CIO Reaction 株式市場は景気減速を織り込みすぎ

米国株式市場は先週一旦落ち着いたものの、今週に入り再び急落した。我々は、ハイテク企業の成長鈍化、経済成長の減速、原油価格下落、米住宅市場の軟化、信用市場の混乱などを懸念材料として注視しているが、現在のところ、どの要因も米国と世界全体の経済成長を大きく妨げるほど深刻化してはいないと思われる。

20 11 2018

米国株式市場は先週一旦落ち着いたものの、今週に入り再び急落した。この2日間の下落率はS&P500種株価指数が3.3%、MSCIオール・カントリー・ワールド指数が2.6%となった。19日はスマートフォンの販売不振への懸念を背景にハイテク株が下げを主導した。20日は経済の成長減速懸念と全般的なリスク回避センチメントを反映して景気敏感セクターが大きく売られ、原油価格も6%下落した。原油価格の急落で米ハイイールド社債への不安が広がり、スプレッドは10月の最低水準である114ベーシスポイント(bp)からこれまでに425bpまで拡大した。

我々は、ハイテク企業の成長鈍化、経済成長の減速、原油価格下落、米住宅市場の軟化、信用市場の混乱などを懸念材料として注視しているが、現在のところ、どの要因も米国と世界全体の経済成長を大きく妨げるほど深刻化してはいないと思われる。

ハイテク株下落の背景には、ポジション調整、スマートフォンの需要懸念、半導体の先行き不安など複合的な要因がある。しかし、この急落によりハイテク株のバリュエーションは魅力が高まっている。スマートフォン市場の減速とは対照的に米企業のIT投資は堅調を維持しているからだ。

20日に発表された主要小売業者の業績が事前予想を下回ったことも、成長懸念に拍車をかけた。しかし、米国経済の強さを計る指標として重視される小売売上高は力強さを保っている。さらに、間もなく始まるクリスマスシーズンの個人消費支出は少なくとも前年比+5%と、ここ数年では特に大きな伸びになると予想されている。米国全体としては10-12月期(第4四半期)のGDP成長率が2.5~3%に達する見通しである。米国以外の経済成長率は年間を通して低下傾向が続いているが、なお長期平均を上回る水準にある。

20日の原油価格は、ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)面で目新しい材料もない中で急落しており、幅広いリスク回避的な動きの一環であると思われる。中期的には、良好な需給関係が原油価格を引き上げるだろう。

さらに、米住宅市場の冷え込みを示す兆しが増えている中、19日に全米住宅建築業者協会(NAHB)が発表した11月の住宅市場指数も低調な結果となり、利上げによる景気減速への警戒感が強まった。だが、手頃な価格の住宅には引き続き一定の需要があり、供給の制約も多くの市場で緩和されている。我々の基本シナリオでは来年一杯は金利が比較的安定的に推移すると想定しており、アフォーダビリティ(買いやすさ/借りやすさ)への圧力はある程度軽減され、住宅市場のさらなる減速に歯止めがかかるだろう。

最後に、信用市場に関しては、スプレッド拡大の大半はここ数週間で起きており、10月の株価調整の影響はさほど受けなかった。スプレッド拡大は原油価格の急落が一因であるが、投資家は信用市場の軟化を次第に許容できなくなっている。とはいえ、経済は依然として力強く、我々の基本シナリオでは今後12カ月のデフォルト(債務不履行)率は2.5%と、過去の平均からみても低い水準を予想している。したがって、低いデフォルト・リスクからみれば、現在のハイイールド債のスプレッドは妥当な水準だろう。

結論:我々は、今週の急落は強気相場における行き過ぎた調整だとみており、むしろバリュエーションの魅力が高まったと捉えている。我々は、経済成長の鈍化と貿易リスクを市場はすでに織り込み済みと判断し、戦術的資産配分においてグローバル株式のオーバーウェイト幅を今月初めに引き上げた。以上を踏まえ、株式保有による今後6カ月のリスク調整後リターンは上振れ余地の方が大きいと考える。しかし、市場では貿易紛争や米連邦準備理事会(FRB)の利上げペース、経済成長等の行方がより明確になるまで様子見姿勢を強めているため、今後の相場の変動に備えて米10年国債のオーバーウェイトなどの反景気循環的なポジションの保有も継続する。




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