米大統領選挙まで1年を切り、有権者は民主党候補者らが掲げる優先政策に注目し始めるだろう。今月は、トランプ大統領の弾劾裁判がマスコミ報道を独占するだろうが、その後は各候補者の政策提案について本格的な評価が始まりそうだ。両党の政策課題に大きな隔たりがあることから、投資家はそれらが市場にどのような影響を及ぼすのか考える。しかしこの質問に対処する前に、以下の点を確認しておきたい。

まず、我々は重大な問題とする範囲を絞り込む必要がある。選挙戦中は候補者から多くの政策提案がなされ、どの政策提案も一部の人にとっては重要である。しかし、我々は投資の結果を左右しそうな提案、つまり実体経済と市場のバリュエーションに影響を及ぼしうる、「マクロへの影響がある」と我々が定義するレベルに達する政策提案のみに関心を持つ。

また、どの政権も誕生時は極めて明確な政策目標を持っているが、外因的な要因によってその後の政策路線が変えられる場合も多いことを覚えておきたい。例えば、9・11同時多発テロは、ブッシュ政権の政策課題の大幅な転換を促し、世界金融危機はオバマ政権の1期目の大きな障壁となった。

重要な政策カテゴリー

学術的研究と産業調査によると、「マクロへの影響がある」政策選択は、財政政策、金融政策、規制政策、通商政策の4つのカテゴリーのいずれかに該当するものだ。1税法の改正は財政政策の実施において極めて重要だが、重要な裁量的支出の推移と構成や財政赤字については、両党ともあまり懸念していないようだ。民主党の候補者は、減税や雇用に関する法案の一部撤回に躍起になっているようだ。撤回に向けては厳しい論争が予想され、その成否は議会の構成に左右されるだろう。

金融政策に関しては、景気循環的なイベントと経済の構造的変化の両方に対する中央銀行の反応が金融市場に影響する。景気変動に対して一貫したアプローチが欠如している場合は、市場参加者はリスク資産に高いリスクプレミアムを織り込む可能性があるが、既定の政策ルールへの過度な順守はより大きなリスクを生む。我々は、米連邦準備理事会(FRB)が、景気拡大局面が長く続くよう、必要に応じて金融政策を調整する準備を整えていると考える。

規制政策の変更が実体経済と金融市場の両方に影響を及ぼすのは、主に環境、金融、ヘルスケア、エネルギーの4セクターだ。積極的な規制改革は、行政府が広範な裁量権を有するため、候補者の政策がかなり重要になる分野だ。

最近の出来事は、貿易も経済と金融市場の両方に多大な影響を及ぼしうることを示した。これには貿易協定の発効(または離脱)から、特定の物品およびサービスへの懲罰的関税または輸入割当を適用する意思までが含まれる。これに関しても、米大統領は貿易政策を決める広範な権限を有している。しかし、これまでのElectionWatchで指摘したように、両党とも制限のない自由貿易について共通の懸念を持っている。

これら政策選択の累積効果は、主に国内景気動向やインフレ期待の変化、投資意欲、為替レートの変動、実質金利の変化に及ぼす影響を通して実体経済に反映される。これらは次に、将来の期待リターンと現在のリスクプレミアムの両方を変化させることで、金融市場に影響を及ぼす。

政党よりも政策

大統領選ともなれば、候補者らが異なる政策路線を策定し、一見すると難しい選択を突きつけられる。どちらの党が好ましいかは、市場の動きに現れると投資家は期待するかもしれない。しかし歴史的にみても、市場の反応はさまざまであり、それほど単純なことではない。従って、投資家は所属する党よりはむしろ、候補者が掲げる「マクロへの影響がある」優先政策に注意を向けるべきである。特に、財政と規制に関する政策提案は、市場に多大な影響を及ぼすため、注視する必要がある。

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