CIO Reaction 米中貿易交渉、瀬戸際戦略で相場急落

週末の米中間の貿易を巡る挑戦的な発言に続き、中国は米国が10日に発動した関税引き上げに対する報復措置を発表し、相場は急落した。追加関税発動の10日から13日の終値を比較すると、S&P500種株価指数は2.4%、MSCI中国指数は約3.8%下落した。

13 5 2019

週末の米中間の貿易を巡る挑戦的な発言に続き、中国は米国が10日に発動した関税引き上げに対する報復措置を発表し、相場は急落した。追加関税発動の10日から13日の終値を比較すると、S&P500種株価指数は2.4%、MSCI中国指数は約3.8%下落した。

中国は昨年の追加関税の対象となった600億米ドルの米国製品に対する関税を最大25%に引き上げ、米国の「一国主義と保護貿易主義」を非難した。一方、米高官はまだ関税が上乗せされていない3,250億米ドル相当の中国製品に追加関税を課す準備を行っていると発言。トランプ大統領は、中国が貿易協定に合意しなければ「大きな痛手を受ける」と警告したが、重要なのはトランプ政権がこの提案を発動するまでに約2カ月かかる点だ。

先週米中の緊張が高まる中、我々はリスク管理の対応を行い、米ドルに対する豪ドルのアンダーウェイトを開始し、スイス株式に対する新興国株式のオーバーウェイトを終了した。我々の基本シナリオでは、米中貿易交渉が最終的には妥結すると予想し、投資家には投資を続けることを推奨する。しかしながら、合意は一筋縄ではいかない可能性が高く、投資家は今後のボラティリティ(相場の変動)の高まりに備えるべきだ。そして我々は交渉の進展に伴い、さらなるヘッジの必要性について検討していく。

今後の展開

5月9日付のCIO Alertで示したように、我々は今後の相場の方向性を占うのは以下の点になると考えている。

  1. 貿易交渉は継続されるのか、完全に決裂するのか
  2. トランプ大統領は新たに3,250億米ドル相当の中国製品に対する関税引き上げを警告したが、米国がどの程度迅速にこれを発動させるのか
  3. 中国は5月13日に発表した関税引き上げ以外に、報復措置を行うのか
  4. 米国は自動車に対する輸入関税の引き上げを実施するのか
  5. 金融・財政政策による対応はあるのか
  6. グローバル経済への波及的影響はあるのか

企業はこれまでの関税措置に、サプライチェーンの微調整や製品調達ルートの変更で対応してきたが、すでに小規模な企業へのダメージが現れはじめている。そして追加関税の適用範囲が拡大すれば、この痛みは広がるだろう。これまでは、米国企業が主に中国から調達する製品は追加関税適用品目から意図的に除外されてきた。今後我々は、事態の悪化がどの程度企業のセンチメントに影響を及ぼすか、それによって企業は投資を遅らせるかにも注目する。すべての中国製品が25%の関税の対象になれば、米経済成長率は0.75-1%落ち込み、S&P500種構成企業の増益率は我々の基本シナリオの予想よりも約3%低くなり、米株式市場は約10-15%下落すると予想される。

しかしながら、米中貿易交渉は少なくとも継続している。トランプ大統領の最高経済顧問、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、米中の首脳が来月日本で開催されるG20サミットで会談を行う可能性が「極めて高い」とし、交渉は依然として「建設的」であると発言した。また中国の報復措置が比較的控えめなことも良い兆しである。中国はまだ、12月のトランプ大統領と習近平国家主席との友好的な会談の後に停止された、米国製自動車への追加関税の適用を再開すると示唆していない。また中国はこれまでのところ、米農産物の輸入停止方針の発表も控えている。

投資見解

我々は先週、ボラティリティが高まるとの見通しからポートフォリオのリスクを縮小した。これは、既存のカウンター・シクリカル(反景気循環的な)ポジションがボラティリティの高い期間に利益を生み、効果を出しつつあるようだ。具体的には、豪ドルは対米ドルで約0.8%下落し、日本円は対米ドルで0.6%上昇した。S&P500種株価指数のプット・オプションの価格は上昇した。

我々はさらなる下振れに対して備える必要性を引き続き検討するが、米中間に世界的な景気減速を回避したいとの共通の思惑があるため、両国が譲歩に向かうとの見方も維持する。従って、投資家には長期成長に向けた投資を続け、キャッシュに逃避したいという衝動は抑えることを勧める。

しかしながら、貿易協定妥結に向けた道筋は平坦ではない可能性が高く、トランプ大統領が経済リスクの緩和よりも、中国に対する強硬姿勢がもたらす政治的利益の方が大きいと考え始めるリスクを監視する必要がある。従って投資家には、株式のエクスポージャーに対するプロテクション、ポートフォリオの分散、クレジットの選別など守りの戦略を検討することを推奨する。また景気循環による影響を受けにくいグリーン・ボンドもクレジットポートフォリオのリスク緩和に役立つ。そして長期的な資産目標達成のためには、優良高配当銘柄のほか、長期のサステナブル投資、長期テーマ投資などの戦略を通して、成長に向けたポジションを取ることが重要である。

我々は引き続き、ポジションの監視を行い、リスクとリターンの見通しの変化に応じてポジション調整を図り、最新の情報を提供していく。




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