UBS Perspectives 日本版 2014年 vol.15

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2014年度の日本不動産市場の見通し

消費税増税の住宅市場、オフィス市場への影響は?

執筆者 沖野登史彦(おきの としひこ)

1998年にUBS証券会社に入社。
現在、UBS証券株式会社マネージング・ディレクター、シニアアナリスト。
不動産セクターの分析に定評があり、日経アナリストランキング不動産部門で11年連続1位。

マンション販売は好調に推移

首都圏の新規供給マンションの契約率は2010年以降、販売の好不調の目安とされる70%を超えるトレンドが約3年間続いている。2013年の後半は80%を超える月も多く、マンション販売は好調に推移した(図1)。これには、2013年9月迄にマンション購入の契約をすれば、引き渡しが2014年4月以降でも5%の消費税率が適用されるため、増税前の駆け込み需要が一部顕在化した側面もある。しかし好調な販売の背景にあるのは、金利先高感と資産価格の先高感だろう。この先高感は、アベノミクスがデフレからの脱却を目指す限り続き、日銀の追加金融緩和も見込まれることから、低い金利水準も当面維持されると考えられる。こうした点から、2014年もマンション販売は基本的に好調だろう。一方、リスクは急激な金利上昇にある。また、最近の急速な建築費の上昇や土地価格の上昇が販売価格に転嫁され、売れ行きがスローダウンするリスクも残る。なお、新築マンションのみならず中古マンション取引も好調だ。2011年3月の震災直後に取引件数は落ち込んだが、2012年以降回復基調が続いている。2012年秋以降は成約価格も上昇に転じ、市況の回復が続いている(図2)。新築に比べて割安な中古マンションを購入した後、費用をかけてリフォームして住むライフスタイルも着実に広がりつつある。2014年も中古マンション取引は堅調に推移するだろう。

東京のオフィス市場も改善が続く

三鬼商事調査の11月の東京主要5区のオフィス空室率は7.52%で、2012年6月の9.43%からゆるやかな低下が続いている(図3)。2012年にグロスで約170万m2あったと推定される新規供給が2013年には約90万m2に減少し、供給圧力が減少していることが空室率改善の要因である。また、リーマンショック直後の低迷から立ち直りつつある景気を背景に、企業が中途採用を中心に雇用を増やし、需要が堅調に推移していることも空室率改善のもう一つの要因だ。2014年の新規供給は約110万m2に増えるものの、2012年の約170万m2と比べれば絶対水準は低い。今後の景気動向にもよるが、ゆるやかな景気回復が続けば2014年も空室率の低下傾向は続き、Aクラスビルを中心に賃料の上昇が多くのビルに広がる可能性が高い(図4)。リスクは今後の景気動向にある。特に2014年4月の消費税増税後の景気の落ち込みがどれほどの深さで、どの程度の期間続くかを注視する必要がある。その一方で、景気の落ち込みを最小限に抑えるために政府・日銀が行う政策にも目を向けるべきだろう。

商業不動産の投資市場も活況が続く

都市未来総合研究所の調査によれば、2013年度上期(4-9月)の上場企業の不動産取引額は1兆9,540億円で、前年同期比約2.3倍と大きく伸びた。上場企業の不動産取引が2012年度以降増加傾向にある事実は、商業不動産取引の増加/回復を示すことに他ならない。取引回復の主役はJREITだ。2012年の年初来投資口価格が上昇したJREITは、低いインプライド・キャップレート*を背景に、低い利回り=高目の価格で不動産を取得して商業不動産取引の増加に貢献した。投資信託を通じた個人からの資金流入や地方銀行からの資金流入もあり、JREITの投資口価格は今後も底堅く推移し、JREIT主導での商業不動産市場の活況は続くだろう。一方、プライベート・ファンドも最近不動産の取得を活発化させつつあり、フォートレス・インベストメント・グループがシェラトン・グランデ・トーキョーベイホテルを約420億円で取得した*1。また富裕層による不動産の取得も顕在化し、ソフトバンクの孫正義社長がティファニー銀座ビルを320億円で購入したと報道されている*2。景気回復に支えられてファンダメンタルズの改善が続く限りは、2014年も商業不動産取引は高水準で推移しよう。

*1 日経不動産マーケット情報 13年8月2日 *2ロイター 13年10月1日

*用語解説:インプライド・キャップレート
年間の賃貸キャッシュフロー(NOI)÷市場が評価するJ-REITの価値(=投資口の時価総額+ネットの負債総額)で算出される。投資家が評価するJ-REITの保有不動産の要求利回りのことで、J-REITの投資判断指標のひとつとして用いられる。

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