UBS Perspectives 日本版 2011年 秋号 vol.9

バックナンバーはこちら

最新号はこちら

ご注意事項

アジアにおけるフィランソロピー

UBS-INSEAD Study on Family Philanthropy in Asia

急速な経済成長を遂げ、多くの富裕層を生み出したアジア。しかし、変貌著しいこの地域における慈善活動の実態はほとんど明らかにされていない。UBSはシンガポールにキャンパスを持つフランスのビジネススクール<INSEAD>と共同で200を超えるアンケートと、10ヶ国の超富裕層を対象に100回以上のインタビューを行い、アジア地域の慈善活動に関するレポート<ファミリーフィランソロピー>を作成した。アジアのフィランソロピーの動向を紹介する。

「ファミリー」でフィランソロピーに取り組むアジアの富裕層

他者に良い影響を与えたいーそれは、人間が普遍的に持つ感情だ。世界の慈善活動家と同様に、アジアの富裕層にとっても「地域社会への恩返し」「社会全体をより良くしたい」という想いがフィランソロピーの動機となっている。しかし今回の調査で、アジアの42%の富裕層が慈善活動のメインファクターとして挙げたのが、「ファミリーの価値(名声)の構築と維持」だ。個人としてではなく、"一族"での社会貢献を意識しているのが、この地域の特徴と言えるだろう。アジアのダイナミックな経済成長は、従来からの富裕層とその子孫である第二世代に加え、新たな若い富裕層を生み出した。この世代間での慈善活動の考え方の相違も鮮明になっている。高齢層は地域社会に対する責任感が強く、若い世代はより国際的な志向を持っている。また、援助や支援を行いたいテーマに関しても、高齢世代は「教育」「健康」「貧困」を挙げているのに対し、若い世代は「アート」や「環境」、「市民の権利」にフォーカスしている。取り組みへのマインドも異なる。高齢世代は"与える"こと自体を目的とする自己完結型であり、若い世代は自らが社会に与える影響の測定に関心を示している。

アジアにおけるフィランソロピーの実態

フィランソロピー活動に関して、アジアの富裕層は70%が自国へのサポートを優先し、また他の国に移住した人々も、本来属している民族的・社会言語学的コミュニティへの援助を好む傾向がある。しかし、地縁が無くても、真に支援が必要とされる地域への援助機会を求める人々も増え始めている。実際に行われた慈善活動の内訳としては教育環境に問題を抱える国々が多いことを反映し、「教育」が最も多く(36%)、以下、「貧困緩和と開発」(10%)、「健康」(9%)、「災害救援」(5%)が続く。「芸術文化」(4%)、「環境」(4%)、「市民の権利」(1%)はまだ少ないのが実情だ。活動の資金としては、22%の富裕層が個人資産だけでなく、自身が経営する企業の利益を投じている。その一方で、社会問題の解決のために団体や企業を興す社会起業活動もアジアではトレンドとなりつつあり、36%の富裕層が実際に社会的起業を行うか、検討を始めている。

アジア新興国富裕層のマインドは"成功"から"意義"へ

この十数年でアジアの国々は世界経済というステージの中心に躍り出た。その双璧をなすのが中国とインドだ。GDPは目覚ましく伸張し、国内消費も活発化している。しかし、急速な経済成長は多くの人々に富をもたらす一方で、貧富の一層の拡大などの課題を生み出している。今後、アジアの新興国では「経済成長の恩恵を受けてない層に対して何ができるか」を模索する動きが加速するだろう。 企業が社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)に力を注ぐように、アジアの成功した起業家は社会起業家や非営利団体のサポートなど、個人の社会的責任(ISR=Individual Social Responsibility)を考える時期に差し掛かっている。富裕層の人生のテーマも"成功"から"意義"へとシフトしていくだろう。アジアにおける慈善活動の課題は、他の地域に比べてフィランソロピーの専門機関が少ない点が挙げられる。UBSはアジアの各地域でフィランソロピー活動や慈善寄付、社会的投資を検討する富裕層に対して、専門家への橋渡しを行っていく。

日本を代表するフィランソロピスト
大久保秀夫氏

ミヤンマーの学校を視察中の大久保秀夫氏

大久保秀夫氏は1954年に東京にて生まれる。26歳の時、夫妻を含む6名の従業員で資本金100万円の会社を興す。

1991年に会社をフォーバル(「社会価値創出企業を目指す」という意味)に改称し、大久保氏は事業を多角化、拡大化した。8年後には上場を果たし、創業から上場までの最短記録(当時)を作った。

数年前、内戦で疲弊したカンボジアで地雷の撤去を始めた友人に触発され、大久保氏はカンボジアへ向かった。近年、教育分野への投資が大幅に向上したとはいえ、ポル・ポト政権下(1976-1979)でインテリ層が粛清されたため、教育水準が極めて低かった。

2008年、大久保氏はカンボジアの教育水準の向上支援のため、CIESF(一般財団法人カンボジア国際教育支援基金、公益財団法人CIESF(シーセフ))を立ち上げる。CIESFは生徒を直接支援するのではなく、より多くの子ども達がしっかりとした教育を受けるよう教師と教育のインフラ整備に取り組んでいる。大久保氏は、政府の支援の下、トップダウンでプロジェクトを計画・実行すると共に、NGOと協力して現場の活動にあたった。政府とNGOという両ステイクホルダーがCIESFの活動に参加することで長期的な視点で計画を立案・実行することが可能となり、また現地の活動が適切かつ効率的に実施されるようサポートすることができた。

大久保氏はカンボジアでの経験からこう語る。"ずっと援助を続けることはできません。カンボジア人は援助を受けることに慣れすぎているが、いずれ自立しなければならないことを理解する必要があります。外部団体が現地に長く居続けることは決していいことばかりではありません。援助を続け、カンボジア人がそれを受け取り続ける限り、私には明るい構図が描けません。フィランソロピーは、援助をして受け取るという構図から脱却し、自立を促進するという次のステージに移行していかなくてはなりません。今後、我々が考えなければならないのは援助を続けることの妥当性です"。

資産運用のご相談、お問い合わせは、UBSウェルス・マネジメントへ

電話でのお問い合わせ
フリーダイヤル:0120-073-533(東京) 0120-520-887(大阪) 0120-667-581(名古屋)
UBSウェルス・マネジメントのオフィス所在地
お問い合わせページ

ページの先頭へ