CIO Reaction 米中貿易摩擦は過熱の恐れ

トランプ米大統領は、あたかもS&P500種株価指数のチャート上に自分のギザギザなサインを書き込もうとしているようだが、投資家はそのサインをなぞるように取引をするべきではない。

07 5 2019

トランプ米大統領は、あたかもS&P500種株価指数のチャート上に自分のギザギザなサインを書き込もうとしているようだが、投資家はそのサインをなぞるように取引をするべきではない。我々は現段階で、ポートフォリオに大きな変更をすることなく、投資を続けることを勧める。トランプ大統領のみが、どの程度相場が低下し、成長が鈍化しても、大統領再選を脅かすことにはならないのかのさじ加減をわかっているのかもしれず、我々は今後の大きな相場変動のリスクに備える必要がある。相場の大きな変動に耐性のない投資家は、リスクを減らすかポジションをヘッジすることができる。最大の懸念は、投資家が底値で資産を大量に売却し、再び上昇に転じた際に買い入れることをしないといった、昨年12月の繰り返しだ。

何が起きたのか?

米中通商協議の決裂への懸念が高まり、S&P500種は-1.7%、ユーロ・ストックス50指数は-1.8%、中国A株指数先物は-2.3%を示した。複数の米高官が通商協議の交渉の進展について懸念を示したことを受け、通商協議が再び妥結に向かうとの投資家の期待は薄れたようだ。通商協議について、ムニューシン米財務長官は「交渉の大きな方向転換」と述べ、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は中国が「約束を破ろうとしている」と批判した。

貿易摩擦の再燃は上昇相場と世界経済の成長を脅かすだろう。我々の基本シナリオは依然として、米中通商協議の最終合意だ。しかし、足元の不透明性は高い。

今後の展開

米国は5月10日午前0時01分(米東部時間)から2,000億米ドルの中国からの輸入品に対する関税率を10%から25%に引き上げる方針を表明した。この関税引き上げが実施されれば、中国は米国に対し報復措置に出ると警告した。これでは昨年10月の世界的な株式相場急落を引き起こした関税の報復合戦に戻ってしまう可能性がある。貿易摩擦をめぐる不透明感は、多くの企業が設備投資を先延ばしにし、ひいては輸出の伸びと鉱工業生産の世界的な鈍化も引き起こした。米中通商協議の決裂は、世界経済成長の鈍化をさらに引きのばすリスクがある。

貿易交渉が完全に決裂し、関税が引き上げられた場合、米国株式は高値水準から10~15%下落し、中国株式は15~20%急落すると予想する。最も影響を受けるのは、テクノロジー、資本財、エネルギー等の貿易関連セクターだろう。また、日本円などの安全通貨は上昇が予想される一方、ユーロおよび新興国通貨、特に人民元は下落する可能性が高い。

2019年に入りこれまでボラティリティ(市場の変動)が低い状況が続いていただけに、7日の株価急落は、システム運用によるレバレッジの解消も影響した可能性がある。ボラティリティ関連ファンドのレバレッジは総じて2018年の2月や10月の水準には達していないが、これが短期的な急落の一因になったとも考えられる。

言うまでもなく、関税引き上げが回避される可能性はまだ残されている。中国の劉鶴副首相は通商協議のため9-10日に訪米する予定を明らかにしている。もし急転直下の合意に達すれば、市場は最終的に先週の水準に回復する可能性が高い。だが、交渉すべき問題はまだ多く残されているため、速やかな妥結は既定路線ではない。米中は最終的に合意に達するという我々の基本シナリオに変更はないが、関税引き上げ期限が目前に迫っているため、通商協議の合意は一筋縄ではいかないと予想される。

投資家へのアドバイス

投資家には現在のポートフォリオを大きく動かさずに保有し続けることを勧める。手元資金に余裕がある場合は、下落局面が長期的に成長の見込まれる銘柄などへの投資好機となるだろう。

とは言え、貿易交渉の行方には不透明感が強まっている。今後予想されるボラティリティの上昇に耐性がない投資家は、ポートフォリオを若干調整してリスクを減らすかヘッジを行う方が賢明だろう。我々の戦術的な資産配分では、全体としてリスクオンの姿勢を維持しつつ、ボラティリティ上昇時に恩恵が期待できるカウンターシクリカルな(反循環的な)ポジションでバランスを取る。方向性が明確になるまで、この先数日の展開に注視していく。




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