グリーンテック グリーン銘柄は強弱まちまち

グリーンテック銘柄はセクターにより強弱まちまちだが、長期的な見通しは引き続き良好である。

2021年 06月 21日
  • グリーンテック銘柄のパフォーマンスはセクターにより強弱まちまちの状況が続いている。クリーンエネルギーは軒並みアンダーパフォームしているが、グリッド・インフラストラクチャーなどその他のサブセクターは底堅く推移している。米国ではバイデン米大統領が提案する大型インフラ投資計画の行方にも注目が集まっており、これが相場変動の一因となる可能性がある。
  • グリーンテック市場の一部にはまだ大きな成長機会があるとみている。短期的には銘柄選別がパフォーマンスに影響しうるが、長期的な見通しはグリーンテック全体にわたって引き続き良好である。
  • リスク許容度が高い長期投資家には、足元の調整とボラティリティ(株価の変動率)は今後10年の長期的な成長機会に投資する好機となるだろう。
  • 投資戦略としては、サプライチェーン企業に対してグローバルに分散投資することを勧める。短期的に妙味がある銘柄としては、グリーンテック企業に供給する部品メーカー、水素事業に参入している工業用ガス企業、グリーンテックを推進するイネーブリング技術などが有望と考える。

グリーンテックはクリーンエネルギーだけではない

我々の定義するグリーンテックには、クリーンエネルギーだけでなく、脱炭素化を支援・実現するさまざまな技術も含まれる。具体的には、風力や太陽光技術に加えて、エネルギー効率改善のためのソリューション、バッテリーおよび蓄電技術、電気自動車(EV)向け部品、水素、半導体などのイネーブリング技術もグリーンテックに含めている。昨年から2021年現在までのパフォーマンスは、セクターによってまちまちの展開となっている(図表1参照)。

2020年、再生可能エネルギー企業のパフォーマンスは、新型コロナの世界的な感染拡大にもかかわらず底堅い需要に加え、政策の後押し期待にも支えられて、非常に堅調に推移した。その結果、バリュエーションは長期平均を大幅に上回る水準にまで上昇した。だが、2021年2月26日付レポート「グリーンテック:市場はいまグリーンバブルか?」で指摘した通り、バリュエーションはサブセクター間で、また、サプライチェーンの段階によっても大きく差が開いた。こうした株価の動向は2021年上期のパフォーマンスにも顕著に表れた。例えば、ナスダック・クリーンエッジ・スマートグリッド・インフラストラクチャー指数のパフォーマンスは、年初からS&P500種株価指数と同様に上昇したが、同グリーンエネルギー指数は下落した(2021年6月20日現在)。同様に、売上に占める燃料電池機器の比率が高い水素専業企業は、年初から市場全体をアンダーパフォームしており、株価は昨年の急騰から反落し妥当な水準にまで調整している。一方、水素関連事業に参入している大手工業用ガス企業で構成されているS&P500種工業用ガス(サブセクター)指数のパフォーマンスは相対的に良好で、年初来の絶対リターンはプラスである。また、イネーブリング技術の1つである半導体も、年初からのパフォーマンスは堅調である。

こうしたパフォーマンス格差は、バリュエーションだけが原因ではなく、市場全般でグロース株から景気に敏感なバリュー株へのローテーションが起きていることも要因の1つと考える。コロナ禍では長期成長企業が注目され、中心となるテクノロジー銘柄が買われた。だが直近では経済活動の再開が本格化する中で、リフレ環境が追い風となるセクターへの切り替えが進んでいる。こうした中、金利の影響を受けやすいクリーンエネルギー企業が低迷する一方、HAVC(暖房、換気、および空調)やインフラ関連銘柄等の景気循環色の強い銘柄が買われる展開となった。

投入コストの上昇をめぐる懸念

バリュエーションと金利上昇は、クリーンエネルギー銘柄が下落した一因ではあるが、グリーンテック銘柄のパフォーマンスが低下した主因は投入コストである。その1つが半導体だ。他の最終市場と同様、EVや再生可能エネルギーでも半導体の供給が逼迫している。EVはガソリン車よりも多くの半導体を搭載しており、既存のガソリン車1台あたりに占める半導体価格が平均約330米ドルであるのに対し、EV車では最大で1,000米ドル近くに上るほどだ1。このため、大手自動車メーカーは半導体の供給不足を理由に生産停止や減産を強いられ、部品メーカーも厳しい状況に直面している。だが、半導体不足にうまく対処している企業もあり、短期的なボトルネックがEVの長期成長ストーリーを阻害することはないと考える。確かにEV市場の競争は激化しており、企業間の品質や生産能力の差異は意識する必要がある。だが、再生可能エネルギーとEVの連携を実現する最近の合弁企業や、連邦・地方政府の所有車両のEV化を進める動きなどを追い風に、EVの成長見通しはさらに上向くと予想する。

供給が逼迫しているのは半導体だけではない。コロナ禍からの回復に伴う急激な経済活動の再開が、景気循環セクター(原材料を含む)に対する需要圧力を生み出している。グリーンテック産業に欠かせない鉄鋼、銅、アルミニウム、ポリシリコンなどの原材料価格は軒並み上昇している。だが、こうした重要な材料の供給不足は、コロナ禍からの経済回復という異例の環境に起因する短期的な現象であるとみられ、ここからさらに価格が大きく値上がりするとは考えていない。また、2022~2023年にかけてポリシリコンの増産計画があり、これが足元の供給不足の解消に寄与するだろう。投資家は、原材料の製造を手掛ける企業にポジションを取ることで、これらの最終市場の成長を捉えることができるだろう。一方、ポリシリコンの全世界の供給の半分程度を生産する中国の一部地域で強制労働が疑われている問題に対しバイデン米政権が懸念を表明していることから、米国の政策動向にも引き続き注視していく(訳注:米国は6月24日、同地区で生産された太陽光パネルの原料の一部を輸入禁止とした)。

だが、こうしたコスト上昇の懸念は、強い成長を示すデータにより相殺されている。一部のクリーンエネルギー企業は、投入コストの上昇にもかかわらず、今年の業績予想を引き上げている。同様に、中国のEV市場も2021年半ばまで底堅く推移している。これは、中~高級クラスの新型EVモデルが相次いで市場に投入されたことで需要が伸びたことが背景にある。また、グリーンエネルギー指数の低迷とは対照的に、発電容量は拡大している。米国クリーン電気協会(American Clean Power Association)によれば、クリーン電気業界の新規発電容量は、2021年1-3月期(第1四半期)に過去最大の伸びを示した2。具体的には、風力発電の第1四半期の発電容量は、前年同期比で40%以上増加している。

今後の展開は?

今後の展開については、米インフラ投資計画案の可決見通しが高まるまではバリュエーションがパフォーマンスの重石となるだろう。需給逼迫の解消見通しもなお不透明であることから、投入価格も引き続き焦点となる。クリーンエネルギーのバリュエーションは長期平均と同程度まで調整しており、グリッド・インフラストラクチャー企業のバリュエーションも長期平均をおよそ1標準偏差上回る水準で横ばい推移している。だが、これらの指数にはまだ割安感はない(図表2および3参照)。グリーンテックは今後さらなる成長が見込まれることから、投資機会は依然健在とみているが、投資家は株価上昇を誘引する材料を待つ局面に入ったと考えられる。バイデン大統領が提案するインフラ投資計画の一部は最終的に成立すると予想するが、その規模が当初想定を下回るリスクも意識される。一部のグリーンテック銘柄、特にバリュエーションが高い企業や、インフラ法案期待から上昇していた建築エネルギー効率のソリューションを手掛ける企業は、当面、高ボラティリティが続く可能性がある。

House View レポートの紹介



資産運用はUBS証券へ

UBSウェルス・マネジメントでは、富裕層のお客様の資産管理・運用を総合的にサポートしております。日本においては、2億円相当額以上の金融資産をお預け入れくださる方を対象とさせていただいております。

(受付時間:平日9時~17時)