UBS Perspectives 日本版 2013年 vol.14

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Sustainable Investing

投資のメインストリームに浮上。存在感を増すサステナブル投資

気候変動の影響によって、北極では1990年代末以降、200万平方キロメートルを超える広さの海氷が失われている。
科学者らは北極圏の氷が約40年以内に消える可能性があると警告している。

これまでニッチな投資領域だったサステナブル投資(持続可能な投資=右欄コラム参照)が、投資戦略のメインストリームに躍り出ようとしている。投資という行為を通じて、「世界や環境に有益なインパクトを与えたい」という人々の思いを叶え、その上、パフォーマンスの面でも他の投資戦略に匹敵するリターンが期待できるからだ。すでに企業も、ESG(環境、社会、ガバナンス 図1)を経営において最も重要な要素と認識し、経営戦略に組み入れている。その取り組みは株主価値の向上をもたらし、投資家の投資判断の重要な材料となっている。本稿では、サステナブル投資の意義とUBSの具体的なポートフォリオに関するスタンスを説明する。

UBSはサステナブル投資について、次のように定義している。「伝統的な投資アプローチに基づきながらも、新たに企業の環境、社会、ガバナンスその他の基礎的なサステナビリティ要素を投資判断プロセスにおいて考慮する。このバランスの取れた投資戦略により、競争力のあるリスク調整後リターンを生み出し、さらに投資を通じて、社会にプラスの影響を与えたいと願う投資家自身の価値観をポートフォリオに反映させる」。サステナビリティとは持続可能性という意味である。企業にとってサステナブルな経営とは、社会とその基盤である自然環境を将来にわたって維持することを前提にした企業経営に他ならない。そこには「現在の社会、環境、経済ニーズを満たしつつ、次世代を思いやり、地球の生態系維持に寄与できるか」という視点が欠かせない。

急速に増加するサステナブル投資

サステナブル投資の起源は500年以上前にさかのぼる。かつて人々はキリスト教、ユダヤ教、イスラム教などの宗教信条に基づき、経済および投資に関する決定を行っていた。禁酒法時代の米国でも教会がアルコール飲料、銃器、たばこといった“罪深い株式”への投資を避けるように促していたが、これを背景に1928年に倫理観に基づく世界初の投資ファンドが誕生した。「サステナビリティ」という概念が言葉として初めて提唱されたのは、1987年である。国連報告書の中で示され話題を集めたが、限りある地球資源や社会的摩擦への対応といった、企業収益に直接関係のない事柄に対する投資家の関心は高まらなかった。こうした状況が変化したのは近年である。事実、この数年にわたり、サステナブル投資への資金流入は続き(図2)、運用資産の拡大は欧州および北米における全般的な運用資産のそれを上回っている。その背景には、世界で起きた次のような事象が挙げられる。①有名企業の破たんや米サブプライム・ローン市場の崩壊により、コーポレート・ガバナンスのあり方に疑問が投げかけられた②世界的な消費拡大に加え、多くの人口を抱える新興国の経済発展により、天然資源の価格が高騰した③所得格差が途上国だけでなく先進国でも拡大した④気候変動、水の枯渇、大気汚染など環境の悪化が進んだ。すでに、サステナブル投資市場の世界的な規模は13兆6,000億ドル*に達し、調査対象地域の運用資産の20%以上を占めている。我々は今後、環境、社会、ガバナンスに対する投資家の関心がいっそう高まり、サステナブル投資の運用資産はさらに増加を続けると予想する。

*グローバル・サステナブル・インベストメント・アライアンスの2012年のレビューによる

「サステナブル経営」とパフォーマンスの関連は?

21世紀以降、株式市場の乱高下が激しくなり、投資家はポートフォリオの変動率をいかに低下させるかに腐心している。その対策の一つとして、注目を集めるサステナブル投資だが、依然、パフォーマンスに対して懐疑的な意見も多い。確かに、過去幾つかのサステナビリティ・ファンドのパフォーマンスにはばらつきが見られたが、それでも他のアクティブ運用と大差はない。では果たして、企業のサステナブル活動は業績を向上させ、結果として良好な投資パフォーマンスをもたらすのか?2つの興味深いデータがある。ESGに関して高い評価を受ける400 の米国企業で構成されるMSCI KLD 400ソーシャル指数のパフォーマンスは、米国株式市場全体の指数を上回っている(図3)。さらに、ハーバード・ビジネス・スクールの研究(調査対象期間:1992年〜2010年)によれば、経営戦略においてサステナビリティを重視し、さまざまなステークホルダーの利害やESGリスクを考慮する企業のパフォーマンスは、そうでない企業を大きく上回っているのだ(図4)。この示唆に対する我々の見解はこうだ。「サステナビリティを重視することで、企業はより積極的なリスク管理が可能になり、長期的な価値創造に集中できるようになる。その結果、良好な企業業績をあげることができる」

持続可能な未来に向けて山積する問題。
今、我々が向き合うべき課題と投資に適したテーマとは?

株式のみならず、様々な資産クラスに広がるサステナブル投資

長年にわたり、サステナブル投資は主に株式を対象としてきた。世界の投資資産の中で債券に比べて株式が占める比率は低く(図5)、たとえ企業のESGリスクが浮上し、株価が下落しても許容できるからだ。このため、サステナブル投資はポートフォリオのごく一部として扱われるか、中核戦略から切り離されたものとして扱われてきた。しかし今後、サステナブル投資戦略は株式だけでなく、債券など他の資産クラスにも広がるだろう。投資家はさまざまな資産クラスに関するESG情報に気を配り、ポートフォリオ全体でそのリスクを考慮すべきだ。特にコモディティの生産は採掘、開墾、水の使用、汚染などで環境の悪化を招く可能性が高く、社会および環境に関するリスクを十分理解する必要がある。では、伝統的資産および非伝統的資産(ヘッジファンド、プライベートエクイティ、不動産を含む)の分野では、サステナビリティという概念に基づき、どのような投資機会を追求できるのか?注目されるテーマを挙げていく。

食料の供給:拡大する需要への対応

増加を続ける新興国の人口と、所得の上昇により、世界全体の食料需給が急速に逼迫してきている。需要の高まりに対して供給には限りがあり、必然的に食料の需給バランスは崩れる。環境的側面から見れば、農地の急激な拡大はもはや解決策ではない。新たな技術革新がなければ、低位で推移してきた農産物価格(図6)は今後上昇するだろう。食料および栄養の改善というテーマへの投資において、我々は特に、食料の生産性向上やサプライチェーン改善に関わるグローバル企業や十分に分散されたファンドへの投資を勧める。

健康:肥満のまん延に対処

高カロリー食品の摂取増大と、体を動かさないライフスタイルの浸透により、世界的に肥満率が高まっている(図7)。この傾向は先進国にとどまらず、途上国でも広がり、若者から高齢者までまん延している。ヘルスケア企業が肥満拡大防止の最前線に立ち、急増する医療ニーズに対処しているが、予見できる将来において特効薬は存在しない。このため、患者数は拡大を続けるだろう。こうした動向の中、抗糖尿病薬は最も成長している市場であり、興味深い投資機会を提供している。

エネルギー:再生可能エネルギー普及と効率的利用への挑戦

二酸化炭素を排出する化石燃料(石油、天然ガス、石炭)や、安全性などに問題がある原子力に代わるエネルギー源としての再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力、植物、地熱)活用への挑戦が続いている。発電能力で先んじているのは風力だ。すでに、全世界で20万基以上の風力発電装置が設置され、約300ギガワットの電力を供給している。一方、太陽光については、発電装置業界が急激な市場拡大と価格下落を経て、整理・統合のフェーズに突入した。中国での装置生産は高度に自動化され、価格も安く、世界市場を圧倒している(図8)。需要面で見ると、今後中国、日本、米国が有望市場だ。

水:投資への渇きを満たす

浄水の供給は、新興国ではインフラが不足し、一方先進国のインフラは経年劣化している。また、気候変動や新興国で進む都市化および産業活動の活発化も、水供給にマイナスの影響を与えている。水はその供給自体が産業である一方で、多くの分野(含むコモディティ、食料、鉱工業生産)の活動とも関係している。我々は2大投資テーマとして、「水とエネルギー」「水と食料」に注目する。「水とエネルギー」に関して言えば、水供給には多大なエネルギーが必要であり、また、近年米国で急増するシェール・ガス生産には多量の水が必要となる。この結果、効率的な水の利用や運搬などのサービスが急速に拡大している。「水と食料」に関しては、食料生産・加工に必要な水(図9)を効率的に供給する施設やテクノロジーが注目される。

本稿は、CIO WM Researchによるレポートを翻訳・編集したものです。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。

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