House View Weekly 金融引き締めが一服

各国中央銀行が金融政策を引き締めすぎた結果、景気拡大にブレーキがかかり次の景気後退のきっかけとなって、強気相場が終わることがよくある。しかし、景気の減速懸念を受けて12月に株式が大幅に反落すると、世界の主要中央銀行は金融引き締めの手綱を緩めた。

11 3 2019

今週の要点

1. 危機から学んだ教訓

10年前の2009年3月9日、S&P500種株価指数の終値は676を付けて底を打ち、約13年間の価格上昇分が消失した(S&P500種が前回この水準をつけたのは1996年5月だった)。この底値以降、グローバル株式は260%上昇し、株式投資を続けた投資家に利益をもたらした。弱気相場に直面した投資家は冷静さを失わないように努め、下落相場を利用して利益を出そうとさえするが、先を見越して投資計画とポートフォリオを準備しない限り、実現させるのは難しい。弱気相場では痛手を被る場合も多いが、幸運なことに、こうした相場は通常、長期化せず、一般に想定されるよりも早く回復する。そこで、強気相場局面での成長を犠牲にせずに、弱気相場の損失を抑える手段を取ることができる。まず第1に、キャッシュフローのニーズに対応しつつ、株式の相場変動に対する緩衝剤となる資産を保有していれば、下落相場で売りを迫られることはない。第2に、株式と債券の構成比を適切な水準に保つか、強気相場の上振れ余地を一部犠牲にして弱気相場ヘッジ戦略を検討する。最後に、キャッシュフローのニーズを満たすため、負債を適切に管理して借入能力を高め、資産売却に代わる「プランB(次善策)」を用意する。

要点:現在の強気相場は当面続くとみているが、金融危機後の底値から10年が経過した今、ポートフォリオの最適な資産配分を確認する重要性を改めて強調したい。

2. 金融引き締めの論議が一服

強気相場は長期化しているという理由だけで終わりを迎えることはない。一般に、強気相場の終焉にはそのきっかけがある。歴史的に見ると、中央銀行による過度の金融引き締めが明確な引き金の1つとなってきた。2019年は金融危機以降初めて、主要中央銀行のバランスシートが縮小して年末を迎える年になりそうだが、政策当局はすでに世界景気の減速をめぐる懸念を意識している。中国政府は先週開幕した全国人民代表大会で、景気減速を食い止める対策を強調しつつ、2019年の国内総生産(GDP)成長率目標を6.0‐6.5%に引き下げた。2兆元規模の減税や社会保険料引き下げが発表され、金融政策に関する声明から「中立」という表現が削除されたことは、最近の金融緩和トーンを反映しており、今後の金融緩和的な政策を示唆している。欧州中央銀行(ECB)は、銀行からの貸出を促す刺激策である貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の再開を発表し、初回利上げの時期を繰り下げた。米連邦準備理事会(FRB)は利上げについて辛抱強く見守る姿勢に転じており、ガイダンスで利上げ休止が数カ月続く可能性もあることを示唆した。

要点:各国中央銀行は緩和姿勢を続けており、中国人民銀行は年内に預金準備率をさらに100–200ベーシスポイント引き下げると予想する。ECBは2020年春まで利上げを見送る一方、FRBは利上げを年内に1回実施すると我々はみている。我々はグローバル株式のオーバーウェイトを維持する。

3. 景気拡大の先にあるもの

先週はグローバル株式市場の方向性が定まらない中、中長期の投資テーマが大きな投資機会をもたらすことが改めて確認された。国際環境保護団体「グリーンピース」と大気汚染調査機関「エアビジュアル」が行った調査によると、世界で環境汚染が最もひどい10都市のうち7都市をインドが占めることが分かり、クリーンな大気の確保と二酸化炭素(CO2)排出削減に投資する必要性が浮き彫りになった。この問題を抱えているのはインドだけではない。我々の推計によると、世界全体で大気汚染を解消し、CO2排出量を減らすには、2030年までに累計で約36兆米ドルの投資が必要になる。この目標に向けてシンガポールではCO2を排出しない無人運転バスが導入された。我々は、先進技術を駆使した「スマートモビリティ」が2025年までに年間約4,000億米ドル規模の市場に成長すると予想しており、輸送の未来を変える取り組みだと考えている。

要点:我々は、持続可能な都市の実現を目標に「クリーンな大気とCO2削減」と「スマートモビリティ」を長期投資テーマに加えている。この目標は我々の「サステナブル投資戦略」と整合し、投資家もその実現に貢献することが可能である。



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