チーフ・エコノミスト・コメント ― ポール・ドノバン 世界貿易における中国の過大評価

輸出先市場(最終消費地)の需要は、2018年通年では伸び率が鈍化した。2019年は減速ペースが落ち着くだろう。輸出成長のけん引役としての中国の役割は、過大評価されがちだ。特に、輸出の伸びに対する中国の消費の重要度は、明らかに過剰に評価されている。

28 1 2019
  • 輸出先市場(最終消費地)の需要は、2018年通年では伸び率が鈍化した。2019年は減速ペースが落ち着くだろう。
  • サプライチェーンの複雑化によって、輸出財が最終需要地に届くまでに多くの国境を越えるようになった現代では、従来の貿易統計手法ではもはや、輸出需要を正確に把握しきれない。
  • 企業の投資支出の伸びは、経済全体に対してよりも、輸出の伸びに対する重要度が大きい。
  • 輸出成長のけん引役としての中国の役割は、過大評価されがちだ。特に、輸出の伸びに対する中国の消費の重要度は、明らかに過剰に評価されている。

どのような景気サイクルにおいても、エコノミストたちが「我が国はうまくいっている。心配なのは他国の状況だ」と懸念する時期がある。我々はいまやそのタイミングに来たようだ。世界中のどの国や地域でも、他国が自国経済を脅かすのではないかという警戒感が大きくなっている。だが、その懸念は行き過ぎだろう。

2019年の輸出先市場は、どのようなペースで成長するだろうか?それは、どこに、何を輸出するかによって変わってくる。2019年の輸出先市場の需要は、2018年に比べると鈍化すると予想される。ただし、2018年末に見られた一時的な外需の腰折れからは、小幅ながら回復すると予想される。

外需を調査する際の問題点は、通常の貿易統計では、正確な状況が把握しにくいことだ。統計データは、古くから、輸出国の輸出額とそれに対応する相手国の輸入額とが一致しないという問題が指摘されてきた。近年のサプライチェーンの複雑化にともない、この不整合の問題はさらに悪化している。

例えば、韓国が液晶ディスプレイを中国に輸出する事例で考えてみよう。理論的には、韓国の輸出業者にとって重要なのは中国の国内需要のはずだ。ところが、液晶ディスプレイが、中国からドイツに輸出される携帯電話の製造に使われているとしたらどうだろう?中国が液晶ディスプレイを必要とするのは、ドイツ向け携帯電話に需要があるからに他ならない。韓国の輸出業者が本当に注目しているのは、ドイツの(携帯電話に対する)需要であり、中国の消費動向には関心はない。同様に、ドイツの自動車部品メーカーが、米国の工場からタイに自動車部品を出荷し、その部品を用いて生産された自動車が中国に輸出される場合、このドイツの輸出業者が注視するのは、中国の需要動向である。

最近は、財とサービスの最終的な需要地に注目した貿易データも整備されてきている。そのデータを用いれば、一国の輸出に対して他国の経済がどの程度重要かを把握することができる。投資財(将来の生産のために使われる資材や生産設備)の輸出と消費財(輸出先が最終消費地となる財)の輸出を区分することもできる。この点は重要だ。投資支出と消費支出の伸び方は異なる場合があるからだ。投資財の輸出先の国の需要が消費財の輸出先の国の需要よりも弱い場合がある。




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