我々は極めて刺激的な時代に生きている。変革を起こすイノベーションといえば、かつては100年に1つ出現する程度だった。しかし、今や、新たなテクノロジーが次々に開発され登場している。量子コンピューティングやニューラルインターフェース、全固体電池、燃料電池といったムーンショット(実現は困難だが、成功すれば大きな影響をもたらす技術開発)は、世界経済を根底から覆すような大きな潜在的可能性を持つ。身近になりつつある人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、3Dプリンティング、ドローン、ビッグデータといった技術は、すでに、我々に未来の姿を垣間見せてくれている。

多様なデジタルビジネスモデルが普及し、世界中の小売り、不動産から農業、eコマースに及ぶ様々な分野にその影響が現れている。こうしたトレンドは構造的性質をもち、しかもまだ始まったばかりである。だが、今般のコロナ禍で生活におけるインターネットの活用が急進展したのを契機に、デジタル化の加速が進行している。あらゆる技術革命と同様、デジタルシフトが進む過程では勝ち組と負け組も生み出されるだろう。

テクノロジーと経済の融合を「テクノミクス」あるいは「テックエコノミー」と呼ぶ。テックエコノミーは、成長率や所得、インフレ、さらには必要とされる労働時間まであらゆるものに大きな影響を及ぼしつつある。世界の2大経済国である米国と中国の間ではテクノロジーをめぐって熾烈な覇権争いが繰り広げられるまでになった。

テクノロジーの進歩は目覚ましく、その潜在市場規模も加速度的に拡大してきた。だが、次にどのようなテクノロジーが開発・登場するかは、専門家でさえ正確に予測することはほぼ不可能だ。問題は、次のハイテク巨人が「現れるかどうか」ではなく、「いつ現れるか」だ。

実際、この数十年の間に、小型コンピューターやインターネットサービス、携帯電話の各市場で圧倒的なシェアを誇っていた主力企業は、かつての勢いを失っていった。同様に、食品を自動発注する冷蔵庫や空飛ぶ車など、そう遠くない未来予想図に登場していたテクノロジーは、技術的に可能になったにもかかわらず、まだ実用化にはいたっていない。インターネット・プラットフォーム企業は今のところ無敵のように思われるが、次のディスラプション(創造的破壊)が起きたときには、そうした企業も新しい環境に適応していかなければならないだろう。一方、技術大国が進化と分離を深めるなか、地域により得意分野が異なるなどの事情も絡み、デジタルをめぐる世界の様相は一段と複雑さを増していくだろう。

「よって、1つのトレンドや1つの地域に集中せず、様々な業界や地域に幅広く投資を行う方が賢明である。」

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