CIO通貨コメント 成長懸念と利回り低下を背景に円高進行

2019年は、日本円が他の主要通貨に対して急騰して始まった。今回の動きは、低い流動性、円売りポジションの積み上げ、成長懸念の高まりによる世界的な利回り低下、および金融市場の脆弱なリスク・センチメントの組み合わせによってけん引されたと我々はみている。

03 1 2019

2019年は、日本円が他の主要通貨に対して急騰して始まった。ドル円は一晩で最大4.5%(1米ドル=109円から104.1円まで)下がり、本稿執筆時点では107.2円近辺まで戻している。ユーロ/円も同様の動きだ。また豪ドル/円は(76円から70.7円へと)7%大幅に下落し、その後は約74.4円へと半値戻しした水準で取引されている。

今回の動きは、低い流動性、円売りポジションの積み上げ、成長懸念の高まりによる世界的な利回り低下、および金融市場の脆弱なリスク・センチメントの組み合わせによってけん引されたと我々はみている。具体的には以下になる。

  • 日本の金融市場が12月31日から1月3日まで休場していたため、日本円の市場の流動性があまりにも低かった。
  • 日本円に対する投機的な売りポジションの買い戻しがドル円の下落に拍車をかけた模様である。全米先物取引委員会(CFTC)のデータによると、12月中旬段階で、日本円の差し引きでの売り持ちポジションが外国為替市場で最大になっていた。
  • 世界経済の成長懸念と原油価格の下落を受けて、世界中の債券利回りが低下した。たとえば米10年国債利回りは、11月の3.24%から現在は2.62%まで低下している。日本円は日米金利差に敏感なことから、米国の金利低下を受けてドル円が押し下げられた。
  • 世界の金融市場のリスク・センチメントが脆弱であるため、日本円のような安全資産への需要が高まった。

さて、ここからの展開をどう読めばよいのか?我々は、日本円に対しては長期的に強気の見方を維持している(ドル円の12カ月予想を105円としている)が、今回のような一晩での急落は唐突すぎるようにみえる。世界のリスク回避的センチメントがさらに悪化しなければ、ドル円は短期的に110円水準に向けて値を戻す余地がある。さらに、市場は米連邦準備理事会(FRB)による利上げペースの見通しを見直すだろう。金利市場は、FRBが2019年中は政策金利を据え置き、2020年に利下げに動く(2019年、2020年でそれぞれ3ベーシスポイント(bp)、20bpの利下げ)と期待している。しかし、これは米国の粘り強い景気指標とは矛盾しているようにみえる。したがって、市場の期待値は、2019年に2回でなければ少なくとも1回の利上げを実施する方向へと動くと予想される。そうなると、2019年にFRBが50bpの利上げをするとの我々の予想に一致することになる。金利市場でこうした調整が起きれば、短期的には米ドルの反発を支える要因となるだろう。

日本円をめぐる状況に目を向けると、日本銀行は、まだマイナス金利政策、長短金利操作(イールドカーブコントロール)政策ともに変更していない。現在は外部環境が次第に悪化し、インフレ率も日銀の目標に到達していないため、2019年1-3月期(第1四半期)中に日銀が現在の政策を変更する可能性は低い。したがって、現在の(リスク回避的センチメントを要因とする)円高は長続きしないと思われる。以上を踏まえ、投資家は日本円の買いタイミングを今しばらく待つのが得策と判断する。




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