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Smart Energy Solutions 電力新時代

エネルギー効率の追求と代替エネルギーの導入に投資機会

宇宙から見た夜の地球。電力の使用状況が一目瞭然だ。米国、ヨーロッパ、そして日本の輝きはとりわけ眩しい。次に中国、インド、ブラジルといった新興国も輝きを放つ。
世界第2位の経済大国でありながら中国は沿岸部に比べ、内陸は暗い。今後の発展でエネルギー需要はますます高まっていくだろう。
Credit :Data courtesy Marc Imhoff of NASA GSFC and Christopher Elvidge of NOAA NGDC.
Image by Craig Mayhew and Robert Simmon, NASA GSFC. http://visibleearth.nasa.gov/

東日本大震災による福島第一原発の事故は、世界各国のエネルギー政策に大きな影響を与えた。ドイツは原子力発電所の操業を2022年までに全面停止する方針を決定した。スイス政府も原子炉の順次廃止を決め、2034年までに全面停止する。こうした動きに伴い、代替エネルギー(風力、太陽光、地熱等を含む)による発電に世界的な注目が集まっている。これまで、主に地球温暖化防止などの環境問題によりスポットが当てられていた代替エネルギーは、原発に代わる「安全なエネルギー」として、当初の予想よりも早く電力源に組み入れられていくことになるだろう。そのためにはエネルギー効率の改善が必須であり、それにより新たな発電所の建設も減らすことができる。どのような電力源(石油、石炭、代替エネルギー)を増やすのであれ、今後はエネルギー効率改善のための投資が進展するはずだ。その額は長期的には数十億米ドルに達し、関係企業に平均以上の収益拡大をもたらすだろう。日本では、失った発電能力を早急に補うため、短期的にはガスタービン発電が増えるが、長期的には代替エネルギーの導入が拡大すると我々は予測する。

スマートグリッドに世界が注目

日本での原発事故を契機に、世界各国でエネルギー問題の議論が活発になっている。国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、2050年までに世界のエネルギー消費量は現在の2倍に膨らむ。主要8ヶ国が2050年を目標に、二酸化炭素(CO2)排出量半減に取り組む一方で、CO2排出量は昨年300億トンを超え、過去最大になった(IEA推計)。中国やインドなど成長が著しい新興国の旺盛なエネルギー需要への対応およびCO2排出量の地球規模での削減。この2つの課題がクローズアップされる中、世界的な注目を集めているのが、クリーンエネルギーを電力体系に組み込むスマートグリッド(次世代送電網)だ。スマートグリッドは、電力の需要と供給の関係を一新する。伝統的に電気は電力会社によって大型発電所で作られ、そこから送電・配電ネットワークに送られ、一般家庭や企業に届けられていた。スマートグリッドの導入により、従来の発電所に加え、太陽光、風力などの小規模な発電設備や蓄電設備が機動的に活用でき(図1参照)、電力源の分散化と、需給変化への柔軟な対応が可能となる。グリッド(送電網)業者はリアルタイムで電力需要を把握、分析し、それに応じて発電を調整する。一般家庭も単なる電気の消費者から脱し、太陽光発電等で生じた余剰電力を機動的に電力会社に販売することが可能になる。市場予測によれば、欧州、米国、日本における今後20年間のスマートグリッドへの総投資額は1.25兆米ドルに達するとみられる。

代替エネルギーの活用を促進

コンサルティング会社(米ブラットル・グループ)は、2010年から2030年にかけて、スマートグリッドの導入により、ピーク時電力を12%削減できると試算している。さらに驚くべきことは、新しい発電所の建設を81ギガワット分削減できると予想していることだ。これは、原子力発電所81基分に相当する数値である。スマートグリッドの最大の利点は、今後10年間にわたって力強い成長が見込まれる代替エネルギーとの連携が良い点にある。代替エネルギーの弱みは発電量が安定しないことだ。風力や太陽光は天気次第であり、得られる電力量も変動する。一定水準の電力供給を維持するためにはエネルギーを得る別の手段も用意しなければならない。しかし、スマートグリッドを使えば、代替エネルギーを他のエネルギーと統合し、代替エネルギーが利用できる状態であれば活用し、余剰時にはピーク時対応のために蓄電できるのだ。スマートグリッド関連の投資は、高電圧送電システム、先進メーターシステム、代替エネルギー発電設備のための変換器、IT/データのソリューション関連、スマートビル等へと広がっていくだろう。その一例が、日本のベンチャー企業VPEC(株)だ。同社は7月より、豪州クイーンズランド州にてスマートグリッドを進化させた「エコネットワーク」(スマートグリッド+電力の過不足を利用者間で融通し合うシステム)を現地の電力会社エナジェックス及びクイーンズランド州立大学と共同で実証実験に入る。いよいよスマートグリッド時代の幕開けとなるであろう。

需給ギャップを埋める新たなエネルギー源が求められる

福島原発の事故を契機に、日本のエネルギー政策は見直しを迫られた。原発への高い依存はあらためざるをえない(図2参照)。短期的にはガスタービン発電が増え、ガスタービンメーカーや関係サービス企業が恩恵を受けるはずだ。長期的には、政府は代替エネルギー導入をさらに拡大するだろう。しかし、この動きは即座に関係企業の収益向上に貢献するわけではない。そのため、我々は現時点では高収益部門を持つ代替エネルギー企業を選好する。 大震災以前、日本には55基の原子炉が稼働していた。さらに2基が建設中、11基が建設検討中だった。しかし、マグニチュード9.0の大地震は、日本の電力供給の将来図を完全に塗り替えた。 4基の原子炉が損傷し、12基は無期限で運転中止となり、新たな原子炉建設はストップした。日本は経済復興のために、新たなエネルギー源を必要としている。東京電力は需給ギャップを埋めるために、速やかに新たなエネルギー源を確立する必要がある。

ガスタービンが強い需要を享受

大震災により東京電力と東北電力は福島原発を含め、約40%の発電能力を失った。両社は休止していた火力発電所の運転を再開し、同様に運転を中止していた火力発電所を再稼働させた。我々は今後3-5年にかけてガスタービンの需要増を予想しているが、それには2つの理由がある。第一に挙げられるのは、東京電力(ある程度は東北電力も)による新たな発電所建設の必要性だ。現在東電は、クーラー利用が急激に増える夏場の高い電力需要に対応するため、石油・石炭火力発電所を稼働させている。しかし、効率性が低く、環境負荷が大きいため、発電設備をリニューアルする必要があるのだ。さらに、東電は合計出力700万キロワットの原子力発電所を新規に建設する予定だったが、全て中止に追い込まれた。我々は、これがLNG(液化天然ガス)火力発電所(つまりガスタービン発電設備)によって代替される必要があるとみている(図3参照)。
第二の理由は、企業によるガスタービン発電が活発になるという予測にある。安定的な電力供給を確保するため、日本の大規模な病院や工場は自家発電設備を設置している。今夏の首都圏の電力需要は5500万キロワットに達すると見込まれ、東電の発電能力である5000万-5200万キロワットを上回っている。このため、ガスタービンメーカーが強い需要を享受するだろう。

太陽光発電、蓄電池、さらなる省エネ技術に脚光

長期的に日本は、発電能力の60%を占める化石燃料への依存度を低下させなければならない。しかし、大震災後の電力不足を補うため、休止していた火力発電所の一部の稼働が再開され、化石燃料への依存度は高まっている。環境省が発表した再生可能エネルギーに関する予備調査レポートは、今後日本は風力、太陽光、地熱発電を活用すべきだと結論づけている。日本の代替エネルギー企業の一部は、その恩恵を受けるだろう。日本政府は2009年11月に、太陽光発電促進プログラムを再始動させており、これが国内市場の需要を押し上げてきている。しかし、代替エネルギーの収益への貢献は長期的(およそ5-7年)になることを強調したい。さらに、代替エネルギーが震災後のエネルギー政策で重要になることは一般的に意見が一致しているが、出力が不安定であるため、安定的な電力源として使うことは技術的に難しい。このため、我々は大量の電力を蓄えることができ、必要な時に放電できる蓄電池と、さらなる省エネルギーを実現する技術の一部がかなり有望であると考える。

※本稿は、UBSウェルス・マネジメント・リサーチによるレポートを翻訳・編集したものです。

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