CIO Reaction 米朝首脳会談 - 歴史的会談も、具体性は欠如

今回の合意によって、朝鮮半島におけるポジティブな政治モメンタムがさらに強まるだろう。我々は米国が米韓合同軍事演習中止の約束を果たすと想定し、短期的に軍事的な緊張が高まる可能性を10-20%から10%未満に引き下げた上で、今後の展開を注視していく。しかしながら、共同声明は長いプロセスの始まりに過ぎず、今後多くのリスクと障害が待ち受けている可能性がある。

12 6 2018

概要

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は12日、シンガポールで行われた歴史的な首脳会談で、「朝鮮半島の完全な非核化」に向けて取り組むと約束した。両首脳による共同声明には、外交関係の構築、和平の追求、北朝鮮の体制保障確約が盛り込まれた。共同声明への署名は、我々が想定していた北朝鮮問題の解決シナリオに相当する。記者会見でトランプ大統領は、在韓米軍の数を減らすことはないこと、あるいは経済制裁を即時に緩和するつもりはないことを明らかにした。一方で同大統領は、米韓合同軍事演習を中止し、「適切な時期に」金委員長をホワイトハウスに招待する意向を示した。

今後の展開

今回の合意によって、朝鮮半島におけるポジティブな政治モメンタムがさらに強まるだろう。トランプ大統領の楽観的な姿勢からは、交渉による解決を果たそうという真の意欲があることが示された。我々は米国が米韓合同軍事演習中止の約束を果たすと想定し、短期的に軍事的な緊張が高まる可能性を10-20%から10%未満に引き下げた上で、今後の展開を注視していく。しかしながら、共同声明は長いプロセスの始まりに過ぎず、今後多くのリスクと障害が待ち受けている可能性がある。

戦略:核ミサイル開発を目指す過程で制裁と財政面での苦境に耐えた後、北朝鮮は米国を交渉のテーブルにつかせた。この過程で、北朝鮮は今回の会談をポジティブな動きとして、世界中の関心を集めることに成功した。ここからは、金委員長は大きな見返りなしでは非核化を行う意欲を失う可能性があり、交渉が長期化する可能性がある。
信頼性:北朝鮮には核開発プログラムを縮小すると誓いながらも、その後に合意を破棄した過去がある。同様に、トランプ大統領が同盟国との通商協定やイランとの核合意といった過去の合意への拒絶を示していることは、北朝鮮の米国に対する警戒感を強めているかもしれない。
曖昧さ:声明文は非核化と体制保障の両面で具体性に欠けている。トランプ大統領の記者会見からは、1ページの声明に示されていること以上に広範な議論が行われたことがわかる。両国に空白を埋めてより具体的な協定を結ぶ政治的意思があるかどうかは現時点では不明である。

投資見解

平和的な解決に向けての前進は歓迎されるが、これが短期的に金融市場へ大きな影響を及ぼす可能性は低い。市場は昨年の朝鮮半島での緊張の高まりに対しあまり懸念を示さなかった。北朝鮮によるミサイル実験も、韓国の株価を1日で平均0.1%しか押し下げなかった。従って、今回の首脳会談による緊張緩和に対し、市場がこれまでのところ大きな反応を示していないのも不思議ではない。韓国総合株価指数と韓国ウォンはともに、前日比横ばいで12日の取引を終えた。このことは、今後の交渉進展による相場の上昇は狭い範囲に限られるとの我々の見方を裏付けている。

我々はグローバル株式のオーバーウェイトを継続する。米朝首脳会談が即時に市場に影響をもたらす可能性は低いものの、北朝鮮の核兵器開発に関連するテールリスク(確率は低いものの、発生すると巨大な損失をもたらすリスク)は後退する。よって、中期的なリスクプレミアムは縮小に向かい、市場の注目は堅調な企業収益とグローバル経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)に再び向かうだろう。

Mark Haefele

Global Chief Investment Officer

Min-Lan Tan

Head Chief Investment Office APAC



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