UBS Perspectives 日本版 2012年 冬号 vol.10

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ご注意事項

欧州市場の需要低迷による輸出への打撃、欧州銀行の一部のアジア地域に対する融資削減など世界的な景気減速が波及し、アジアの経済成長にブレーキがかかるとの懸念が高まっている。しかし、インフレ圧力が弱まり、金融緩和策が拡大する中で、強い内需に支えられてアジアの2012年 の成長率は6%に達し、世界経済の中では突出したものになるだろう。
アジア通貨はペースこそ弱まるものの、引き続き上昇すると予測される。アジア通貨建て債券も魅力的だ。アジア株式は金利低下への感応度が高い銘柄や、政府の景気刺激策に関係するもの、また、欧米の景気減速に対する抵抗力を持つ株式が良好なパフォーマンスをあげると見られる。

アジアが成長のオアシスに

世界経済の見通しはアジアの復調を示唆

2012年の経済見通しは極めて厳しく、ユーロ圏のさらなる景気後退が懸念される。ユーロ圏の崩壊は、世界の金融市場に波及し、米国経済の二番底を招く可能性がある。ユーロ圏崩壊は我々のメーン・シナリオではないが、欧州は引き続きリスクの源となるだろう。米国の成長は維持される見通しだが、米国経済は緊縮財政の逆風に直面する可能性が高い。こうした状況のもと、2012年の世界経済は前年に続き、低成長になると予想される。投資家は引き続き、幅広い分散を続けるべきであり、グローバルに分散された投資ポートフォリオを考慮する上で、財政が堅調な新興国を選択肢に加えることが推奨される。我々は、新興国の中でもアジア地域が2012年の成長のオアシスになると見ている。

コンビニエンスストア・チェーンのローソンは、
今後10年以内に1万店を目標にインドネシアに出店する方針。
「10年後にはアジアで一番成長が高い市場になる」というのがその理由だ

輸出減速の強い逆風に直面するアジア

ユーロ圏の危機は、アジアの輸出に打撃を与えている。
2011年第2四半期までの輸出は前年比でおおむね横ばいだったが、第3四半期に入り減速が始まり、この傾向は2012年上半期まで続く見込みだ。アジアにおける経済の関心は、前年の「インフレとの戦い」から、「金融緩和策と財政刺激策を通じた成長の維持」に移るだろう。中でもインド、インドネシア、韓国は欧州銀行の劇的なレバレッジ解消によっ て経済の脆弱性が増し、資金調達コストの上昇を招く可能性がある。

景気の逆風に対抗し成長を守るための積極的なリフレ(通貨再膨張)政策

食料価格の低下、インフレの頭打ち、輸出成長の減速などを背景にアジアの中央銀行は利下げに向かい、インドネシアとタイがその先陣を切っている。中国では消費者物価指数の3カ月連続の下落と不動産市場の落ち着きを経て、政府が引き締め政策の変更を始め、銀行の預金準備率を引き下げている。
我々は、アジア各国の輸出成長がさらに低水準に落ち込めば、政府は財政刺激策に頼ると見ている。2008年以降、中国、インドネシア、インドは賃金、雇用、農産物価格などを下支えし、国内消費を刺激してきた。しかし、これらの政策はインフレ高騰などの副作用を引き起こした。今後、アジア各国は慎重に財政拡大策を検討していくだろう。
結論として、2012年のアジア(除く日本)の経済成長は、2011年の6.7%(推定)から減速するものの、6.0%を維持するだろう。中国の成長は前年の9.2%から8%に減速すると見られる。一方、日本の成長は加速し、前年の-0.3%から2.5%に上昇する見通しである。

アジア投資の見通し

2011年の乱高下を経て、我々はアジア株式のパフォーマンスの改善を予想する。世界経済の成長が緩やかになる中、その成長は貴重だ。世界の中でアジアは最も高成長が期待できる地域であり、とりわけ引き締め政策の緩和により、成長が加速する可能性もある。アジア新興国の株式市場のパフォーマンスはアジアの先進国市場を上回るだろう。アジア株式のバリュエーションは依然、魅力的だ。MSCIアジア(除く日本)株価指数のPBR(株価純資産倍率)は過去平均の1.8倍より低く、ほぼ1.6倍で推移している。
アジアの債券に関しても、我々はポジティブな見方をしている。ハイイールド社債の利回りは現在10.8%で推移しており、過去平均の7-8%よりかなり高い。一方、投資適格社債の利回りは4.7%で、過去平均を若干下回る水準にある。投資家はディフェンシブな姿勢を維持しつつ、投資適格社債および質が高いハイイールド社債の中から選別的に投資していくべきだろう。アジア通貨に関しては、2012年の上昇余地は極めて限定的になると見ている。我々の選好通貨は引き続き、中国元、シンガポール・ドル、インドネシア・ルピア、韓国ウォンである。
なお、我々の推奨に対するリスクは、ユーロ圏崩壊の可能性であり、また地政学的緊張に牽引された石油価格の高騰である。


2012年は日本株の転換点に

日本株の過去5年(2006年12月から2011年12月)のパフォーマンスをTOPIX(東証株価指数)で振り返ると、世界の主な株式指数の中では下から2番目となる。2011年、ヨーロッパ債務危機で大きく下落したイタリアの株式指数に次ぐ、57%の下落である。5年前の小泉改革による株価上昇から一転して、サブプライム危機とヨーロッパの債務危機を経験した日本企業は、時価総額を大きく減らした。しかし、日本企業の業績とその価値が半減したわけではない。「-57%」という数値を分析することで、2012年の日本株投資のヒントが明らかになる。

収益力は落ちていない日本企業

UBSウェルス・マネジメント・リサーチの分析によれば、TOPIXが記録した57%のマイナスのうち、36%は株価バリュエーションの変化がもたらしたものだ。過去5年間で、PER(株価収益率)が21倍から13倍に低下し、投資家の日本企業に対する期待値が下がったことを意味している。残り21%の下落要因は、 企業の業績悪化である。その内訳は円高が8.5%、東日本大震災の影響が6.2%、景気の低迷が6.1%だ。しかし見方を変えれば、日本企業の収益力は震災の影響と円高の影響を除けば、6%程度の悪化にとどまっていると言える。下のグラフに見られるように、TOPIX500(除く金融機関・電気ガス)対象企業の営業利益は円高が進んでいるにもかかわらず、さほど落ち込んでいない。

利益成長が見込める日本株式

日本企業への期待値であるPERは来期収益ベースで12.5倍程度になっている。この数値は、かつて76.4倍を記録した日本株としては異例に低いものの、現在の世界平均とほぼ同じ水準だ。日本株は大きく下落したが、割安になったとは言い難い。しかし、2013年3月期は日本企業の東日本大震災・タイ洪水被害からの回復、復旧が本格化し、さらには政府の20兆円を超える復興予算の執行が始まる。こうした動きに伴い、我々は日本株に対して、10-15%程度の利益の伸びを見込んでいる。ヨーロッパの債務問題は予断を許さないが、ある程度の世界景気悪化を織り込んでも、円高の進行が食い止められれば、10%台の利益成長は期待できるだろう。

超円高の進行は止まるか?

利益成長に対する見方に比べ、確度は低くなるが、我々の円高に対する見解をお伝えする。日本政府と日銀は円高が一層進展すれば、日本企業の海外生産シフトが加速することを認識している。超円高が臨界点に達する前に、さらなる継続的な介入が期待できる。そもそも、円が逃避通貨として買われている背景には、国際金融市場での緊張感の高まりがある。ヨーロッパの債務危機は2012年前半にクライマックスを迎えると予測されるが、後半に沈静化に向かえば、円高圧力の緩和につながる可能性が高い。我々は現時点で2012年の大きな円安傾向は予想していない。しかし、円高が止まれば、日本企業が行うコスト削減がプラスに貢献し、2013年3月期の利益水準の押し上げに貢献すると見ている。

2012年は日本と日本企業が見直される転換点に

結局、過去5年間、大きく出遅れてきた日本株にとって2012年は正念場であり、転換点になりえる一年だ。株式市場では、すでに日本企業に対する株価のプレミアムは失われている。さらに、震災等により、国としての成長力に懸念が投げかけられている状況下で、復興予算が執行される。世界から注目を集める中、単純な災害損失からのリバウンドにとどまらず、目下直面しているエネルギー問題、財源問題、そしてコーポレートガバナンス問題等に世界の投資家が納得する答えを見いだせれば、日本経済と日本企業が見直される余地は大いにあるだろう。

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