グローバル・リスク・レーダー G20サミットに寄せられる期待

我々の基本シナリオでは、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて予定されている中国の習近平国家主席とトランプ米大統領の会談の結果、米中貿易紛争の「停戦」が延長され、交渉が再開されると見込んでいる。

20 6 2019
  • 我々の基本シナリオでは、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて予定されている中国の習近平国家主席とトランプ米大統領の会談の結果、米中貿易紛争の「停戦」が延長され、交渉が再開されると見込んでいる。
  • しかしながら、貿易をめぐる米中の舌戦激化やファーウェイのエンティティ・リスト(禁輸措置対象のリスト)掲載を踏まえ、我々は「悲観シナリオ」の可能性を35%に変更する。悲観シナリオでは、残る約3,000億米ドル相当の中国製品への追加関税が発動され、関税以外にもリスクが広がると想定する。
  • 中国では金融・財政両面からの関税対策が見込まれ、経済全般への波及効果が生じる可能性がある。市場は引き続き貿易関連の報道に敏感に反応する展開となろう。
  • 市場はボラティリティ(変動)の高い状態が続くと予想されるが、その一方で、これまで通り魅力的な機会も見いだせると考える。悲観シナリオでは、株価がマイナスに反応し、米国では10~15%下落すると予想する。我々は、貿易摩擦の一段の激化リスクに備え、ポートフォリオに予防的な措置を講じた。

トランプ米大統領は6月18日、28-29日に大阪で開催されるG20サミットで中国の習近平国家主席と会談を行う予定を明らかにした。5月5日にトランプ大統領が2,000億米ドル相当の中国製品への関税率引き上げを表明し対立が悪化する中で、通商協議はこれまで途絶えていた。だが、貿易交渉が再開されれば、米中関係に再び進展の兆しが見えるかもしれない。ここ数週間で米政府は関税対象を拡大する手続きを加速させた。さらに、エンティティ・リスト(輸出管理規則に基づく禁輸措置対象のリスト)に中国スーパーコンピュータ大手数社も追加した。これに対し、中国はただちに対抗措置を発表している。以下に、貿易摩擦に関連するこれまでの主な出来事をまとめた。ファーウェイへの制裁: 5月初旬の貿易摩擦の激化を受けて、米商務省は中国の通信機器大手ファーウェイをエンティティ・リストに追加した。これによって米企業は政府の許可なくファーウェイに技術移転や部品供給を行うことができなくなった。その後5月20日に、米政府はファーウェイに対して90日間の一時的な一般許可証を発行した。これにより90日間に限り、既存の通信網の維持や携帯端末の保守・運用に必要な一部の取引が認められた。

中国の「信頼できない企業リスト」と渡航への注意喚起:中国政府は対抗措置として、ビジネス以外の理由で中国企業への供給を阻害する外国企業を対象に、独自の「信頼できない企業リスト」を作成すると発表した。詳細については不明な点が多く、これまでに実際に指名された企業はないが、定義が広範であるため、ファーウェイとの取引中止を決定した供給業者など、多くのハイテク企業が対象になるリスクがある。中国政府はまた、訪米する自国民に対し、米警察による入国審査や職務質問などでの「嫌がらせ」や米国内で銃撃や強盗・窃盗が相次いでいることを理由に、米国への渡航について注意喚起を呼びかけている。

レアアース:中国政府はレアアースの輸出規制強化の検討を行っている。中国は世界のレアアース生産をほぼ独占しているため、この禁輸措置は米国の制裁に対する明らかな報復措置となる。レアアースはスマートフォンや医療機器、軍事製品など様々な製品に使用されており、米国の経済と国家安全保障には不可欠な資源である。

メキシコへの関税措置:トランプ大統領は5月末、メキシコ政府の不法移民対策が不十分だとして、6月10日からメキシコからの全輸入品に対して5%の関税を課すと警告した。計画では、最終的に25%に達するまで、毎月5%ずつ関税率を引き上げるとしていた。その後両国は移民に関する暫定的な協定を結び、45日後(7月末)までにその見直しを行うことで合意。これを受けてトランプ大統領は関税発動を見送った。米国が包括的な貿易協定(米国・メキシコ・カナダ協定)に合意したばかりの国に対して制裁関税をちらつかせたことで、米国と貿易協定を交渉中の他の国々の間に嫌悪感が広がる可能性がある。

今後の注目日程

今後数週間で、合意に向けた米中両政府の真意がより明らかになると予想される。その間、我々は、世界貿易に影響を及ぼす可能性がある次の展開に注視していく。

  • 6月25日: 中国製品への新たな追加関税導入に関する公聴会が終了。米政府は先日、3,000億米ドル相当の中国製品への関税措置に関する公聴会の期間を1週間延長した。トランプ大統領は、G20サミット後2週間以内にこの措置を発動するか否かを判断すると発言している。
  • 6月28-29日: G20サミット。G20サミットに合わせて行われる予定の米中首脳会談は、両国が合意に達する、あるいは少なくとも貿易紛争の停戦に合意して新たな交渉ラウンドを計画する直近の機会となる。
  • 8月19日: ファーウェイに対する一時的な一般ライセンスの期限。米商務省がファーウェイに交付した90日間のライセンスが8月19日に期限を迎える。ライセンス期限が延長されなければ、米国のエンティティ・リストが全面施行され、米国企業はファーウェイとの取引を厳しく制限される。
  • 2019年11月: 米国に輸入されるすべての自動車および自動車部品に追加関税が課される可能性が依然として残っている。トランプ大統領は、自動車輸入は米国の「安全保障上の脅威」であると結論付けた商務省の調査報告書を受け取った上で、欧州連合や日本など主要貿易相手国と交渉を進めるため、追加関税や関税割当枠(クオータ)などの輸入制限措置の実施を11月下旬まで延期した。

米中貿易交渉のシナリオ



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