通貨市場 為替戦略: 英ポンド/スイス・フランの利益確定と新興国通貨の選別強化

我々は、スイス・フランに対する英ポンドのオーバーウェイトのポジションをクローズして利益確定する。新興国通貨のポジションについても、ロシア・ルーブルとトルコ・リラのオーバーウェイトの推奨を終了した。一方、ブラジル・レアルとインド・ルピーのオーバーウェイトについては維持する。

19 4 2018

2018年04月19日

Chief Investment Office WM

Thomas Flury, Strategist; Daniel Trum, Strategist; Gaétan Peroux, Strategist;
Wayne Gordon, Analyst; Teck Leng Tan, CFA, Analyst

  • 我々は、スイス・フランに対する英ポンドのオーバーウェイトのポジションをクローズして利益確定する。新興国通貨のポジションについても、ロシア・ルーブルとトルコ・リラのオーバーウェイトの推奨を終了した。一方、ブラジル・レアルとインド・ルピーのオーバーウェイトについては維持する。
  • 米ドルに対するユーロのオーバーウェイト、米ドルに対するカナダ・ドルのオーバーウェイト、ニュージーランド・ドルに対する日本円のオーバーウェイトは維持する。
  • 米ドル/カナダ・ドルの3カ月予想を1.25(従来1.28)、6カ月予想を1.23(同1.25)に変更する。尚、12カ月予想は1.22のまま据え置く

スイス・フランに対する英ポンドのオーバーウェイトのポジションを利益確定のため解消する。同通貨ペアの為替レートは我々の予想する方向に向かって急速に上昇し、3カ月と6カ月予想の1.38に近づいた。ファンダメンタルズが引き続き良好であることから、英ポンド/スイス・フランはさらに上昇する可能性がある。しかし、戦術的資産配分においては、ポジションをクローズして利益確定することが得策と考える。ユーロ/スイス・フランはスイス国立銀行のかつての下限1.20に近づいており、スイス・フランの下落余地は限定的であろう。スイス・フランは4月に突然下降を速め、過去数カ月の間に極めて割高な水準から適正なレベルまで低下したことから、スイス国立銀行から政策対応についての言及があるだろう。同中央銀行は、スイス・フラン安が進み、スイス企業が多くの受注を受けることで、スイス経済は好調な状態にあることを認識している。多くのスイス企業は欧州圏内で事業を展開しており、欧州危機の際には資金を本国に還流させた。スイス・フランの直近の下落は、ユーロ信認の回復と欧州投資計画の検討により、還流資金の一部がユーロ圏に戻りつつあることが主な原因と考える。

一方、英ポンドはイングランド銀行(英中銀)のややタカ派的なスタンスと政治リスクの後退により上昇を続けている。市場は英中銀の5月の利上げを織り込んでいる。また、3月に欧州連合(EU)離脱協定の草案についてEUと英国間で一部合意が成立したことも英ポンドにとってはプラス材料となっている。しかしながら、アイルランド国境問題等、解決すべき多くの重要な課題が残っている。また最近になって英国のマクロ経済データがやや軟化してきた。過去数週間にわたる英ポンド/スイス・フランの力強い上昇の勢いは全ての好材料を織り込んだものと考える。よって、利益を確定させることとする。但し、同通貨ペアについては、将来、割安な水準でポジションを再び組むことを視野に入れ、動向に注視していく方針である。

新興国通貨のポジションを再構築

戦術的資産配分の2つめの大きな変更は新興国通貨である。新興国通貨全体については引き続きポジティブであるが、ロシア・ルーブルとトルコ・リラのオーバーウェイトの推奨を固有のリスクの高まりにより終了する。戦術的資産配分の中では、4つの景気感応度の高い低利回り通貨のバスケット(豪ドル、ハンガリー・フォリント、ノルウェー・クローネ、台湾ドル)に対する4つの高利回り新興国通貨バスケット(ブラジル・レアル、インド・ルピー、トルコ・リラ、ロシア・ルーブル)のポジションをクローズする。但し、同バスケットを構成する一部通貨のポジションはポートフォリオ内で維持する。具体的にはブラジル・レアル(対米ドル)とインド・ルピー(対台湾ドル)のオーバーウェイトを維持する。

出所: unsplash


CIOが推奨する戦術的通貨配分
UBS CIO ハウスビューの通貨ポジション

出所: UBS、2018年4月19日現在

ブラジルとインドは維持…

ブラジル・レアルは、ブラジルの改善傾向にある景気とインフレ、魅力的な金利収益、良好な経常収支、10月の大統領選挙で「改革派」大統領が誕生するという我々の見通しがプラス材料である。よって、堅調な世界経済を背景に、ブラジルは新興国市場の中で投資機会を追求する投資家にとっては魅力度が高いと考える。

インド・ルピーは新興国市場の成長を追求する上で魅力的な投資対象とみている。インドの景気見通しの改善が海外からの直接投資やポートフォリオ投資を引きつけている。台湾ドルのアンダーウェイトに対し、インド・ルピーのオーバーウェイトは金利収入が約7%と魅力的な水準だ。利回り格差は、インドとの比較上、台湾の大幅経常黒字と安定したインフレ率を反映していると思われるが、インドの利回りの高さは低調なファンダメンタルズに十分見合っているとみている。また同ポジションは、台湾がインドよりも世界貿易の影響を大きく受けることから、貿易戦争のリスクに対する一定のヘッジ機能も提供していると考える。

…しかしロシア・ルーブルとトルコ・リラについては推奨を終了

ロシア・ルーブルとトルコ・リラのオーバーウェイトの推奨を終了する。ロシアに対する追加制裁とシリアへの軍事的脅威の高まりにより、両通貨は過去数週間で大きく下落した。またトルコ・リラもトルコの巨額の経常赤字のために下落しやすい状況にある。これらはそれぞれの国の固有のリスクであり、これが長引く可能性がある。また地政学的な緊張の高まりによる両通貨のボラティリティの上昇は、バスケットの金利収入によって十分補われるものではない。

ユーロに対する強気のスタンスは市場コンセンサスと同じ

米ドルに対するユーロのオーバーウェイトは、グローバル景気の回復、米貿易赤字の拡大、米財政収支に対する不透明感の高まりにより米ドルが下落するという市場コンセンサスと一致する。大半の投資家は既にポートフォリオ内での米ドルの保有比率が高いことから、相対的に米金利が高いことによる、米ドルへのプラスの影響は限定的なものに留まると考える。

ユーロ/米ドル・レートは、過去1カ月にわたり推奨開始時点の水準である1.23近辺を横ばいで推移した。これは予想外のことではあるが、こうした横ばいの状態は下落せずに持ちこたえたとみることもできる。何故なら、2月、3月に株式市場が広く下落したが、通常はそうした局面では米ドルがサポートされる。これと並行してグローバルPMI(購買担当者景気指数)がピークに達したが、これはグローバル景況観指数の動きに連動する輸出国通貨であるユーロにとっては通常良い兆候ではない。


CIOの為替レート予想


出所: トムソン・ロイター、UBS、2018年4月19日現在

カナダ・ドルの見通しは明るい

米ドルに対するカナダ・ドルのオーバーウェイトは、昨年のカナダの経済成長率が予想通りに米国に追いつき、世界同時景気拡大の恩恵を受けることにより、リターンを獲得することを狙うものである。北米自由貿易協定(NAFTA)交渉によりボラティリティが高まったが、その後緊張は大きく和らいだ。カナダ国内については、賃金の強い伸びがインフレ上昇につながっていると思われる。インフレの3つのコアとなる指標の平均上昇率は2%に達し、年央に向けて上昇トレンドが続くと予想される。今後2%を超える水準が維持されるようであれば、カナダ銀行(BoC)は安定的な利上げペースを保つことが見込まれる。このため今後6カ月から12カ月にわたりカナダ・ドルはサポートされると考える。

カナダ・ドル上昇の予想にとって主なリスクは引き続き通商を巡る不透明感である。NAFTAについては、米国、カナダ、メキシコが7月のメキシコ大統領選挙の前に交渉を終わらせようとしており、撤廃のリスクは後退したと思われる。7月前に交渉が妥結するか否かは依然不透明であるものの、我々の基本シナリオでは時代に即した内容で合意が成立すると予想している。さらに、大規模な貿易の停滞が起きると、世界の経済成長率に悪影響が及び、市場ボラティリティが高まり、カナダ・ドル上昇の妨げにもなると思われるが、依然としてこれはリスク・ケースと考える。

日本円/ニュージーランド・ドルは収益機会とヘッジのための通貨ペア

日本の景気回復の大幅な進展と巨額の経常黒字による良好な経済環境の下、ニュージーランド・ドルに対し日本円は上昇余地があると考える。日本は政治的に難しい局面に入っている。安倍首相はいくつかの政治スキャンダルにより立場が弱まり、苦境に立たされている。円にとって政権交代はニュートラルまたはポジティブ(円高)と市場はみており、我々の見方も同じである。次の政権がデフレ脱却の手段として現政権以上に円安を推進する可能性は低いと思われる。さらに、インフレ率が徐々に上向いていることから、これが円高につながると考えられる。一方、ニュージーランドの直近のデータは、マクロ経済の軟化を示している。住宅販売の伸びが急激に低下し、企業景況感が依然低調で、1〜3月期(第一四半期)のインフレ率も低迷している。今のところ、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は利上げを2018年11月ではなく2019年5月に行うと我々はみている。ニュージーランド・ドルと米ドル間の金利差の拡大、投機筋のネット・ロング・ポジションの積み上がり、対米ドルで割高なニュージーランド・ドル、といった要因を鑑みると、ニュージーランド・ドル/米ドルの下げ余地は大きく、ニュージーランド・ドル/日本円においては、さらにそれを上回ると考える。


図表1: ブラジル経済の成長率の加速がブラジル・レアルを下支え
ブラジルの実質GDP成長率(%、左軸)と経常収支の対GDP比率(%、右軸)

出所:ブルームバーグ、UBS、2018年4月現在


図表2: ユーロ/米ドルはさらに上昇する見通し
為替レート、予測とボラティリティ・レンジ

出所:トムソン・ロイター、UBS、2018年4月19日現在


図表3: 米ドル/カナダ・ドルはさらに下落する見通し
為替レート、予測とボラティリティ・レンジ

出所: トムソン・ロイター、UBS、2018年4月19日現在



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