中国市場への投資

グローバル投資家への投資機会

2021年 03月 03日

なぜ中国か

無視することのできない大国

中国の経済と社会は、過去20年で目覚ましい発展を遂げてきた。あまりに急速に変化したため、中国に対する多くの投資家の見方は実態より何年分も遅れているかもしれない。

中国は今や世界のGDPのおよそ20%、世界のGDP成長率の30%を占め、購買力平価換算では米国の経済規模をすでに上回っている。経済の拡大ペースとあわせて生活水準も向上している。1日当たり5.5米ドル未満で生活している人口の割合は2000年には80%を超えていたが、今日では24%を下回っている。中所得者層は現在全人口のおよそ50%を占める。

この間に、中国の資産市場の規模と流動性も拡大してきた。株式市場の時価総額は2002年比で25倍となり、世界の時価総額合計の11%に近づいている。中国の債券市場も、2000年の2,000億米ドルから2020年6月の15兆8,000億米ドル規模へと飛躍的な伸びを見せた。しかもその大部分は自国通貨建てで発行されている。

中国人民元は、かつては国際市場における認知度が低かったが、2019年には取引量が世界8位の通貨となり、各国中央銀行が保有する外貨準備通貨の一角を占めるまでに存在感が高まっている。中国の経済成長と世界貿易における中心的役割、国内資本市場の開放、人民元の国際化を後押しする政策により、人民元の重要性は今後10年でさらに増すものと考える。

こうした経済、社会、金融市場の変化は、新型コロナウイルス危機によって一段と加速する様相を見せている。中国をはじめとする北アジア諸国は、新型コロナウイルスを比較的早期に封じ込めたため、経済はいち早く正常化し、今後も持続的な成長を達成する見通しが高い。よって、中国の株式と債券のリターンも今後数年間は先進諸国を上回ると我々は考えている。

相対的に高いリターンを見込めるということは、それだけでも中国資産の保有を増やす正当な理由になると考えられるが、この市場の魅力をさらに高めているのは、経済の発展に伴う成長機会の規模だ。さらに、中国と米国との戦略的競争を背景に、中国に投資することで、単一の(米国の)経済モデルに依存していたポートフォリオの分散効果も期待できる。


Solita Marcelli (ソリタ・マルセリ)

UBSグローバル・ウェルス・マネジメント

米州最高投資責任者(CIO Americas)

2019年にUBS入社、現在UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの米州最高投資責任者(CIO Americas)を務める。グローバルCIO および ウェルス・マネジメント米国のマネジメント・コミッティ、UBS House View (投資見解)の策定を行うグローバル・インベストメント・コミッティのメンバー。

前職はJ.P.Morganウェルス・マネジメントで債券・為替・コモディティのグローバル・ヘッド。ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスでMBA取得。CNBC、Bloomberg、Wall Street Journalなど数多くの金融メディアで取り上げられる。


今後長期に亘ってデジタル化、スマート化、グリーン化に一層注力

「ユニコーン」の数では世界第2位を占める

政府の新5カ年計画(2021~25年)では、テクノロジー面での海外依存度を低減する方針が明確に打ち出されている。研究開発費は米国の2倍のスピードで伸びており、「ユニコーン」(企業評価額が10億米ドルを超える未公開スタートアップ企業)の数では世界第2位を占める。これは2020年の新規株式公開(IPO)活動にも現れており、米中2カ国はIPOの件数と金額で他の地域を大きく引き離している。さらに、中国は今や世界で最も多くのスーパーコンピューターと産業用ロボットを有している。また、5G、人工知能(AI)、クラウド・コンピューティング、ビッグデータのような先進のイネーブリング技術によって、中国全土でインフラのスマート化が進んでいる。

2060年までのカーボン・ニュートラル実現を目標

インフラのデジタル化は、2060年までのカーボン・ニュートラル実現という中国の野心的な気候変動目標と密接に結びついている。デジタル化は、エネルギー効率を高め、再生可能エネルギーと電気自動車への移行を促進する。現在、中国では製造強国を目指す一環として様々なグリーンフィールド(新規開発)投資が進行しており、それと並行して、炭素中心の燃料から脱客したエネルギーシステムの変革が一気に進むだろう。環境問題への野心的な取り組みにより、2025年までに太陽光発電施設は倍増、風力発電施設は40%増大し、電気自動車の生産台数は5倍に拡大すると我々は予想する。とりわけ中国は電気自動車用電池技術が進んでおり、しかもこの分野は供給が限られているため、海外市場に進出する道も開かれるだろう。

小売業と金融業のデジタル・ディスラプションでも他国をリード

中国の世界のEコマース市場におけるシェアは現在57%で、市場調査会社のeMarketerによると、中国のオンライン浸透率は現在の37%から2023年には64%へとさらに上昇する見込みだ。さらに、中国はキャッシュレス社会への移行でも世界をリードしており、中国の2大モバイル決済サービスのユーザー数はそれぞれ5億人、9億人を超えている。また、中国は間もなく、初めてデジタル通貨を本格導入する主要国となる見通しであり、決済技術のグローバル・リーダーとしての存在感を高めている。デジタル人民元(e-yuan)は、ビットコインなどの分散型暗号資産とは全く異なり、中国人民銀行(中央銀行)が発行する通貨である。


中国は魅力的な分散投資対象

グローバル投資家にとって、急速に拡大する中国の株式市場と債券市場へのアクセス改善は、新たな投資機会だけでなく、ポートフォリオにプラスの効果をもたらす可能性もある。内需主導型経済および先進国と協調しない独自路線の金融政策により、多くの場合、中国の景気および金利サイクルは主要先進国との連動性が低い。よって、中国資産をグローバル・ポートフォリオに組み入れることにより、分散効果が期待できる。例えば、米国経済がトレンドを上回って成長したことから、米連邦準備理事会(FRB)は2018年に100ベーシスポイント(bp)の利上げを行った。一方、中国人民銀行(中央銀行)は、中国経済が鈍化したことから預金準備率を250bp引き下げた。その結果、米国の債券利回りは上昇し、中国の債券利回りは急低下した。

ポートフォリオ構築の視点から中国資産を見る場合、予想されるリスク・リターン特性が焦点となる。その点では、中国株式と中国債券は共にグローバル・ポートフォリオに付加価値をもたらすことができる特性を備えていると考える。


最後に

過去10年間で中国の金融市場は急速に発展し、大幅な構造変革を行いグローバル投資家への市場開放を進めてきた。こうした傾向は今後も続くだろう。中国は今なお新興国市場の一部と見なされ、関連するベンチマークや投資商品も同様の扱いを受けているが、その株式市場と債券市場はすでに十分な規模に達し、豊富な投資機会を提供している。こうした状況を踏まえ、グローバル投資家は、中国を新興国とは別のカテゴリーとして考え始めるべきだろう。ここまで紹介したデータと分析は、各資産のリターンの可能性と、それらがグローバルに分散したポートフォリオにどう貢献できるかに主に焦点を当ててきた。

しかし中国での投資機会は複雑でリスクも伴うため、投資家は中国への投資に対する理解を深め、投資対象となる企業の価値やリスクなどを調査し、投資先について継続的に注視していく必要があるだろう。言い換えれば、中国への投資とその潜在的なパフォーマンスについて、グローバル投資家は長期的な視点で捉えることが重要である。現在のように、中国の資産が短期的にも魅力を増す局面はこの先もあるだろうが、中国には戦略的(長期的)な姿勢で資金を配分するアプローチの方が、ポートフォリオに大きな長期的利益をもたらす可能性が高い。

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