バックナンバーはこちら

最新号はこちら

ご注意事項

この世界を生きるアート

タグチ・アートコレクション

ロブ・ブリット<ハイ、バーイ(赤)> 2008年 293.8×182.8cm グリッター、エナメル/キャンパス

田口弘氏(たぐち ひろし)

1937年岐阜県生まれ。
株式会社ミスミグループ本社創設者、特別顧問。
株式会社エムアウト代表取締役社長。
顧客ニーズに徹底的にこだわる「マーケットアウト」をB to C市場に展開すべく、2002年10月株式会社エムアウトを創業。起業フェーズに特化し、数々の事業を分業制にて立ち上げる仕組み「スタートアップファクトリー」を提唱。マーケットアウトのコンセプトに特化した事業を数々創出している。

現代アートは、見る者の目をとらえ、世界の新しい見方や可能性に気づかせてくれる。時を超えて、私たちに先進的な発想やインスピレーションを与えてくれる現代アート。その醍醐味を田口氏が語る。

芸術の概念を覆した現代アート

戦後の好景気にともない、大量生産・消費が活況を呈していた1960年代のアメリカ。映画や音楽、漫画などの大衆文化が急速に拡大し、その時流は美術界にも大きな変革をもたらす。ポップ・アートの萌芽だ。ポップ・アートの旗手アンディ・ウォーホルは、"キャンベル・スープ"や"コカ・コーラ"などありふれた日用品を版画シルクスクリーンによって作品化。ファクトリーと呼ばれる自らの工房で、当時のアメリカ社会を象徴するかのように作品を大量生産した。芸術は美しく崇高であるべき、という既成概念を覆す大胆な表現。ウォーホルと同時代のロイ・リキテンスタインや、1980年代のキース・ヘリングなど奇才たちの作品が大衆を魅了し、ポップ・アートは瞬く間に一世を風靡する。田口氏も、その世界に魅せられた一人だ。「新橋のブティックではじめてキース・ヘリングの作品を目にした時、印象派絵画にはない革新的な表現に感動したのです。すぐに、当時社長を務めていたミスミ(現・株式会社ミスミグループ本社)の新社屋に飾ることにしました。美術館の中で仕事をしているような雰囲気をつくることで、社員のクリエイティビティを刺激できるに違いない、と」。実業家であると同時に、優れた現代美術のコレクターとしても知られる田口氏。株式会社ミスミの社長時代から、現代アメリカ美術を中心とする<ミスミ・コレクション>を築いてきたが、現在では<タグチ・アートコレクション>として、世界中のアーティストの作品を個人で収集している。「現代アートの魅力は何と言っても、一つとして同じものが存在しないこと。芸術としての美しさはもちろんですが、アーティストの発想そのものが面白いですね」

アンジェロ・フィロメーノ
<騎士と死と悪魔(アルブレヒト・デューラーのエングレーヴィングによる)>
2006年 248.5×203.2cm
リネン裏打ちのシャンタンに刺繍、クリスタル、
水晶、塗装木製フレーム

アートとビジネスの共通項

では、田口氏が作品の収集にあたって重視するポイントは?「すでにメジャー化した作品ではなく、今後価値の上昇が期待できるかどうかの視点で選んでいます。美術館がまず買わないような、価値が不確定な作品にこそアートの醍醐味があります。若手アーティストの発掘や育成という意味でも、大きな意義をもつのではないでしょうか」。そう語る田口氏は、文化支援の観点からも現代アートを捉える。現代アートにもっと多くの人が関心を寄せ、普及していくためには企業の取り組みも欠かせないという。「たとえば企業コレクションとして収集し、それを開放するなど、もっとアートの価値を知っていただく機会を設けるべきです。アートは知られた分だけ価値が上昇し、値段も高くなります」。現代アートというカルチャーの普及の担い手になること。それも、企業の重要な役割なのだ。UBSが、金融機関でありながらアートコレクションを持ち、世界中のオフィスや展覧会で公開している理由もまさにここにある。企業とアートの付き合い方について、田口氏はこう続ける。「優れたアートには、"次は何を見せてくれるのだろう?"という期待感があります。つまり、常に新しいのです。一方、ビジネスの基本はお客様が求めるものを新しく創出し、提供すること。そういう意味でアートとビジネスはよく似ていますね」。不透明な時代を見抜き、生き抜くためのヒントが、アートには隠されているのだ。

アートと暮らすということ

アートと暮らすということ。それは、どんな意味をもつのだろうか。「当たり前のように存在しているけれど、それが無いと大切なものが抜け落ちていることに気づく。まさに生活の一部ですね」。そう語る田口氏は、新しい作品を手にするたび、自邸に飾るコレクションを入れ替えて楽しんでいるという。「今注目しているのは、メキシコやブラジル、アフロアメリカンなどのアーティストです。もちろんこうした見立てには、"失敗"もつきものですが(笑)」。では、我々はどのようにアートと接すれば良いのだろうか。「まずは、安心して付き合えるギャラリーを見つけること。アーティストの販売代理店ではなく、自分が本当に欲しいと思う作品を買える"購買代理店"に出会うことが大切です。また、本物を見極める目は、良い作品を見ることで養われます。もっと関心をもってたくさんのアートに触れることも重要ですね」。現代アートには、一見すると難解な作品も少なくない。しかし、その作品が創られた"プロセス"に着目すると見えてくるものがあるという。「面白いもので、最初は理解できなくてもずっと観ているうちにその価値が理解できたり、作品を好きになることがあります。つくり手の論理ではなく、もっと自由な解釈で楽しんでみては。私自身、個人のコレクターとしてもっと若い人に鑑賞していただくことで、現代アートの普及に貢献していきたいですね」

資産運用のご相談、お問い合わせは、UBSウェルス・マネジメントへ

電話でのお問い合わせ
フリーダイヤル:0120-073-533(東京) 0120-520-887(大阪) 0120-667-581(名古屋)
UBSウェルス・マネジメントのオフィス所在地
お問い合わせページ

ページの先頭へ