CIO Reaction メイ首相の辞意表明で高まるEU離脱の不透明感

英国のメイ首相は24日、自身が新たに掲げた欧州連合(EU)離脱協定法案の修正案に対し支持が得られなかったことを受け、首相の座を降りると表明した。メイ首相の辞任によって、現在10月31日に期限が設定されている、英国のEU離脱プロセスに対する先行き不透明感が一段と高まるだろう。英ポンドは、過去3週間でユーロと米ドルに対してそれぞれ約4%下落しており、1ユーロ=0.88英ポンド、1英ポンド=1.27米ドル近辺で引き続き下押し圧力にさらされている。

24 5 2019

次に何が起こるか?

メイ首相は6月7日に保守党の党首を辞任する予定。今回の発表を受けて、保守党は正式に党首および首相の後任選びに着手する。現時点での有力後継候補は、2016年の国民投票を前にEU離脱キャンペーンを主導したボリス・ジョンソン前外相だ。同氏は、合意なきEU離脱を容認する用意があるとの考えを示唆している。

しかしながら、新首相にとっても政権内の合意を整えるのは難しい。保守党は議会で過半数に届いておらず、法案成立には民主統一党(DUP)の支持を得る必要がある。新しい指導者の下で、英政府の正式な方針が合意なき離脱の方向に傾けば、党内から離党者が出る可能性もあり、同党の政権基盤がますます弱まる恐れがある。一方の最大野党・労働党でもEU離脱をめぐり党内の分裂が深まっており、合意の形成は依然として難しい。

我々は、英国がEUに3回目の離脱期限の延長を求めざるをえない確率が高まったと見ている。もしそうなれば、解散総選挙またはEU離脱の是非を問う国民再投票の可能性も上昇する。

どのようなシナリオが考えられるか?

  1. 合意なきEU離脱:保守党のメイ氏の後継者は離脱賛成派となる可能性が高まっているようだ。現時点で最有力候補と目されるのはジョンソン前外相である。英国ではEU離脱を掲げる新党「ブレグジット党」の支持率が上昇しており、合意なき離脱を前向きに検討する考えを表明している指導者を支持する勢いが強まる可能性がある。26日に欧州議会選挙の投票が終了したが、直前の世論調査では、ブレグジット党の支持率が37%であったのに対し、保守党の支持率は7%にとどまっている。もし合意なき離脱となった場合、英ポンドは1英ポンド=1.15米ドル、1ユーロ=0.97英ポンドまでポンド安が進む可能性があると我々は予想する。これらの水準には、合意なき離脱が英国経済に及ぼすマイナスの影響がかなり織り込まれると見ている。
  2. 離脱期限の再延長:英国民の間では離脱プロセスに対する苛立ちが高まっているが、多くの閣僚や議員は依然として合意なき離脱による経済的な打撃を懸念している。こうした各方面からの抵抗を受けて、離脱賛成派の首相でさえ、EU加盟国に対して、10月31日に設定されている離脱期限の延長を求める可能性がある。EU指導部は、英国に総選挙や国民再投票など、政治的な膠着を解消する措置を取るよう強く要求するとみられる。先行き不透明感が払拭されない中、企業は投資計画を延期し、英ポンドは、交渉妥結観測が広がれば安堵感から一時的に上昇するなど、大きく揺れ動くだろう。このシナリオでは、英ポンドは対米ドルで1.28-1.34のレンジで取引されると予想する。
  3. 離脱なし:英国の有権者はEU離脱をめぐって今も大きく分断されたままだ。しかしながら、大手世論調査会社「YouGov(ユーガブ)」の最新の世論調査では、2回目の国民投票が実施された場合、EU残留に投票すると回答した人の割合は44%、離脱に投票すると回答した割合は40%だった。英国がEU残留を決定すれば、英ポンドは急反発するだろう。現在の英ポンド相場は、購買力平価(1 英ポンド=1.58米ドル、1ユーロ=0.82英ポンド近辺)と比べて過小評価されている。もちろん、このシナリオが実現した場合でも、これらの適正水準が当面の目標とはならない。これらはあくまで長期的な目標であり、もし達成されるとすれば、それは国民と政治家のEU離脱を目指す意欲が後退した場合ということになるだろう。したがって、その可能性があるとしても、現実的には非常に時間を要する。

投資見解

英ポンドは、EU離脱の行方に対する投資家の見通しに左右される状況が続いている。今後は先行き不透明感とボラティリティ(相場の変動)が高まると予想されるが、我々は英国の政治動向に対する市場の反応から生じる投資機会に引き続き注視していく。英ポンドは、特に我々が算定する購買力平価と比べると割安な水準にある。

個々の投資家にとっての適切な対応は、英ポンドと英国資産へのエクスポージャーによって異なる。

英国へのエクスポージャーが少ないグローバル投資家にとっては、今が慎重に英ポンドへのエクスポージャーを増やす準備をする時だと考える。英ポンドは割安水準にあることから、長期的な買い場と捉えることができるだろう。しかし、大きなポジションを取るのは時期尚早だろう。ブレグジットの結末を予測することは難しく、当面ボラティリティの高い状態が続きそうだ。とはいえ、メイ首相の辞任表明後は、1英ポンド=1.24米ドルを下回った水準で押し目買いを入れ、投資家の懸念が広がり1.15米ドルまで下落した場合は、英ポンドの大幅なロングポジションを取る好機になるとみている。英政局の混迷が改善すれば、ヘッジを解消することを推奨したい。

すでに英国資産にエクスポージャーを保有するグローバル投資家に対しては、上記のシナリオ分析を参考にポジションを慎重に見直すよう推奨する。我々は以前から、こうした投資家には英ポンドのさらなる下落に備えたヘッジを検討するよう推奨してきたが、そのヘッジを解消するには時期尚早だと考えている。




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