通貨市場 米ドルの短期的見通しを引き上げる

ベンチマーク通貨である米ドルの短期的な見通しを変更し、今後3カ月で米ドル高/ユーロ安のもう一段の進行を予想する。米ドルについては今後1年の見通しも引き上げるが、長期的には現在の割高水準から正常水準に向けて緩やかだが着実な米ドル安方向に向かうとの基本観は維持する。

14 8 2018
  • ベンチマーク通貨である米ドルの短期的な見通しを変更し、今後3カ月で米ドル高/ユーロ安のもう一段の進行を予想する。米ドルについては今後1年の見通しも引き上げるが、長期的には現在の割高水準から正常水準に向けて緩やかだが着実な米ドル安方向に向かうとの基本観は維持する。
  •   今後数カ月の通貨市場は、複数の要因によってリスク回避的な市場心理が優勢となり、輸出主導国通貨には不利な展開になりそうだ。その結果、米ドル、スイス・フラン、日本円といった典型的な安全通貨に資金が向かうだろう。
  • 輸出国通貨は、トルコ情勢、関税と制裁の経済的影響、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和策の終了プロセス、米国の中間選挙、中国経済の安定といった主要不確定要因からの悪影響を受けている。

我々は、今年は米ドル安が進むとみていたが、最近のトルコ情勢の展開、同時成長していた世界経済の足並みの乱れ、米中間の貿易摩擦の長期化懸念(これが米国以外の投資家センチメントを明らかに悪化させている)から、米ドルの見通しの見直しを迫られた。これまで米ドル安の原因となってきた長期的なファンダメンタルズ要因(経常赤字と財政赤字の拡大)には何ら改善は見られないものの、米国の景気指標と企業収益がさらに好転し、他国との大幅な金利差が縮小しないことから、短期的には米ドル高が続くと予想する。

我々は、米ドルへの全体的な方向性を見直すよい機会だと判断する。第一に、ユーロ/米ドルの3カ月、6カ月、12カ月予測をそれぞれ1.10(従前予測は1.20)、1.15(1.25)、1.20(1.30)へと下方(米ドル高方向)修正する。同様に、英ポンド、スイス・フラン、カナダ・ドル、豪ドル、ニュージーランド・ドルをはじめとするG10主要国通貨の予測も米ドル高方向に修正する。ただし日本円だけが例外で、従来予測を変更しない。

トルコ情勢の進展とその主要(とりわけ西欧の)貿易相手国と債権者への波及的影響が直接の引き金とはなったものの、今回の見通し変更の大きな理由ではない。トルコが欧州諸国と貿易上密接な関係にあること、および外国銀行に対する債務を抱えていることが最近のリスクオフ的な市場心理を強めたことは事実だが、通貨市場全体を脅かすほどではない。欧州経済通貨同盟(EMU)の輸出額に占めるトルコの割合はおよそ1.6%で、外国銀行への対外債務は2,650億米ドルにすぎないからだ。さらに、トルコと他の新興諸国との相関は今後数週間、数カ月と時間が経過するとともに低下するだろう。

むしろ、米ドルの対主要通貨に対する短期的な見通しの変更は、米中間の通商関係の悪化、中国経済の成長鈍化が世界経済に及ぼす影響、そして内外の逆風に対する中国の政策対応を勘案した結果である。米連邦準備理事会(FRB)がこうした動きをどう読むかもよく考慮する必要がある。ユーロ/米ドルについては、欧州経済が今年上期の一時的鈍化から回復しているとはいえ、そのペースが事前予想を下回っていることも、このポジションの下方修正のもう一つの理由である。




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