CIO Alert 市場の動きに投資機会:戦術的資産配分に3つの変更

グローバル市場は、ここ数週間のリスク上昇を受けて調整した。トランプ大統領がメキシコ製品に関税を課すと唐突に発表し、貿易紛争が中国以外にも拡大した。貿易摩擦の悪化が重石になってきたことは景気指標の悪化にも現れ始めており、今や市場は米連邦準備理事会(FRB)が2020年末までに100ベーシスポイント(bp)程度の利下げを織り込んでいる。我々は、最近の市場の動きによって投資機会が生まれたと判断し、戦術的資産配分に次の3つの変更を行う。

05 6 2019

グローバル市場は、ここ数週間のリスク上昇を受けて調整した。トランプ大統領がメキシコ製品に関税を課すと唐突に発表し、貿易紛争が中国以外にも拡大した。貿易摩擦の悪化が重石になってきたことは景気指標の悪化にも現れ始めており、今や市場は米連邦準備理事会(FRB)が2020年末までに100ベーシスポイント(bp)程度の利下げを織り込んでいる。また、米政府が一部の大手IT企業に対する独占禁止法調査を準備しているとの報道を受け、これらの企業の株価も急落した。一方、イタリアのサルヴィーニ副首相が減税を提案し、財政規則をめぐるイタリアと欧州委員会(EC)との対立が現実化している。

我々は先月、グローバルな戦術的資産配分でリスクを一部削減するためのポジションを取った。しかし、最近の市場の動きによって投資機会が生まれたと判断し、戦術的資産配分に次の3つの変更を行う。

  1. イタリア2年国債のアンダーウェイト・ポジションを手仕舞って利益確定する。
  2. キャッシュに対する米2年国債のアンダーウェイト・ポジションを開始する。
  3. ユーロ圏株式に対する米国株式のオーバーウェイトを追加する。

イタリア2年国債のアンダーウェイトを終了するが、高格付債に対する欧州投資適格債のオーバーウェイトは維持する

イタリア国債はここ数週間で急落した。イタリアの極右政党「同盟」が先月の欧州議会選挙で躍進したことから、公約である減税の提案を閣議で行うと発表した。可決されれば、財政規則をめぐってECと対立する可能性がある。ECは、すでにイタリアがEUの財政規則に違反しているとし債務の是正手続きの開始を勧告した。

しかし、悪材料の多くはすでに市場に織り込み済みと、我々は考えている。我々がイタリア2年国債をアンダーウェイトして以来、利回りは45bpから60bpへと上昇し、ドイツ国債とのスプレッド(利回り格差)は106bpから132bpへと拡大した。今後については、欧州中央銀行(ECB)が金利の据え置き期間を延長するか、銀行への長期の資金供給(TLTRO)の条件を緩めれば、イタリア国債への間接的な支援になり得る(訳注:ECBは6日、金利の据え置き期間を2020年半ばまで延長する方針を発表した)。こうした措置を受け、イタリアの銀行は短期国債を積極的に購入し、価格を支える可能性がある。したがって、イタリア2年国債のアンダーウェイトを終了する。

高格付債に対する欧州投資適格債のオーバーウェイト・ポジションは継続する。このポジションは、今後12カ月で100bpの金利収入を期待できる。欧州が近々景気後退に陥る可能性は低いと思われ、ECBの金融緩和策によって、企業のクレジット・スプレッドは拡大を抑えられるだろう。

キャッシュに対して米2年国債をアンダーウェイトとする

米2年国債利回りはこの2週間で50bp近く低下して1.78%と、2017年後半以来の低水準になった。市場は現在、FRBが年内に70bp、来年に35bpの利下げを実施すると想定している。我々はこれを行きすぎだと考える。

貿易摩擦が悪化するなか、利下げの可能性が高まっていることは確かだ。しかし、現在の市場で織り込んでいるのは、景気後退に相当するほどの利下げであり、そこまでの後退はまだ起こらないというのが我々の判断だ。米国の失業率は3.6%と数十年来の低水準にあり、求人件数の増加は、労働市場に「たるみ」(失業率に表れない、職探しをあきらめた人々の割合)が殆ど残っていないことを示唆している。米国の経済成長率は過去平均並みにとどまっており、金融環境は緩和状態にある。これまでのところ、パウエルFRB議長は、利下げの示唆は避けつつ、景気下振れリスクが高まれば対応する姿勢を示した。一方、シカゴ連銀のエバンス総裁は、景気指標は、利下げを必要とするまでには至っていないと述べた。

以上から、FRBの利下げは、今後数カ月はない可能性が高く、何らかの政策措置を取ろうとする時には、その前にFRB幹部が市場との対話を通じて見解の調整を図ると我々はみている。利回りの最近の動きと、タカ派・ハト派のどちらに偏ることのないFRBの声明を踏まえ、キャッシュに対する米2年国債のアンダーウェイトを開始する判断に至った。

ユーロ圏株式に対して米国株式をオーバーウェイトとする

リスクが高まり、経済成長が鈍化しているという現在の環境では、米国株式はユーロ圏株式よりも有利な位置にある。過去の実績では、ユーロ圏株式が米国株式をアウトパフォームしたのは、世界全体の製造業の新規受注が強く、しかもユーロ圏が米国並みの経済成長率を上げていた時に限られるからだ。しかし、世界の購買担当者景気指数(PMI)の新規受注は52と、景気後退と景気拡大の境目である50をかろうじて上回っているにすぎず、かつ低下傾向にある。しかも、ユーロ圏の年内のGDP成長率のコンセンサス予想は米国のわずか半分だ。

こうした背景にもかかわらず、ユーロ圏株式の年初来リターンは12.2%と、グローバル株式の11%を上回っている(6月4日の取引終了時点)。我々は、欧州企業の今年の一株当たり利益(EPS)伸び率をわずか2.5%と、コンセンサス予想の4.5%を下回ると予想している。しかも景気先行指標がすぐにでも持ち直さないと、この予想値さえ引き下げる可能性も否定できない。ユーロ圏は、ブレグジット(英国のEU離脱)やイタリアの景気刺激策をめぐるECとの衝突といった政治的な逆風にも見舞われている。最後に、MSCI EMU指数のバリュエーションで比較すると、12カ月予想ベースの株価収益率(PER)は13.6倍と、我々の試算した適正水準の12倍よりも高い。

我々は、米国市場の方が底堅いと予想する。貿易摩擦が激化した場合には、FRBの方がECBよりも経済成長減速に対する多くの対抗策を持っている。ハイテク企業に対する目先の規制リスクに対する懸念は行きすぎに見える。米国の独禁法調査には数年がかかるとみられ、米国の大手IT企業への調査に対する規制当局の過去の判断は(欧州の場合だが)、ビジネス・モデルの根本的変革をもたらすものではなかったため、各社の利益率や株価には深刻な影響を及ぼさなかった。




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