UBS Perspectives 日本版 2012年 夏号 vol.11

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Emerging Market Currencies

新興国通貨-過小評価されている資産クラス

リスク回避志向が強かった昨年までの5年間は、金や米ドルなどの「安全避難」資産が好まれてきた。しかし今、世界は新たな局面に入り、今後数年かけて通貨の再調整が進むと見られる。こうした状況では、健全な財政基盤を持ち、金融政策のかじ取りを行う余地があり、さらに良好な成長ファンダメンタルズを有する国の通貨が選好されるだろう。我々は、おおむねこの条件に当てはまる新興国通貨の今後の上昇を予想している。また、いまだ投資家に十分に保有されていない新興国通貨には、長期トレンドとしての強みを享受する投資機会も開かれている。

惨憺たる過去を乗り越え、前進する新興国

21世紀初頭、新興国通貨は非常に良好なパフォーマンスをあげた。その理由を理解するには過去にさかのぼり、全体像を把握する必要がある。発展途上国の多くの通貨は、20世紀後半にかけて米ドルに対して大きく価値を下げた。図1はいくつかの新興国通貨の米ドルに対する名目価値が1948年以降に下落し、新興国の購買力をむしばんだことを示している。中国の通貨は1949年までにほぼすべての名目価値を失い、韓国、アルゼンチン、ブラジル、トルコ、メキシコの通貨もそれに続いた。20世紀、多くの発展途上国が長くインフレの惨禍に苦しみ、さらにこうした国々の通貨は、米ドル、ドイツ・マルク、日本円、スイス・フランといったハードカレンシー(国際決済通貨)に比べて大きく下落したのだ。

新興国通貨投資に妙味をもたらす「キャリー」

為替市場における新興国通貨の状況は、2000年頃に変化し始め、2011年にかけて米ドルに対して上昇した新興国通貨まで現れた。しかし、為替レートの上昇は魅力の一部にすぎない。新興国通貨への投資妙味を判断するには、先進国通貨に対する為替レートの変化だけでなく、合計リターンを見る必要がある。つまり、為替レートの上昇分に加えて、「キャリー」と言われる海外の短期金利商品への投資による利息収入を加味しなければならない。通貨の投資リターンは、常に金利のキャリーと為替スポット取引の利益の合計となるのだ。現地通貨建てで金利を稼ぐことを考慮に入れれば、中国、チリ、ブラジル、インドの通貨価値は米ドルで短期金利で運用していたケースと比べ、大幅に上昇していることになる(図2)。

新興国のインフレが著しく改善

この10年間を振り返り、新興国市場で最も際立った改善と言えば、インフレの過去に例を見ないほどの鎮静化が挙げられる。強固で安定した通貨には低く落ち着いたインフレ率が重要であるが、事実、1980年代に37%、1990年代に54%を記録した新興国のインフレ率は、2000年代には平均5%にまで低下している(図3)。多くの新興国で進められてきた構造改革(中央銀行の独立性や金融政策の透明性の改善、より適切な財政政策、政府の説明責任の向上等)が、インフレの抑制に大きく貢献し、新興国通貨をサポートしてきたのだ。また、新興国は直接投資にかかわるさまざまな規制を取り払うことで資本の国内外の往来を可能にし、投資に伴う金融面、政治面からのリスクを低下させてきた。加えて、先進国でもインフレの低下が進み、世界的に消費者物価指数が押し下げられた点もプラス要因に挙げられる。

新興国通貨の長期ストーリーはまだ終わっていない

2つの理由から、我々は新興国通貨が今後長期にわたり魅力的なトータルリターンをもたらすと考える。まず一つは、新興国のさらなる経済成長により、自国通貨の対ドル為替レートの上昇と、資産価格の上昇の双方から恩恵を得られる点だ (図4)。次に、たとえインフレが再燃しても、その国の通貨建て預金は、高い保有リスクを補って余りある高金利をもたらす点が挙げられる。一方で、先進国は引き続き財政問題に対処する必要があり、金融政策は緩和的にならざるを得ない。極端な場合、中央銀行が国の負債を引き受け、貨幣化を余儀なくされるシナリオもあり得る。こうした点からも、先進国の通貨は下落する可能性が高い。ここまでで述べたように、新興国通貨の長期的なパフォーマンスが先進国通貨を上回ると考える強い論拠はあるが、途中、幾度か弱気局面を迎えることは避けられない。このため、投資家はポートフォリオ全般のボラティリティが上昇する局面に備える必要がある。下落局面での投げ売りを回避するには、長期資金のみを新興国通貨投資にあてるべきだ。その一方で、下落局面は、新興国通貨への資産配分を増やす戦略を考える投資家にとっては、良好な参入機会になるだろう。

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