POTUS 46 バイデン政権の始動

増税よりも新型コロナ対策と景気回復を優先するバイデン大統領の姿勢は、同大統領が1.9兆米ドルの経済対策の成立を目指すことで明白になった。まずは新型コロナ対策を重視し、その後にインフラ法案成立に向けて取り組むだろう。よって、我々は増税が2021年の景気回復の重石にはなりにくいと考える。

2021年 1月 25日

バイデン大統領の政策課題

今回の選挙結果は有無を言わせぬ民主党圧勝にはならなかっ たかもしれないが、大統領職と上下両院を制した。このことによ り、バイデン政権は、裁判官任命や法案の立法プロセスでより 大きな主導権を発揮することになるが、バイデン大統領は、2党 合意による法案成立が好ましいと表明している。だが首都ワシ ントンでは、政治の二極化が深刻化している。現職議員の勝敗 見通しは、本人の人気に以前ほど左右されなくなっている。 無党派の有権者として登録する米国人が増える中、両党で党 内の同質化が進み、偏った政治的思考に固執している。党の熱 狂的な支持者によって選ばれた候補者が選挙に勝って公職に 就く場合、反逆者としての烙印を押されることを恐れて妥協を嫌 がることが多々ある。政治がすでに二極化した現在、こうした状 況は、党の垣根を越えて落としどころを見つけようという議員の 意欲を弱めるだろう。

今は歴史的な危機と困難の時ですが、 連帯こそが我々を前進させてくれるのです。

バイデン大統領の就任演説

党派の分断は、新大統領が直面する問題のごく一部だ。大統 領は数多くの問題で共和党からの反対に直面するが、同時に 民主党内の革新派と中道派の利害調整も必要だ。民主党の上 下両院での議席は過半数をわずかに上回るに過ぎず、重要法 案を成立させるには、めったに得られることのない民主党上院 議員全員の合意が必要になる。我々は、バイデン政権が何よ りもまず新型コロナ救済策、次にインフラ投資に力を入れると 予想する。税制改革法案が提出されるのは今年後半になる可 能性が高く、全体的な法案の魅力度を上げるために、インフラ 投資に関連した条項が盛り込まれると考えられる。税制改革法 案の規模と範囲は、分断した民主党内の融和を図る必要性か ら制限されるだろう。

財政刺激策

バイデン大統領は1.9兆米ドル規模の大規模財政刺激策の成 立を目指す。これは新型コロナが米国経済に与える悪影響に よって他の政策実施が制限されてしまうことがないように、早急 に感染拡大に対処する必要があるからだ。また新型コロナ救 済策の金額を増やすことで、経済にマイナスの影響がでるかも しれない他の政策を実行する前の、景気浮揚も狙っている。 以前のレポートで指摘したように、米国の景気回復のペースと リスク資産のパフォーマンスは主に、ワクチン普及のスピードと 有効性にかかっている。バイデン氏の発表を受けて、財政赤字 の規模を巡る懸念も高まるはずだが、それによって政権が財 政刺激策の財源として国債を利用することを思いとどまりはし ないだろう。よって、米国債の長短金利差は拡大すると考える。

インフラ投資

インフラ投資の計画には両党から広く支持が集まるが、その財 源をどうするかについて合意することはめったにない。その結 果、交通と水道のインフラへの連邦支出は、50年間減少の一 途を辿っている。2017年には交通と水道のインフラへの支出 額は、国内総生産(GDP)のわずか2.3%で、1950年代以降で最 低の割合となった。1

バイデン政権下では、気候変動と環境保護が各インフラ投資プ ログラムの共通テーマになると我々は考えている。持続可能な プロジェクトでの雇用状況の方が、他の種類のインフラ投資よ りも実際には良好であることを示す証拠がある。また、国際通 貨基金(IMF)によると、持続的な雇用の強度(伝統的な産業で創 出された雇用から失われた雇用を引いたもの)で測ると、グリー ンエネルギーの分野では100万米ドルの投資に対して8の雇用 が見積もられる2。我々は、バイデン政権が温室効果ガス排出 削減、再生可能エネルギーの推進、ゼロエミッション車の普及 加速を目的とした連邦調達制度の活用を重視すると予想する。

我々は同盟関係を修復し、 もう1度世界と関りを持つ方針です

バイデン大統領の就任演説

税制

バイデン大統領は、誰もが税を「公平な割合で」支払う必要が あると主張してきた。この主張は、新型コロナ救済策と財政刺 激策の提案を行った際の演説でも繰り返された。もちろん、「公 平な割合」とは定義が難しく、激しい議論となるテーマであろう。 新政権は議会に増税への支持を求めるだろうが、共和党の反 対にあうだろう。

こうした反対に直面して、バイデン政権は増税法案成立のため に、財政調整法を利用した時間のかかるプロセスを選択せざる を得なくなるかもしれない。上院と下院での議席差がわずかで あるために、税制改革法案の範囲は制限されるだろう。個人の 最高税率と法人所得税率は引き上げられそうだが、法人税の 引き上げの方は時間をかけて段階的に行われるかもしれな い。新政権は連邦遺産税やキャピタルゲイン税の引き上げな ども成立させようとするだろうが、これらの実現はより難しい。 我々は、増税による増収分がインフラ投資プログラムの費用の 一部に充てられ、不足分の埋め合わせに国債が使われると予 想する。

貿易・通商

トランプ氏は、共和党の正統的な理念を様々な方法で覆したが、 中でも大きな変化をもたらしたものは、同氏の二国間貿易協定を 支持する姿勢だ。バイデン大統領はこれまで多国間貿易協定を 支持してきたが、民主党内からもそれを抑制する圧力を受けるこ とになるだろう。我々は、明白な外交政策ツールとして貿易政策 が使われるのではなく、伝統的な同盟関係の強化が改めて重視 されるようになると予想する。世界各地で見られる国家間の貿易 摩擦が完全に解消されることはないが、新政権は緊張の緩和と 交渉による解決に焦点を置くだろう。

医療保険制度

医療保険制度は、大統領選の民主党候補者指名争いで最も 激しく議論されたテーマの1つだ。バイデン氏は、連邦政府が資 金を提供する単一支払者医療保険制度の創設を拒み、他に選 択肢のない人々に対して公的保険プランを追加する案を支持 する選択をした。しかし議論の対象は、米国の医療保険制度の 将来に関するものから、一時的に新型コロナ感染拡大への国 の対応に移っている。米国の医療保険制度の将来に関する議 論の再燃は避けられないが、立法化への動きは、大半の米国 人が新型コロナのワクチンを接種するまで待たなければならな いだろう。それまで新政権は、ワクチン供給を加速させるという 目の前の問題に焦点を置くと見られる。

金融規制

バイデン政権はより厳格な規制を導入し、その規模と範囲を拡大 する見通しだ。我々は投資家保護に主眼が置かれると考える。 消費者金融保護局が再活性化され、金融業界に対する規制がよ り厳しく施行されると予想する。特に、富裕層ではない、より脆弱 な投資家層へのサービス提供に対する監視が厳しくなるだろう。

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