が裏付けられた。短期の市場環境にとっては朗報だが、一方で中期的な問題も提起している。「The Future of Europe(欧州の未来)」と題した我々の直近のレポートでも述べているとおり、ユーロ圏の景気が後退した場合、ECBはマイナス金利をさらに引き下げ、インフレ目標を見直し、ヘリコプターマネー政策(中央銀行が大量の国債を直接買い入れて財政資金を供給する政策)を実施する必要さえありそうだ。一方、世界の債務残高の対GDP比は上昇しているが、最近の借り入れコストの低下により債務の拡大が抑えられる可能性は低い。だが、こうした高い債務水準は、それが世界の市場に直ちにリスクをもたらすことはないとは言え、将来的な相場急落リスクの可能性や、異なる財政・金融環境にポートフォリオを分散投資する重要性を改めて認識させる。

要点:景気後退と信用のひっ迫は我々の基本シナリオではないが、将来のリスクに備えた分散投資を推奨する。

3. ハロウィーンにブレグジットの可能性

英国のメイ首相はブレグジット(EU離脱)について、離脱期限を6カ月先送りして10月31日までの再延長の合意をEUから取り付けた。合意なき離脱のリスクが当面なくな ったことを受けて英ポンドの取引市場にも安心感が広がり、6カ月のボラティリティ( 市場変動率)は昨年7月以来の水準に低下した。ここからは、1) メイ首相の離脱協定案で合意、2) じっくり時間をかけて離脱協定の再交渉、3) 合意なき離脱、という3つのシナリオが想定される。我々の基本シナリオではないものの、メイ首相の離脱協定案が可決された場合、今後3‐6カ月で英ポンド/米ドルは1.37、ユーロ/英ポンドは0.74をつけると予想する。我々の基本シナリオでは、じっくり時間をかけて離脱協定の再交渉を行い、最終的に承認されると予想しているが、いかなる協定案であれ、可決の前にまず総選挙が必要とされる気配が高まっている。このシナリオでは、12カ月で英ポンド/米ドルは1.35‐1.40、ユーロ/英ポンドは0.85‐0.90のレンジで取引されると予想する。最後に、最も可能性が低いシナリオと考える「合意なき離脱」の場合、英ポンド/米ドルは1.15に急落し、ユーロ/英ポンドは0.97まで上昇するだろう。

要点:状況が依然として流動的なだけに、ブレグジットの期限をめぐる英ポンドの下振れリスクにヘッジすることが賢明であると考える。高配当株式の分散投資戦略により、ほとんどのブレグジットのシナリオにも対応できるとみている。



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