UBS Perspectives 日本版 2012年 夏号 vol.11

バックナンバーはこちら

最新号はこちら

ご注意事項

UBS×日経CNBC特別セミナー

大転換!激動の時代を切り開く ~新時代のパラダイム~
寺島実郎×竹中平蔵×ラリー・ハザウェイ

東日本大震災発生から一年以上がたつ今、国内では新たなエネルギー政策や電力供給体制の構築などの課題が山積している。一方、海外に目を転じると欧州債務危機を発端として世界経済に不透明感が漂う。世界で大きなパラダイムシフトが起きる中、今後の潮流をどう読み解くか。日経CNBC主催、UBS協賛により、2012年6月に開催された特別セミナーを振り返る。

寺島実郎(てらしま じつろう)

早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、三井物産に入社。米国勤務を経て、三井物産戦略研究所所長、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授、三井物産常務執行役員等を歴任。
現在は日本総合研究所理事長、多摩大学学長、三井物産戦略研究所会長。
1994年石橋湛山賞受賞。近著は『世界を知る力 日本創生編』(PHP新書)、『問いかけとしての戦後日本と日米同盟 脳力のレッスンⅢ』(岩波書店)ほか。

竹中平蔵(たけなか へいぞう)

小泉内閣の経済財政担当大臣就任を皮切りに金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣等を歴任。2006年参議院議員を辞職し、政界を引退。
現在、慶応義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長、日本経済研究センター研究顧問、アカデミーヒルズ理事長等を兼職。

ラリー・ハザウェイ

テキサス大学にて経済学の博士号を取得後、シティバンクを経てUBSへ。
東アジア担当のチーフエコノミスト、シニア通貨ストラテジスト、シニア国際エコノミストを歴任後、現在はUBSインベストメント・バンク チーフエコノミストを務める。
インスティテューショナル・インベスター誌のサーベイでグローバル・エコノミストおよびアセット・アロケーションのカテゴリーで1位の評価を得るなど、世界的に高い評価を受けている。

第一部 日本の国家戦略とその行方 ~新時代へのビジョン~

日本創生のグランドデザインをどう描くか

第一部では、寺島実郎氏が歴史的見地から日本と世界の現状を踏まえ、我が国が今後果たすべき役割、国家戦略や産業のあり方などについて提言を行った。「今、新しい社会の創生に向けた構想力、すなわちグランドデザインが求められています。しかし、国内では消費税増税こそが国家目標であるかのような空気がある。OECD(経済協力開発機構)の平均税率は17.3%ですから、私は増税に反対しているのではありません。今後どんな国にするために増税を行うのか、その方向性が全く示されていないのが問題なのです。また昨年来、円高による競争力低下などから産業の空洞化が加速していますが、今後はキャピタルフライト(資本逃避)が深刻化するでしょう。ヒト・モノ・カネが国境を越えて移動するのがグローバリゼーションの怖さです。日本をこのまま衰亡させないための知恵が必要ではないでしょうか」

"アジアダイナミズム"を読み解くことが鍵

では、社会全体に不透明感が広がる中、どう活路を見いだすべきなのか。その鍵となるのが「アジアダイナミズム」だと寺島氏は指摘する。「日本の貿易総額に占める対米国貿易比重は1990年に27.4%でしたが、今年4月には12.8%に下落しました。一方、対中国で見ると約20年前はわずか3.5%だったのが、今や19.4%と全体の2割に迫る勢いです。中国はGDP実質成長率でも毎年約10%を維持していますが、なぜ旧社会主義圏の中で中国だけがコンスタントに成長を続けられるのか。それは中国が"大中華圏"、すなわち「陸の中国(=中国本土)」と「海の中国(=香港、台湾、シンガポール)」の相互連携によって発展しているからです。今、日本の貿易は約3割をこの大中華圏に、約5割をアジア全体に依存しています。つまり"貿易構造のアジアシフト"という大きな変化が起きている。日本が、大中華圏をはじめとするアジアのネットワーク型発展の中で存在している現状を認識することは、極めて重要です」

技術先進国・日本がとるべきエネルギー戦略

次に寺島氏は、今、世界のエネルギー事情が新たな局面にあると述べる。「米国は"シェールガス革命"と言われるほど、シェールガス開発にエネルギー戦略の比重を置いています。シェールガスとは頁岩(けつがん)の隙間に存在する天然ガスのことです。2年半前にベンチャー企業が回収技術を確立し、エクソン・モービルやシェルなどが参入したことで一気に生産量が増加。2010年には世界最大の産出国となりました。また、シェールガス増産が進んだことで、米国の天然ガス市場の価格は大きく下落しました。今、100万BTU(英国熱量単位)当たりの価格は2ドル前後です。日本の天然ガス価格は約17ドルですから、その8分の1の価格で市場に流通していることになる」。シェールガスによって世界のエネルギーパラダイムを塗り替えつつある米国。では今後、日本のエネルギー戦略はどうあるべきか。「脱原発や再生可能エネルギー移行という単純な議論ではなく、例えば省エネによるエネルギー効率の向上と再生可能エネルギー、原子力、化石燃料をバランスよく組み合わせる。技術先進国・日本は、そうしたエネルギーのベストミックスを模索するべきだと思います」

第二部 世界経済の新潮流 ~楽観と悲観が交錯するなかで~

激動を続ける米国・欧州経済の行方

第二部では、竹中平蔵氏とUBSのラリー・ハザウェイ氏が、世界と日本経済の現状を分析し、来る新時代のビジョンについて語った。まず、ユーロ圏経済の今後の見通しをハザウェイ氏はこう述べている。「ギリシャのユーロ離脱は当面ないでしょうが、債務危機の影響で資本不足に陥ったスペインの銀行救済など、課題は残されています。スペインの銀行の資本増強は不可欠ですが、それ以上に大切なのは預金保険機構のようなセーフティネットをつくるなど、ユーロ圏全体の金融をバックアップする仕組みです」。続いて竹中氏はこう指摘する。「財政危機に端を発するこの問題は、究極的にはバンキングクライシス(銀行危機)になっている。国ごとに銀行行政が異なるユーロ圏において、現状をどう解決するかが重要です。今後の鍵を握るのはおそらくドイツでしょう。来年に連邦議会選挙を控えたメルケル首相が、どんな舵取りをするのか注目されます」。次に、米国経済については「決して悲観的ではない」というのが竹中氏の見解だ。「リーマンショック以降のバランスシート調整において、米国が取った政策の方向性は正しいと思います。例えば、ストレステストを実施して資本注入する。米国は一年足らずでその明確な方向性を示しまた。ただ、留意すべきなのは大統領選によってリーダーが変わった場合、政策変更が行われる可能性が高いことです。また、米国が今後どんな金融規制を行うかについても注意を要します」。続いてハザウェイ氏はこう語る。「金融危機が起きたのはすでに5年前のことです。最初に顕在化した2007年当時と比べ、株式市場や労働市場は柔軟性を持って回復してきている。来年に向けて米国経済がどう推移するのか、今年の後半が正念場でしょう」

成長が鈍化しつつあるBRICsの今後の展望

次に、世界的な景気減速が進む中での新興国経済の動向について、ハザウェイ氏はこう分析する。「中国は2009年の世界のGDP増加額の3分の1を占めるなど、世界経済に大きく貢献しました。しかし中長期的に見ると、景気後退によって成長は停滞しつつある。2009年当時とは違い、中国は今世界を扶養する立場にはありません。また、BRICsに共通する課題として、構造改革の遅れが挙げられます。近い将来、米国はシェールオイルやシェールガスの生産が進み世界最大の産油国になると言われますが、そうなった時、ロシアなどの資源輸出国に大きな影響が及ぶと予測されます。新興国は今後、市場の自由化を進め、内需によって成長を維持するべきです」。竹中氏によると、BRICsは新たな課題に直面しているという。「BRICsに続く成長が期待される新興国家群"NEXT11"が注目を集めています。今後、その台頭によってBRICsの期待成長率が下がるとしたら、世界経済の勢力図は大きく変わる可能性があります」

世界の新潮流と日本の進むべき針路とは

日本では今、消費税増税をめぐる議論が活発化しているが、この現状に竹中氏は疑問を呈する。「日経平均株価は5年前の約半分に下落しました。また、OECD諸国の名目成長率は平均約4%ですが、日本は1%以下という異常値です。この経済の異常を正すことこそ、増税以前に政府が喫緊に取り組むべき課題です。また、5%の増税分のうち社会保障に回るのはわずか1%しかありません。このままでは日本は"低福祉重税国家"になってしまう。それによって将来の期待値が下がることは大きなリスクです」。増税に異を唱えるのはハザウェイ氏も同じだ。「世界経済が停滞するこのタイミングでの増税には、疑問を感じます。それよりも必要なのは、歳出をコントロールすることです」。最後に、これまでの流れを踏まえて竹中氏は今後の世界潮流について語る。「新興国がある程度の成長を遂げた後、そのまま停滞することを"中進国の罠"と呼びます。ブラジルやインドネシアなどの可能性を秘めた国が、この罠を抜け出していかに飛躍できるかが今後の鍵となります。いずれにせよ世界経済には明るい兆候がありますから、チャンスを逃さず捉える姿勢が重要ではないでしょうか」

資産運用のご相談、お問い合わせは、UBSウェルス・マネジメントへ

電話でのお問い合わせ
フリーダイヤル:0120-073-533(東京) 0120-520-887(大阪) 0120-667-581(名古屋)
UBSウェルス・マネジメントのオフィス所在地
お問い合わせページ

ページの先頭へ