激動の世界の中で

まもなく2020年大統領選挙まで1年となる。トランプ米大統領に対抗するべく、民主党の指名獲得を目指す候補者リストは、当初の20人超から絞られ始めた。民主党候補者たちの3回目のテレビ討論会では、参加資格が引き上げられたため、討論会に登場したのはわずか10名だった。

開始早々から、参加者たちは、医療保険に関してお互いに対立姿勢を示した。バイデン元副大統領は、米国民に、民間医療保険かオバマケア(医療保険制度改革、ACA)に基づく任意の医療保険のどちらかを選ぶ権利を与えると主張し、中道的な立場を示した。サンダース上院議員とウォーレン上院議員は、排他的な単一支払者保険制度(国民皆保険制度)のみを熱烈に主張した。壇上の衝突はすさまじく、他の候補者の数人が、一時休戦を求めざるをえないと感じるほどだった。

貿易と関税の問題にあまり注目が集まらなかった過去2回の討論会を終えて、候補者たちは、この問題を詳細に議論する必要に迫られていた。各候補者は、大統領の通商交渉へのアプローチを何とか非難したが、関税の迅速な撤回を約束するのには気が進まないようだった。知的財産権の保護と公正な取引の重要性が繰り返し指摘され、貿易問題に関して、一般に考えられているよりも共和党と民主党が同調しているとの我々の考えを裏付けるような議論だった。刑事司法改革から銃規制、移民に及ぶその後の議題は、候補者たちが礼節を示す場となった。

3回目となる討論会では、今月号( 9月号)のElectionWatchの焦点となる、外交問題および地政学にも、過去2回の討論会よりも大きな関心が集まった。投票日が近付くにつれて、地政学的情勢が、大統領選でより大きな位置を占めるようになるだろう。トランプ政権は多くの国際的な問題を抱えている。中国との貿易紛争、激化するイランとの舌戦、サウジアラビアの油田への脅威、アフガニスタンでのタリバンの再台頭などが挙げられる。これらの重要問題が、候補者たちの討論のテーマになるのは時間の問題だ。

外交政策に注目

米国の外交政策は70年間、自由貿易、世界的な同盟、そして言論の自由と代議政治の方針に基づいて行われてきた。大統領候補者らは、これら問題に対して異なる戦術的アプローチを取りつつも、世界における米国の立場に関しては同じ見解を持っていた。ドナルド・トランプ氏は、2016年の選挙戦で、こうした基本方針が、米国が影響力を行使する方法として未だに有効であるかについて疑問を呈した。その後、1つの自由貿易協定から離脱し、別の自由貿易協定の再交渉を決定したことは、米国の外交政策における大きな転換を予兆する出来事となった。北大西洋条約機構(NATO)は時代遅れとなった冷戦時代の遺物という、選挙戦中の発言は誤りだったと認めたものの、戦略的提携の代わりに、取引的な契約を好む姿勢は、トランプ政権1期目の特徴となっている。

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