CIO Alert 米長短金利逆転も、景気後退は差し迫っていない

中国の小売売上高と鉱工業生産高が予想を下回り、ドイツの第2四半期国内総生産(GDP)がマイナス成長となったことを受けて、景気への懸念が高まった。製造業を中心に数カ月にわたる世界経済減速のトレンドは、なおも継続している。米10年国債利回りは約12年ぶりに2年国債利回りを下回った。長短金利の逆転(逆イールド)は過去7回の景気後退の前に起きており、不況入りの前兆ともされている。

14 8 2019

14日に発表された中国とドイツの軟調な経済指標と、同日に発生した米国債イールドカーブの一段のフラット化を受けて、S&P500種株価指数は2.93%、世界株式は2.85%、新興国株式は2.88%、それぞれ下落した。

中国の小売売上高と鉱工業生産高が予想を下回り、ドイツの第2四半期国内総生産(GDP)がマイナス成長となったことを受けて、景気への懸念が高まった。製造業を中心に数カ月にわたる世界経済減速のトレンドは、なおも継続している。米10年国債利回りは約12年ぶりに2年国債利回りを下回った。長短金利の逆転(逆イールド)は過去7回の景気後退の前に起きており、不況入りの前兆ともされている。さらに安全資産への逃避が進む中、米30年国債利回りも過去最低を記録した。これは、低金利が長期化することを投資家が予想していることを示唆する。金価格は14日に0.7%上昇し、年初来の上昇率は18%となった。これも投資家の不安心理の高まりを示している。しかし、市場ではこのように懸念が広がっているものの、我々は2020年に米国が景気後退入りする確率は25%にとどまると見ている。

米中貿易摩擦がさらに悪化し、すべての中国製品に対し関税率が25%に引き上げられる事態にならない限り、米経済は長引く世界の製造業不振に耐えることができるだろう。強い消費支出が企業投資の減少を補い、第2四半期のGDP成長率は年率換算で2.1%となった。米連邦準備理事会(FRB)は予防的な利下げを実施したが、今後は景気下支えのために9月から来年3月までに3回の追加利下げを実施すると予想する。これによって貿易摩擦の打撃が部分的に緩和されるだろう。

トランプ米大統領が13日に、3,000億米ドル相当の残りの中国製品に対する10%制裁関税について、一部品目については12月15日まで適用を延期すると発表したことは好材料と受け止められたが、下支え効果は市場が当初想定していたほどではなかったようだ。ブルームバーグによると、関税の発動が一部先送りされた一方で、残る約1,100億米ドル相当の品目については、依然9月1日の関税発動リストに残されている。

対中制裁関税の一部が延期されたことは、トランプ政権が米経済への影響を回避する必要があると判断したことを示している。我々は、9月1日に残りの中国製品全てに10%の追加関税が発動されれば、2020年の米GDP成長率は約0.25ポイント押し下げられると予想していた。だが、もし追加関税が12月に適用されなければ、最終的な影響は小さくなるだろう。一方で、関税率が一律25%に引き上げられれば、経済成長率の押し下げ幅は1ポイント弱となり、2020年に景気後退入りする確率は50%に上昇するとみる。しかし、我々の基本シナリオでは依然、12月にすべての品目に10%の追加関税が発動されると想定しており、関税率が引き上げられる確率は30%とみている。

貿易紛争とは異なり、逆イールドそのものが経済に及ぼす影響は限定的だ。重要なのは、むしろ、逆イールドが発する経済の健全性に関するシグナルであり、それ自体は一部で警戒されるほどネガティブではない。第1に、最初に逆イールド現象が起きてから景気後退が発生するまでには長いタイムラグがあり、そのタイムラグの期間も毎回同様ではない。過去5回の景気後退局面では10カ月~36カ月と幅があり、平均すると22カ月となっている。さらに、米国債の利回りは、約16兆米ドルにものぼる世界のマイナス利回り債にも押し下げられており、米国景気についてのシグナルにも歪みが生じている。最後に、注目すべきは、逆イールドがどれだけ続いているのか、そして長短金利差がどれだけの大きさであるのかという点である。FRBの利下げで利回り曲線がスティープ(傾斜)化し、順イールドに戻ったならば、この短期的な逆イールドを景気後退のシグナルとして捉えるのは早すぎるだろう。

さらに、逆イールド現象が起きても、それが株式をすぐに売るタイミングを示唆しているわけでない。1975年以降、2年債の利回りと10年債が逆転してからも、S&P500種株価指数はそれ以後ほぼ2年間上昇し続け、強気相場のピークに達するまでに平均40%上昇している。

米国は来年の景気後退入りを回避できるとの見方を我々は変えていない。しかし、経済成長は今後も減速するとみている。さらに、各国中央銀行が成長の下支えに向け緩和方向にシフトしており、低金利環境が長期化する可能性が高い。以上から、株式市場が貿易と経済成長をめぐる不確実性が晴れるまで様子見のなか、現在の環境下ではキャリー戦略が有望と考える。こうした状況を踏まえ、我々は、低金利通貨バスケット(豪ドル、ニュージーランド・ドル、台湾ドル)に対して高金利の新興国通貨バスケット(インドネシア・ルピア、インド・ルピー、南アフリカ・ランド)のオーバーウェイト幅を拡大した。また、新興国国債をオーバーウェイトとしており、欧州および米国における様々な配当戦略も推奨する。




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