CIO Note トランプ大統領、対中制裁関税発動へ

トランプ米大統領は3月22日、中国の「経済侵略」に対抗するため、ハイテク産業を中心に幅広い中国製品に対する高関税を課す制裁関税を指示する文書に署名した。

22 3 2018

トランプ米大統領は3月22日、中国の「経済侵略」に対抗するため、ハイテク産業を中心に幅広い中国製品に対する高関税を課す制裁関税を指示する文書に署名した。制裁関税は、米国通商代表部(USTR)が2017年8月に開始した通商法301条の調査結果を受けた決定だ。この調査によると、中国の知的財産の侵害による被害総額は、最大で年間500億米ドルにのぼると推計される。この金額に相当する中国製品が制裁対象となる見通しで、中国からの輸入総額の約10%に相当する。対象品目のリストは15日以内に発表されるが、ロボットや航空宇宙など10の戦略的セクターが主な標的となる見込みだ。

この発表を受けて株価は急落し、S&P500種株価指数は前日比-2.5%、ダウ工業株平均は-2.9%でこの日の取引を終えた。とは言え、市場は総額300億~600億米ドルに達する制裁関税の発表をすでに織り込んでいた。さらに、トランプ政権は報復関税率を25%と提示したが、後のパブリックコメント(意見公募)において、それを上回る税率が提示される可能性があることも織り込み済みだ。したがって、この日の終盤の下げは関税発動のニュースが主因ではなく、モメンタムに基づくものかもしれない。

我々は、現段階で今回の関税措置による世界経済や株式市場への直接的な影響について過剰に反応すべきではないと考える。22日発表の制裁措置による米国経済への影響は軽微と思われる。制裁対象になると考えられる500億米ドル相当は米国の輸入総額の2%にすぎない。一方、米国の被害を最小化するため、今回の追加関税は中国以外からでも輸入できる品目に適用される可能性がある。世界経済も力強い成長期から貿易摩擦激化の局面に突入しつつある。しかし、世界経済にとって2018年が2011年以降で最も堅調な年となる見通しは変わらない。貿易紛争の激化が世界経済を揺さぶるとの見方から、各国中央銀行が金融引き締めの手を緩める可能性もある。米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行はここ数日から数週間、貿易戦争による成長阻害リスクを警告している。我々はこの潜在リスクを軽視していない。今回の関税措置は、現在年率12~13%で成長しているアジアの輸出に悪影響を及ぼすと思われる。

今後数日は、トランプ政権の具体的な制裁内容と、まだ不透明だが重要な中国側の報復措置の詳細を注視していく。多くの不確実要素が明らかになるまでは、こうした関税発動当初の影響を見極めることはできない。我々は中国が徹底的な報復措置に出る確率を現時点で20~30%とみている。中国はすでに技術移転を伴わない中国市場進出を認める意向を示しており、前回の鉄鋼に対する関税措置同様、今回の制裁関税の発表内容がそのまま発動されるとは限らない。したがって、今回の措置は、最終的な決着に向けた長いプロセスの始まりであると我々はみている。

現段階では投資家は、ポートフォリオの変動を抑えるため、ポートフォリオを十分に分散化し、株式のプットオプションを検討するとよい。我々のグローバルな戦術的資産配分は引き続きリスク選好とし、堅調を維持している世界経済成長からの利益確保を目指す。ただし、景気に左右されないポジションを保有するため、市場が全面的な貿易戦争を織り込み始めた場合にパフォーマンスの上昇が期待できる米10年国債やニュージーランド・ドルに対する円のオーバーウェイトを推奨する。

Mark Haefele

Global Chief Investment Officer



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